anko4167 コンポスト入門

Last-modified: Sat, 20 Aug 2016 16:54:30 JST (1532d)
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小型の卵のパックの様な形の容器の中に、小さなゆっくりが二匹入っている。
黒い帽子に金髪のゆっくり、まりさという種類が二匹。
その底部には、①、②という印が焼印が押されてある。
二匹は眠るかのように目を閉じて、身動き一つしないがこんな状態でもちゃんと生きているのだ。

この二匹は、生まれてすぐにパック詰めされて出荷されるらしい。
商品名は「すくすくコンポスト」。
コンポスト用ゆっくりとして量産された、雑用ゆっくりの一種の育成用パックだ。
少々手間がかかるが、説明書通りに扱えば長持ちするコンポスト種として評判が良い。
小さな赤ゆっくりを少しの間コンポスト用に育成して行く過程が、一部のゆっくり愛好家に受けているらしい。
まりさ種は元々が強気で傲慢、夢見がちなゆっくりなのだが、この品種はその性格が特に強い物を交配して作られたそうだ。
ちなみに底部に焼印がしてあるのは、二匹を明確に区別する為の記と、コンポストゆっくりの運動能力に制限をかける為の物だそうだ。
この焼印の影響で「すくすくコンポスト」のゆっくりは「這いずる」、「飛び跳ねる」等の運動能力が処置してない物に比ベて劣るのだ。

パックを開けて中に入っていた二匹を透明な箱に移し、しばらくこのままに日当てて放置する。
ここでこいつ等の声を聞きたくない人は、防音加工の箱を使うのが主流である。
私はこの箱に蓋が付いている物を使用しており、用途に合わせて蓋を開閉している。
蓋を開けている時は多少五月蝿くはあるが、中のゆっくり達の状態を把握出来る上に、五月蝿いと感じたら蓋を閉めてしまえば何も聞えないのが便利だ。

「………ゆぴー…ゆぴー……ゆぴー…」

「ゆーん…むにゃむにゃ…ゆゆー…」

すると1分も経たない内赤ゆっくり達がムズムズと動きだし、安らかな顔で寝息を立て始める。
仮死状態で保存されていたものが、日の光を浴びて復活したのだろう。
このまま自然に目を覚ますまで放置しても良いのだが、時間の惜しい人は眠る赤ゆっくりを爪楊枝で突付いて叩き起こしたりするそうだ。
私もそれに習い、②の赤ゆっくりの底部を爪楊枝で軽く突き刺す。

「……ゆっちゃい!ゆっぴぃぃぃぃぃ!いっちゃい!いっちゃい!ゆびゃぁぁぁぁぁぁ!」

「ゆーん…かわいーまりちゃが、ゆっくちうまれるのじぇ…せかいのみんながしゅくふく…ゆぅぅ?なんなのじぇぇぇぇ?!うるしゃいのじぇぇぇ!!」

②の赤ゆっくりが悲鳴を上げて目を覚ます。
爪楊枝で刺された底部をビタンビタンと床に叩きつける様にうねらせながら、大声でゆんゆんと泣き始める。
その隣で①の赤ゆっくりが、幸せそうな顔でブツブツと寝言の様なものを呟いていたが、②の赤ゆっくりの悲鳴を聞いて顔をしかめて怒鳴りだす。

「ゆびゃぁぁぁぁぁ!ゆびゃぁぁぁぁぁ!いちゃいぃぃぃぃ!どーちて、せかいはまりちゃのたんじょーを、しゅくふくしてくれないのじぇぇぇぇぇ?!ゆびゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「うるしゃぁぁぁい!やめるのじぇぇぇぇ!まりちゃのたんじょーを、じゃましゅるんじゃないのじぇぇぇ!おいわいしゅるのじぇぇぇぇ!!」

「ゆっびゃぁぁぁ!どーしちぇまりちゃをいじめりゅのぉぉぉぉ?!まりちゃにしっとするのはやめちぇよぉぉぉ!ゆんやぁぁぁぁぁぁ!!」

駄々をこねるかの様にゴロゴロと箱の中を転げ回り、涙と小便を周囲にまき散らす②の赤ゆっくり。
そんな②を睨みながら、膨れ上がって威嚇する①の赤ゆっくり。
それを見た②の赤ゆっくりは、涙と小便に塗れながら透明な壁まで這いずって逃げていく。
実はこの二匹は、同じ種類のゆっくりではあるが微妙に品種が違うのだ。
同じ親株のゆっくりから生まれた訳ではないので、お互いを慰めあったり励ましあったりはしない。
同族であれど、「ゆっくり」出来ないのであれば排除しあうのだ。

二匹が活動を始め出したので、付属品の餌を一回分箱の中に投下する。
専用の餌は三日分付いている。
餌は乾燥した粒状の固形物で色は黒。
ゆっくり飼育用のフードの一種らしいが、これもコンポスト用に臭いと味付けをしてあるらしい。

「ゆゆぅ?!なにこりぇ?ごはんしゃん?!」

「すんすんすん………ゆっぴぃぃぃ!くっしゃいのじぇぇぇ!ゆっくちできないのじぇぇぇ!!ゆびゃぁぁぁ!!」

興味深そうに餌の側まで這いずってきた二匹の赤ゆっくり。
しばらくその周囲で様子を伺っていたが、突然顔をしかめて逃げ出してしまう。

「くっしゃぁぁい!くっしゃぁぁぁい!これかたづけちぇよぉぉぉ!ゆっきちできないいぃぃぃぃ!!」

「ゆゆぅ?!やい、そこのくしょにんげん!このくっしゃいのを、さっさとかたづけるのじぇぇぇ!!」

ビッタンビッタンと音を立て、まるで水揚げされた魚の様に跳ね回りながら、涎や涙を撒き散らしてゆんゆんと騒ぐ二匹の赤ゆっくり。
その内①の赤ゆっくりが、私に向かって何やら暴言を吐く。

「どーしたのじぇ、くしょにんげん!まりちゃさまのめーれーがきこえないのじぇ?!さっさとうごくのじぇぇぇぇ!!」

「なにしてるのじぇー!どれーはまりちゃをゆっくちさせるのじぇー!!」

二匹の赤ゆっくりがこちらを見上げて膨れると、眉を吊り上げて涙目で私を睨む。
流石にそろそろ五月蝿くなってきたので、私は透明な箱の蓋を閉めると日の当たりの良い部屋に箱を放置する。
二匹は不満そうにピョンピョンと飛び跳ねながら、口をモゴモゴと動かし元気に動き回っている。
これだけ活発に動き回れる健康体なら、エネルギーの消費も当然激しい。
後は二匹が空腹に負けて、餌を食べるのを待つだけである。

TVを見つつ箱の様子を横目で見ていると、やつれた顔の二匹が餌の方に向かって力なく這いずって行くのが見えた。
先程まで元気に動き回っていた筈だが、流石にそろそろ限界が来たようだ。

この赤ゆっくりは、生まれる直前の物をパック詰めして売られているそうだ。
通常ゆっくりというのは、生まれてすぐに何かを食べるらしいのだが、この赤ゆっくり達は生まれてから何も口にしていない。
それなのにあれだけ大騒ぎしていたのだから、当然腹も減る事だろう。
私は二匹に気がつかれないように、箱の蓋をそっと開ける。

「ゆぅぅ…おなかすいちゃ…ゆえぇぇ…ごはんしゃん、どこにもないのじぇ…このくさくさしゃんを、たべるしかないのじぇ?」

「ゆぐっ…ゆぐっ…どーしちぇ…まりちゃ、せかいのみんなに…しゅくふくされちぇ…ゆっくち…ゆびゃぁぁ…」

戯言をブツブツと呟きながらも、自分達が臭いと騒ぎ立てた餌を恨めしそうに見つめる二匹の赤ゆっくり。
そして恐る恐る舌を伸ばすと、餌を一粒舌の上に乗せて口に運んで行こうとする。

「ゆっぴぃぃぃぃ!くっしゃぃぃ………にっがい!なにこれぇぇぇ?!どくはいっちぇるのじぇぇぇぇぇ!!」

「ゆぐっ?!にっがぁぁぁぁぁ!ゆぶっ!ゆげぇぇぇ!ゆっげぇぇぇぇぇ!こんなの、たべられないのじぇぇぇぇぇ!!」

餌を口に運ぶ途中で、その餌の苦さに耐えきれずに餌を舌で投げ捨てて泣き叫ぶ赤ゆっくり。
もう一匹の赤ゆっくりは、しばらく餌を咀嚼したが、急に顔をしかめて砕かれた餌を唾液と共に吐き出す。
二匹はその後も唾液交じりの餡子をを吐いては、ゆんゆんと泣き続けた。
私はその泣き声がTVの音を遮るので少々五月蝿いと思い、再び箱の蓋を閉じて二匹を観察する事にした。

二匹は私に向かって、何やら口をパクパクと動かす。
おそらく何か不満や泣き言を喚いているのだろう。
だが私が箱から目を話してTVを観始めると、赤ゆっくりの一匹が下を向きながら餌の方に移動していく。
それに釣られるかのように、もう一匹も後を追うように餌の方に這って行く。
二匹は餌の前まで辿り着くと、悔しそうに餌を睨みつけながらガタガタと震え始める。
私は様子を伺うために、二匹に気が付かれないようにそっと蓋を開けた。

「ゆっぐ…ゆっぐ…ゆえぇぇ…どーしちぇ…まりちゃ、こんなかわいそーなめにあうのじぇ…ばっずい!にっがい!ゆげぇぇ!」

「ゆぐっ…ゆぐっ…まりちゃ、とってもかわいいから…ちんでれらしゃんみたいに、いじめられちゃうのじぇ?…ゆぅぅぅぅ…」

ポロポロと涙をこぼしながら、自分達の境遇を自分達で哀れむ赤ゆっくり。
不味くて臭い餌を一口噛んでは嗚咽を漏らし、また一口噛んでは餌と餡子を吐き出す。
唾液をいっぱい分泌させ、少しでも餌の味を誤魔化そうとしているのだろう。
だがそのせいで、乾燥した餌が水分を含んで肥大化する。
それでも空腹には勝てないようで、両目を瞑って眉をしかめながら餌を口に運ぶ。

「ちんでれら」と言うのは、童話の灰被り姫の事だろう。
聞いた話では、コンポストの親株に毎日あの童話の朗読CDを聞かせているそうだ。
こうする事により、アホな親株達は何時かきっと自分達の元に魔法使いや、かぼちゃの馬車がやってくるのだと勘違いしながら赤ゆっくりを生産し続けるそうだ。
その勘違いが生まれてくる赤ゆっくりにも伝わるらしく、赤ゆっくり達はありもしない妄想を希望にしてコンポストとして生きていく。
コンポストという環境から一生逃れられる事はないのだが、それにも拘らずこのコンポストゆっくり達は誰かからの救いを待ち続ける。
この勝手な妄想がコンポストゆっくりの精神的支柱になり、心が折れることなくコンポストとしての寿命を全うする。
他力本願なゆっくりの性質を上手く利用した成功例だ。

「かわいーまりちゃが、うんうんしゅるよ!うーんうーん…うーん……しゅ、しゅ、しゅっきりぃぃぃぃ!!」

「ゆーん…ゆーん…うんうんしゃん、いっぱいでるのじぇ!まりちゃ、きょーもけんこうさんなのじぇ!!」

餌を食べ終わった二匹が、底部を空に向けて元気に叫ぶ。
食べたらすぐ出すという、まるで糞の製造機な行動をする赤ゆっくり達。
糞を空に向かって排泄する開放感が心地よいのか、眉間にしわを寄せつつもその表情はどこか穏やかである。
プルプルと小刻みに震えながら、餡子の塊である糞を排出すると、何故か得意げに眉毛を吊り上げながら仰け反る二匹。

「……………」

「……………」

『くっしゃぁぁぁぁぁぁい!どーちてうんうんしゃんが、こんなところにあるのじぇぇぇぇぇ?!』

得意そうな笑みを浮かべて、固まっていた二匹の赤ゆっくり。
何かをやり遂げた達成感に満ち溢れていたその顔が、急に崩れ出して泣きっ面になる。

「ゆびゃぁぁぁん!うんうんくっしゃい!だれかかたづけちぇよぉぉぉ!!」

「ゆぴぃぃぃ!ゆっくちできにゃいぃぃぃ!うんうんしゃん、どこかいっちぇねぇぇ!ゆんやぁぁぁぁぁ!!」

自ら排泄した糞の周りを飛び跳ねながら、ゆんゆんぎゃーぎゃーと大騒ぎする二匹の赤ゆっくり。
自己愛の塊、超が付く程のナルシスト達も、流石に自分の排泄物までは愛する事が出来ないらしい。

通常、ゆっくりを飼育する目的なら糞を定期的に排除するのだが、ペット用とコンポスト用のゆっくりにこれは不要である。
飼育目的ならゆっくりの糞をそのままにして置くと、ゆっくり達は自らの糞の臭いでストレスが溜まり死んでしまう事がある。
それを防ぐ為に、ゆっくりの糞を適度に処理しなくてはならないのだが、ゆっくり達は自分達の糞が勝手に消える事に何の疑問も抱かない。
野菜は勝手に生えてくる物と言うご都合主義な思考と同様で、「うんうんは勝手に無くなる物」と思い込んでいるらしい。

ペットの場合、ゆっくりが決められた場所以外で排泄した糞を、飼い主が処分するのはご法度な行為だ。
ゆっくりは自分の糞を必要以上に忌み嫌う為、これを処理する者を自分達より下等な存在と認識してしまう。
これが原因で、調子に乗ったペットゆっくりがトラブルを起こす事多々あるのだ。
まずは自ら糞の処理をさせるように教育し、それを代行する者に感謝の心を忘れないよう教え込まなければペットとして人と一緒には暮らせないのだ。

コンポスト用のゆっくりは、生ゴミを餡子に変換させる事を目的としている為、ゆっくりの糞を進んで処理してやる事はない。
コンポストゆっくりは糞の臭等の不満を口にするだろうが、我々にとっては何の害もない餡子である。
その上、餌となる生ごみが無い時は、これも重要なゆっくりの食料となる。
但し糞だけを食べさせての永久機関にはならない。
食べた糞を活動するエネルギーや、体の成長等に使う為、永久機関として遊んでいると最終的には糞をしなくなり飢えて死ぬのだ。

「ゆぅぅぅ…うんうんしゃん、いなくならないのじぇ…ゆっくち…ゆっくち…」

「くっしゃい…くっしゃい…どーちて…ゆびゃぁぁぁ…」

箱の中央に鎮座する糞から逃れる為に、箱の壁にもたれ掛る二匹の赤ゆっくり。
自らひり出した悪魔を恨めしそうに眺めながら、ガタガタと震えて両目に涙を溜める。
だがこれは、これから立派なコンポストゆっくりになる為の試練。
この赤ゆっくりはまだ、コンポストの門を叩いたばかりなのだ。

それから三日後。
付属されている最後の餌を箱に投下する。

「ゆぅぅ…くっしゃい、げろまずのにがにがしゃん…ゆっくち…ゆぐっ…ゆぐっ…」

①の赤ゆっくりが餌に気が付くと、暗い表情で両目を潤ませながら力なく這いずって餌の元に向かう。
この餌はゆっくりにとっては最悪の味らしいが、防腐剤等が入っている為赤ゆっくりの健康状態は良好である。

「ゆげぇ…まっずぃ………ゆびゃぁぁぁん!ふちあわしぇー…ゆぐっ…ゆぐっ…まりちゃは、ちんでれらしゃんなのじぇ…」

餌の前までやってくると、何時ものように恨めしそうな目で餌を見つめながらの独り言を呟く。
それが終わると覚悟を決めたかの様に両目を瞑り、恐る恐る舌を伸ばして餌を口に運ぶ。
相変わらず唾液を大量に分泌させて餌を食べている上に、喋りながら食事をするせいで、唾液と餌のカスが自分の顔や底部を汚らしく彩る。
餌を一粒食べ終わる度に悔しそうに顔を歪め、ブルブルと全身を震わせながら一粒涙をこぼす。
そして新たな餌を口に運ぶという動作を、毎日飽きる事無く繰り返す①の赤ゆっくり。

「ちゅぱぱぱっ!あまあましゃん!うんうんしゃん!ゆっくちー!ゆっくちー!ゆけけけのけけ!」

そんな①の赤ゆっくりを楽しそうに眺める②の赤ゆっくり。
その両目は、それぞれが別の物を見ているかの様に動き、涎と尿を垂れ流しながら長く伸びた舌で自分の顔をペロペロと嘗め回している。
②の赤ゆっくりは、このコンポスト入門生活で精神を病んで壊れたのだ。
空ろな目でヘラヘラと笑い、①や自分の糞を口に運んで租借しては大喜びで跳ね回る②の赤ゆっくり。
①の赤ゆっくりは、そんな②の赤ゆっくりを横目で眺めると、しばらく何かを考え込むように量目を瞑る。

「ゆぅぅ…あいつ、ゆっくちでぃないのじぇ…まりちゃのうんうんたべるなんちぇ…ゆっくちとして、さいてーなのじぇ…ゆっぷっぷ!わらっちゃうの…じぇ…ぇ………ゆえぇぇ…ゆっぐ…」

②の赤ゆっくりを見下すように踏ん反り返ると、嫌らしく眉を吊り上げて笑う①の赤ゆっくり。
だがその笑みもすぐに崩れ、涙が頬を伝う。
何故涙をこぼしたのは解らないが、付属の餌が切れたので次の工程に入る事にする。
私は生ゴミ処理に使っているゴム手袋を片手に着け、その手で②の赤ゆっくりを摘み上げる。

「ゆっぱーい!まりちゃー、おしょらのとんでるしゃん!きれーなおほししゃま?すたー…とんでりゅー?」

お下げをブンブンと振り回しながら、底部をブリブリと動かして楽しそうに意味不明な言葉を発する②の赤ゆっくり。
壊れていても、持ち上げられた時のテンプレは忘れてないらしい。
私はそのまま②の赤ゆっくりを①の赤ゆっくりの元まで持っていき、①の赤ゆっくりの目の前に②の赤ゆっくりを置く。

「ゆぅぅ…なんなのじぇ、いじわるなくしょにんげん…またちんでれまりちゃをいじめるのじぇ…?でもまりちゃには、まほーのかぼちゃさんがついてるのじぇ…なんにもこわくないのじぇ!」

私の姿に気が付いた①の赤ゆっくりが、ビクッと体を大きく震わせる。
そして帽子を深くかぶって顔を隠すと、怯えた目で私を見上げながら強がってみせる。
私はこの赤ゆっくりに対して特に何かしたと言う訳ではないのだが、この赤ゆっくりは私に苛められて居ると思っているらしい。
帽子から片目だけを覗かせて、ガタガタと身を震わせて警戒している様子を見る限り、どうやら私が怖い者だと認識しているようだ。
私はそんな①の赤ゆっくりを見て少し笑ってみせると、私の手の中でキャッキャとはしゃぐ②の赤ゆっくりを指で押しつぶした。

グチャ!!

「じょば!!」

②の赤ゆっくりは、汚らしい音と奇声を上げて簡単に爆ぜた。

「ゆ?」

①の赤ゆっくりは、目の前で何が起こったのか理解出来ないらしく、両目を真ん丸に見開いてしばらく固まる。

「………ゆっびゃぁぁぁぁぁ?!どーちてぇぇぇぇぇ?!ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!まりちゃが、ぺしゃんこになってるぅぅ?!なにこりぇぇぇぇぇ?!」

そしてようやく状況を把握すると、グネグネと体をくねらせながら大声を張り上げて泣き始める。
私は潰した②の赤ゆっくりの残骸を箱の中に残したまま箱の蓋を閉めた。
箱の中では①の赤ゆっくりが、大きな口を開けながら涙をポロポロとこぼしていた。

それから半日程経った。
最後の餌を食べてから何も口にしていない①の赤ゆっくりは、かなり顔色が悪くなり動きも鈍くなっていた。

「ゆぅぅ…おなかすいちゃ…ごはんしゃんどこなのじぇ?…にがにが、くさくさしゃんでもいいから、いじわるしにゃいででてきちぇよぉ…」

力のない声を上げながら、震えるかのように這いずる赤ゆっくり。
真っ赤に腫らした虚ろな両目が、同族の死骸と自分達の排泄した糞を見比べる。
そして恨めしそうに唇を噛むと、涙をこぼして下を向く。

「ゆっぐ…ゆっぐ…かぼちゃしゃん…まだこないのじぇ…がらすのおーじしゃま…ゆぅぅ…ゆえぇぇぇ…」

赤ゆっくりは周囲を見回すと、自分を助けに来るはずの誰かがまだ現れない事を嘆いて泣きだず。
大げさに体をグネグネと動かしてゆんゆんと泣くと、再び涙目で周囲を見渡す。
だが当然誰も助けに来るはずがない。
赤ゆっくりは歯を食いしばりながらガタガタと震えだすと、両目を瞑ったまま糞の方に向かって這いずっていく。

「ゆんゆんしゃん…ゆっくち…まりちゃを…ゆっくりさせちぇ…のじぇ?」

潤んだ目で糞に語りかける赤ゆっくり。
恐る恐る舌を伸ばすと、自分達のひり出した糞を舌に乗せて口の中へ運んでいく。
糞を口に含むと、頬をいっぱい膨らませて唾液を貯めてから咀嚼を始める。

「くっしゃい…まっずぃ…あまあま…ゆげっぷ…ゆぅぅぅ…とってもふちあわしぇー………ゆびゃぁぁぁ!」

苦虫を潰したような表情で、両目を固く閉じながら糞を味わう赤ゆっくり。
まるでソムリエの様に糞の味を解説すると、大きく身を震わせて叫び声を上げる。
だが泣けば泣くほど、叫べば叫ぶほど腹が減る。
赤ゆっくりは口の周りを糞で化粧しながら、残りの糞に齧りついた。

そして更に半日ほど経った。
糞も少なくなり、食料になりそうな物は②の残骸だけとなる。

「うんうんしゃんまっじゅい!…ゆぅ…おなかいーっぱい…ゆっくち………やっぱり、おなかいっぱいにはならないのじぇ…」

わずかに残った糞をすべて食べ終えた赤ゆっくりは、お下げで自分の腹を擦りながら満足そうにげっぷをする。
だがやはりそれだけでは、湧き上がる飢えは収まらないらしい。
赤ゆっくりは荒んだ目で②の残骸を眺めると、開き直ったかの様な振る舞いで残骸の方へ這って行く。

「ごはんしゃん…ゆっくち…くじゅのまりちゃ…まりちゃのごはんしゃんにしてあげるのじぇ…めーよなことなのじぇ…こーえーにおもうのじぇ!」

凛々しく眉毛を釣り上げて、②の残骸に凄んで見せる赤ゆっくり。
震えた声で宣言すると、両目を閉じて残骸に向けて舌を伸ばす。

「あまあま…くっしゃい…ゆぐぅ…うぅ…あま、くしゃ、おいちー…くにゃい…おいちー!くにゃい…ゆぇぇ…ゆぅぅ…ふちあわしぇ…ふちあわしぇ…ふちあわしぇぇぇぇ!ゆえぇぇぇぇん!!」

自分のしている事を誤魔化すかの様に、残骸の味の感想を呟く赤ゆっくり。
だが涙が湧水の様に溢れ出し、思わず天を見上げて大声を張り上げる。

②の赤ゆっくりは、すべてこの為だけに用意された付属品。
①のコンポスト用赤ゆっくりの為の、教育素材兼食料なのだ。
①と違い、②は加工所で普通に作られている汎用のゆっくり。
食用、加工用、餌用などに幅広く使われているもので加工場で最も生産されているゆっくりだ。
カビ等にも弱く、精神面も脆い為コンポストには不向きで、上手く適応出来ても半年くらいで使い物にならなくなる。
これをコンポスト赤ゆっくりと同時に飼う事で、コンポスト入門期間中にゆっくりの弱さ、脆さ、儚さ、醜さ、ゆっくりの糞や死骸も餌になる事を体験させる。
ゆっくりは基本的に、自ら体験した事でないと覚えが悪いのだ。

この赤ゆっくりのコンポスト入門生活は終わり、これから正式なコンポスト生活に入る事になる。
エリートコンポストとして教育された赤ゆっくりは、どんな物で食べて立派に生ごみを処理していくだろう。
私は早速コンポスト赤ゆっくりの入った箱を持って庭に出ると、我が家のコンポスト用ゴミ箱の蓋を開ける。
この箱は普通のゴミ箱と変わらない形状と色をしているが、蓋を閉めると防音効果がある加工所製のゴミ箱だ。

「………ゆぅ…ぅ…まぶちーのじぇ…ゆっくち…やっとちんどれらしゃん、おむかえにきたのじぇ?まりちゃ、おひめさまになるのじぇ?」

不快な臭いを放つゴミの中から顔を見せたのは、成体より少し体の大きいくらいの薄汚いゆっくり。
暗い顔で私を見上げてはいるが、その眼には若干の希望の光が見える。
拙い喋り方なのは、他に話し相手がいないからとか、精神の発達が未熟であるからだとか色々と言われているが正直私にはどうでも良い事である。
1年半ほど我が家でコンポストとして活躍した、先代の「すくすくコンポスト」のゆっくりだ。
先週辺りからの生ゴミ処理能力が落ちてきた為、そろそろ交換しようと思っていたものだ。
私は透明な箱の蓋を開けてからゴム手袋を装着すると、先代コンポストゆっくりの帽子を取り上げて細かく千切っていく。

「ゆぅぅ…?………………まりちゃのおぼーち!かえし…ゆっくちおかえりなしゃ……ゆ…?」

千切ったゴミはコンポスト箱に捨てていく。
先代コンポストゆっくりは、私の動きに思考が付いてこないようで、両目を真ん丸に見開きながら時々ボソボソと力なく何かを呟く。
私はさらに、だらしなくポカンと開かれた口の中に手を突っ込み、舌を握り潰してから未処理の生ゴミと千切った帽子をフリーズしたままのコンポストの口に詰めむ。
後は新コンポストゆっくりを、コンポスト箱に入れて作業は終了だ。
これで新コンポストゆっくりは、先代コンポストゆっくりを餌として処理してくれる事だろう。

舌を潰してゴミを口に入れたのは先代と会話をさせない為と、舌を破壊する事により、痛みでしばらくの間行動不能にしておく必要があるからだ。
下手に潰すと服が汚れるし、生かしておいた方が鮮度を保ったまま新コンポストに処理される。
まだ体の小さな新コンポストゆっくりには、流石に粗大な生ゴミすぎる。
コンポストゆっくりも、普通に潰してしまえばただの生ゴミになってしまうのだ。
こうして先代コンポストゆっくりは、新コンポストゆっくりの栄養となって代替わりしていく。
新コンポストゆっくりはこの闇の中で、代替わりの時まで「ちんでれら」として健気に働いてくれる事だろう。

…まあ、童話の様に助けに来てくれる者も、迎えに来てくれる者もいないのだが。
迎えに来る者がいるとすれば、それは死神であろうか?

徒然あき


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