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「しょろーり・・・しょろーり・・」 とある山のふもと、一匹のゆっくりまりさが草むらの中をずーりずーりと這いつくばっていた。 大きさからいってまだ子ゆっくりになったばかりといった所か。まだ赤ゆ言葉も抜けていないようだ。 まりさというよりまりちゃと呼んだほうがいいだろう。 「もうすぐ・・もうすぐなんらじぇ・・・」 ほふく前進のように草花に身を隠し前に進むまりちゃ。一見、子ゆっくりの遊びのようにも見えるが表情は真剣そのものだ。 まりちゃには討たねばならない敵が居る。あの家族を殺した人間を。 そうまりちゃは復讐者。敵討ちを誓う炎のリベンジャーなのだ。 あるまりちゃの復讐 「ゆふふ・・・みつけたんらじぇ・・・」 まりちゃは見つけた。復讐すべき相手を。憎っくき家族の敵を。 奴はそこにいた。木に寄りかかるようにしてじっと何かを見ている。 「・・・・いまのうちにせいぜいゆっくちしてるんらじぇ・・・」 怒りのあまり、歯軋りしながらまりちゃはつぶやく。 あの男こそ自分の家族を永遠にゆっくりさせ、お野菜さんが勝手に生えてくるゆっくりプレイスを強奪した人間である。 あの日、まりちゃ達一家は手狭になったおうちから、ごはんさんがたくさん生えてくるゆっくりプレイスにお引越しした。 これからはごはんさんの心配をしなくて済む。もう父まりさも狩りなどいかず一家みんなでゆっくりできるのだ。 そう思い家族みんなでゆっくりしていた所にあの男がやってきたのだ。 「何やってんだお前ら!!!ここは俺の畑だぞ!!!」 まりちゃは呆れた。この人間おうち宣言も知らないのかと。 「にんげんさんよくきいてね・・・ここはもうまりさたちのゆっくりぷれいすなんだよ・・・もうおうちせんげんもしてるしね・・・みればわかるでしょ・・・じょーしきでかんがえてね、じょーしきで。」 父まりさがため息まじりに説明していると男は急に襲いかかってきた。 おそらくあまりにも完璧に論破され、恥ずかしさのあまり逆上したのだろう。 「・・・もっと・・ゆっぐい・・したかった・・・」 「ゆげぇええ!!!!」 「やめちぇえええええ!!!!!!」 父まりさ、母れいむ、そして妹達が男の凶行の犠牲になる中、辛くもまりちゃは生き延びたのだ。 なんとか男が見えなくなる所まで逃げた後、まりちゃは誓った。 絶対あの男に復讐してやる、と。 その為にこの数日間、人間を倒すためのトレーニングは欠かさなかったし、武器も手に入れた。 とがった枝を加工してつくった「けん」である。 これさえあれば100ゆん力。誰にも負ける気がしない。 とはいえ賢い自分はけして敵である人間を過小評価しないし、自分の力を過信したりしない。 不意をついたとはいえあのカマキリをも屠り去る父まりさを倒したのだ。油断は出来ない。 確実に背後から不意をつき、そのまま一気呵成に倒してしまうつもりである。 「しょろーり・・・しょろーり・・」 徐々に男との距離を詰めるまりさ。 パキ その音にまりちゃは飛び上がるほど驚いた。うっかり足元の枝を踏んでしまったのだ。 まずい。気づかれたか? まりちゃは恐る恐る男の様子を窺った。 男に目立った動きはない。こちらを警戒する気配もない。相変わらず畑の方をじっと見ている。 どうやらさっきの音に全く気づいていないようだ。 「ふふ・・まにゅけなやろうなんらじぇ・・・」 これから殺されるのにのん気なものだ。まりちゃは侮蔑の笑いを男に向ける。 今のは男が生き残るためのラストチャンス。生と死を分けるターニングポイントといってもいい。 それをやすやすと見逃すとは。やはり勝利の女神はこのまりちゃ様に微笑んでいるのだ。 「しょろーり・・しょろーり・・・しょろーり・・しょろーり・・」 まりちゃの体がソフトボールサイズしかない上、音を立てないよう這っての移動なので全くスピードは出ない。 中々おとこに近づけないまりちゃだがけして焦ってはいけない事を分かっている。 草木にその身を隠しながら男のいる木のほうへ少しずつ近づいていく。 「しょろーり・・しょろーり・・・よし・・」 ついにまりさは男の背後を取ることに成功した。ここからなら男が気づく前に先制攻撃できる。 男は相変わらずまりちゃに気づいていないようだ。攻撃するなら今しかない。 「おちょーしゃん・・・まりちゃにちからを・・・」 まりちゃは帽子から「けん」を取り出す。自分の父の顔を思い浮かべながら。 「いくんらじぇ・・・」 そして憎っくき家族の敵である男にその切っ先を向け 「ゆぁあああああああ!!!!!!!」 雄雄しい雄たけびと共に男の足に突撃した。男の作業ズボンにまりちゃの「けん」が突き刺さる。 「しねぇええええええええ!!!!」 そのまま体当たりとストンピングの連続攻撃に移る。 これぞまりちゃの必勝にして必殺パターン!! この必殺コンボで自分は何匹もの虫さんを葬り去ってきたのだ!! これで死なない奴などこの世には存在しない!! 「ゆぁああああああああああ!!!!」 まりちゃの体当たり攻撃は続く。 男は全く抵抗できずただまりちゃの攻撃を受けるのみ。全く反撃の兆しもない。 おそらくまりちゃの鮮やかな奇襲と流れるような連続攻撃に恐れをなし声も出ないのだろう。 勝った。まりちゃの完全勝利だ。 「おとうしゃん・・おかあしゃん・・・みんな・・まりしゃかたきはとったんらじぇ・・・」 感慨深げにつぶやくまりちゃ。 どーれ、ゲス人間の泣き面を見てから止めを刺してやろう。まりちゃは人間の顔を見上げる。 「ゆ・・・・・!!?」 その顔にまりちゃの笑いがこわばった瞬間 ズン 何かが落ちる様な音があたりに響いた。 「さーて・・・昼からもがんばろーか。」 しばらくして一人の男が伸びをしながら畑に現れた。この男性こそ、まりちゃの家族の敵であり、この畑の所有者でもある。 昼食を取りに家に帰っていたのが戻ってきたのだ。 「アレ?案山子が倒れてるじゃないか。」 男は最近案山子を作っていた。廃棄されていたマネキン人形を使い、自分のお古の作業着と帽子を被せた本格的な奴である。それを畑の近くの木に立てかけておいたのだ。 なぜこんなものを作ったのかというと最近ゆっくりによる畑荒らしが後を絶たないからなのだ。 この前などちょっと目を放した隙に、畑のど真ん中でおうち宣言をする馬鹿ゆ一家がいた位である。 「よいしょ・・・ん?」 案山子を抱き起こす際、男は驚く。一匹の子まりさが下敷きになっていたのだから。 「それにしてもこのまりさ・・・ずいぶんすごい顔で死んでやがるな。」 まりちゃの死に顔。それは今にも「どぼじでぇえええええ!!!」と鳴き出しそうなゆっくりできないものだった。