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バザッバサッ… 無造作に子まりさの目の前に放られた、刈り取られたばかりの草。 狩りが得意なのかよく解らない親まりさの本日の獲物だろう。 「むーちゃ…むーちゃ…にがまじゅ…ふちあわしぇー…」 食事開始の号令もなく、親まりさから狩りの様子や獲物の報告も無いまま、子まりさは目の前の草を食べ始める。 口の中に広がる草の苦みとその臭いに顔をしかめ、誰に聞かれた訳でもないのに草の味の感想を述べる。 「ゆぅ…これっぽっちじゃ、おなかいっぱいにならにゃいよ…こんどはもっと、たくしゃんもってくるのじぇ…」 育ち盛りの子まりさの腹を満たすほどの量がない草を食べ終ると、何度目か解らない要求を親まりさにする。 だが親まりさは、子まりさが食事を終える前に何時も姿を消してしまうので、これは単なる子まりさの独り言。 子まりさは暗い表情のまま、巣の隅の小高い丘に移動して尻を突き出す。 「…うんうん…しゅるのじぇ…しゅっきり…ゆぅ…」 爽快感のある排便も、今一ゆっくり出来ない何かを感じる子まりさ。 きょうもゆっくり、けんこうてきなうんうんさんだね!おちびちゃんはゆっくりしてるよ おちびちゃん、まだまだうんうんさんがへたっぴだね!ぷりちーなおしりさんにうんうんさんがついてるよ! まったく、しょーがないね!おかーさんがぺーろぺーろして、ふいてあげるよ!! 「ゆぅ?おかーしゃ…?」 ふと、親れいむに何かを言われたような気がして、周囲を見渡す子まりさ。 だが誰もいない事を再認識すると、ぐっと唇を噛み締めながら涙をこらえてブルブルと震えだす。 この子まりさは生れてから家族と会話をした事がない。 生れ落ちてきた時の挨拶も誰にもして貰えないまま、自分のぶら下っていた茎を無造作に目の前に放られた。 「にゃんで、にゃんでぇぇ!にゃんでまりちゃに、おめでとーのごあいさつしてくれにゃいのおぉぉ?!」 その声に答えてくれる親ゆっくりの姿は何処にも見えない。 赤まりさは生まれてすぐに、体を震わせながら一匹で泣いていた。 だがいくら泣いても、赤まりさを優しくなぐさめてくれる親は現れなかった。 赤まりさの前に親が現れるのは、食事の時と排便の時だけだった。 「ゆゆぅ!おとーしゃ!ゆっくち!ゆっくち!これなーに?ごはんしゃん?おとーしゃ、かりにいってきたのじぇ?」 教わらずとも、ある程度の単語は喋れる赤まりさ。 具体的に狩りが何なのかは知らないが、まりさ種の有能さを誇張する為に用いる単語は優先的に遺伝されるらしい。 両目をキラキラと輝かせながら、黒い帽子のゆっくりの持ってきた草と黒帽子のゆっくりを見比べるような仕草をする。 だが黒帽子のゆっくりは赤まりさの問いかけに答える事なく、そのまま何処かに行ってしまう。 「まって!まって!おとーしゃ!どこいくのじぇー!まりちゃとゆっくち、おはなちしよーのじぇ!ゆっくち!ゆっくちー!!」 去りゆく黒帽子のゆっくりの大きな背中に、大声で呼びかける赤まりさ。 慣れないステップで不器用に飛び跳ねながら、黒帽子のゆっくりの背中を追いかける。 「ゆっくち!ゆっくち!おとーしゃ!ゆっくちまってよぉぉ!ゆっく…ゆんべぇ?!」 巣穴から出て行く黒帽子のゆっくりを追って、巣穴から出ようとする赤まりさ。 だが赤まりさは見えない何かに顔をぶつけ、そのままボールのようにコロコロと転がって巣穴の中に戻っていく。」 「ゆぅぅ………?…いちゃい…いちゃい………ゆえぇぇぇ…いっちゃいのじぇぇぇぇぇ!おとしゃぁぁぁ!ゆびゃぁぁぁぁぁぁん!ゆびゃぁぁぁぁぁん!!」 顔を真っ赤に腫らした赤まりさは、くるくると目を回しながらもゆっくりと地面に伏した体を起こす。 そしてお下げで顔を撫でるような仕草をすると、ポロポロと涙をこぼして泣き始める。 だが赤まりさをあやす者は何所にも居らず、赤まりさは何時までも巣穴の中でゆんゆんと泣き続けるのだった。 「うんうんしゅるよ!しゅ、しゅ、しゅっきりーーー!!いーっぱいでたのじぇ!ゆっくちー!」 一人ぼっちの食事を終え、ゆっくりの食後の定番とも言えるイベントの時間がやってきた。 尻を強調するかの様に突き出し、元気いっぱいに宣言する赤まりさ。 得意そうに眉毛を釣り上げながら、頬を赤く染めて排便する。 「ゆふー…とーっても、しゅっきりしたのじぇ!………ゆうぅぅ?!くっしゃぁぁぁぁい!ゆっくちできにゃいぃぃぃ!うんうんしゃん、どこかにいってねぇぇぇ!!」 排便し終わり、満足そうに微笑みながら体を揺らす赤まりさ。 だがほっと一息ついた所で、自分のひり出した山盛りの糞の臭いに気がつくと、顔をしかめて涙を流しながらビタンビタンと跳ね回る。 本来なら赤ゆっくりが巣穴で排便した後は、親ゆっくりが外に糞を捨てに行くのが一般的である。 たまに巣穴に糞を溜め込んでまとめてから捨てる個体や、糞を奴隷と称した同族の食事とする者もいるが、全身が臭覚で出来ているゆっくりが自身の糞のそばで暮らす事は殆どない。 この赤まりさも自らの糞の臭いとその存在感に圧倒され、巣の隅の方へ逃げるように飛び跳ねていく。 「ゆびゃぁぁぁん!ゆびゃぁぁぁん!くっしゃい!くっしゃい!ゆっくちできないのじぇぇぇぇ!ゆえぇぇぇぇぇぇん!!」 巣の隅で帽子を深く被って、身を隠すような仕草をする赤まりさ。 自分の糞の存在を確かめるかの様に横目で糞を見ると、ブルブルと体を震わせてゆんゆんと大声で泣き続ける。 するとそこにその鳴き声を聞きつけたのか、赤いリボンを付けたゆっくりが巣の中に入ってくる。 「ゆゆぅ?!おかーしゃ!ゆっくち!ゆっくちぃぃぃ!うんうんしゃんが、まりちゃをいじめるのじぇぇぇ!ゆっくちせーしゃいしてね!やっつけてね!ゆっくち!!」 赤まりさは赤リボンのゆっくりを母親だと認識したようで、嬉しそうに微笑みながら不器用に飛び跳ねて赤リボンゆっくりの元に向かって行く。 バシッ!! 「ゆっちゃい!………いちゃい…まりちゃのぷりちーふぇいすが、じんじんいたいのじぇ…ゆふぇぇ…どぼちて…まりちゃ、なんにもわるいことしてな…ゆびゃぁぁぁぁぁぁん!!」 跳ね寄って来た赤まりさの頬を、大きな揉み上げで叩く赤リボンゆっくり。 叩かれた赤まりさまコロコロと不規則に転がり、途中で帽子を落としてしまう。 だが赤まりさは帽子を落とした事よりも、母親に叩かれた事の方がショックらしく、頬をお下げで撫でながら両目をウルウルと潤ませる。 赤リボンゆっくりはそんな赤まりさに見向きもしないで、巣の中央に盛られた糞を手際よく片付けると巣穴から出ていく。 「ゆぅぅ?!おかーしゃ!どこいくのじぇ!どーちてまりちゃをなぐったのじぇ!おとーしゃにも、なぐられたことにゃいのにぃぃぃ!おいてなかいでのじぇぇぇ!ゆんやぁぁぁぁぁぁ!!」 赤まりさは黒帽子ゆっくりの時と同様に、無言で去っていく赤リボンゆっくりの背中を追いかける。 だがやはり圧倒的に赤リボンゆっくりの方が早く、赤まりさは跳ねている途中でバランスを崩して転ぶ。 「ゆっぶぅ!………ゆびゃぁぁぁぁ!いちゃい!いちゃい!いちゃいのじぇぇぇぇぇ!ゆびゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」 赤まりさは顔を起こして、去りゆく赤リボンゆっくりの背中を眺めながら、唇を噛み締めて涙をポロポロと流した。 それから赤まりさは、毎日親ゆっくりから一切会話して貰えないまま育てられた。 毎日起床の挨拶を一人ぼっちの部屋で元気良くしては、誰も居ない事を思い出してゆんゆんと泣き。 毎日無言で草を放り投げる親ゆっくりに語りかけては、無視されてゆんゆんと泣き。 毎日無言で排便を片付けに来る親ゆっくりに打たれては、頬を腫らしてゆんゆんと泣き。 誰にも遊んで貰えないと嘆いては、駄々をこねるように転げ回ってゆんゆんと泣き。 一人ぼっちで巣の隅で眠りについては、寝言でゆんゆんと泣き。 覚えた事は親ゆっくりが自分と会話をしてくれない事、自分を構ってくれない事とトイレの場所である。 トイレの場所は偶然部屋の隅で排便した時に、親ゆっくりが赤まりさを叩かないで糞を処理した事から、赤まりさが学んだ事である。 以後は部屋の隅で排便するようになり、親ゆっくりに叩かれなくなった。 だがある日、あえて構って貰いたくて巣の中央に糞をひり出した事がある。 その時は何度か叩かれて、全身を真っ赤に腫らして泣き喚いたが、親ゆっくりに構ってもらえるのが少し嬉しかった。 翌日も構って貰おうと部屋の中央で排便したが、親ゆっくりは冷たい視線で赤まりさを睨むだけで糞を片付けずに巣から出て行ってしまった。 赤まりさはその後、泣く泣く糞をトイレの場所まで糞まみれになりながら移動させた。 そしてその日は一日中ゆんゆんと泣いて過ごした。 帽子や体が糞でまみれた事よりも、呆れたような、失望したような親ゆっくりの冷たい視線が何より悲しかったのだ。 やがて赤まりさは子まりさ程に成長したが、まりさ種とは思えない程元気がなくなり、毎日暗い表情で下を向いては巣の隅で過ごすようになった。 ほとんど動かない為体力の消費はそれ程でもないのだが、運ばれてくる草の量は赤ゆっくり時代と大して変わらないため腹はいつも4~5分目と言ったところ。 親ゆっくりが現れるとあえて強がる様な態度を取り、以前の様に事ある毎に泣かなくなったが、それでも時々悔しそうに、悲しそうに顔をしかめて静かに涙をこぼしていた。 この子まりさが、我が家で暮らす事になったのは1ヶ月ほど前の出来事である。 農家を営む私の畑に、得意げな顔をした二匹のゆっくりが現れた。 二匹は山を降りてきた野生のゆっくりで、れいむ種とまりさ種の番。 「ゆっくりぷれいす」とやらを求めて、私の畑にやってきたそうだ。 私の畑を荒らしていた所を捕まえてボコボコにしてやったが、実っている赤ゆっくりをネタに命乞いをしてきたのだ。 「このこにつみはない」だの、「このこはゆっくりできる」だのと定番の言い訳を聞かせてくる二匹のゆっくりを見て、ふと私は二匹に問いかけた。 『この子に罪はない』のならば、親から何も教わらない状態のゆっくりなら、人間の畑を荒らす事はないのかと。 二匹はきっと大丈夫だと言うので、私はこの赤ゆっくりを親との会話を一切ない状態で育ててみる事にしたのだ。 ちなみに実ゆっくりは、私が親ゆっくりをボコボコにした時にほとんど潰れており、無事なのはこの子まりさ一匹だけだった。 それから私は、この二匹の親の口をガムテープで塞いでから剣山の上に乗せて、使っていない小さな半透明のビニールハウスの中に二匹を設置した。 その後、両目だけ見えるように土を被せて、最後に帽子とリボンを取った頭の天辺を包丁で切り落として二匹を放置。 餌雑草やその辺の土等をポッカリと開いた頭の中に毎日詰めて、栄養補給して赤ゆっくりが生まれ落ちるのをのんびりと待った。 赤ゆっくりが生まれてからは、私が帽子かリボンをつけて赤ゆっくりの世話をした。 基本的に会話はもちろん、何も教えるつもりは無かったのだが、自分で糞をハウスの中央にした癖に、ギャーギャーと五月蝿く騒いで居たのでとりあえず叩いてみた。 それから毎日、私は赤まりさが糞をして騒ぐ度に赤まりさの頬を軽くビンタした。 そんなある日、赤まりさがハウスの隅で震えながら糞をした。 そこは偶然か必然か、ハウスの隅に小高く盛られた土の上。 親ゆっくりの栄養補給穴がある場所だった。 私は糞を処理する手間が省けたと、そのまま糞を親ゆっくりの餡子の中に押し付けて処理した。 以後は赤まりさはハウスの隅で糞をするのが習慣となった。 だがある時、ハウスの中央で糞をして得意そうにふんぞり返っていた事があった。 私は呆れ顔で赤まりさを叩いて糞を始末したが、何故かその翌日も赤まりさは同じ様にハウスの中央で糞をして得意そうにふんぞり返っていた。 私は虚しくなったので、あえて赤まりさを叩かずに糞を始末してハウスを後にした。 そのさらに翌日、何故か赤まりさは両目を真っ赤に腫らして、部屋の隅で糞をしていた。 以後は何やらブツブツと独り言を呟くが、元気なさそうに下を向いて以前ほど泣き喚く事はなくなった。 そんな訳でこの子まりさを飼い始めて1ヶ月たった。 体も以前より大きくなったので、そろそろ私の畑を見せる事にする。 私は子まりさが寝ている間にハウスの一部のビニールを外し、そこから私の畑を覗けるようにてしばらく様子を観察する事にした。 … …… ……… 「…ゆっくち…おはよーさんなの……じぇ…ゆぅぅ…」 赤まりさが目を覚ました。 お下げで目を擦る様な仕草をしながら、涙目で誰に言うでもなく挨拶をする。 挨拶の途中で巣に誰もいない事に気がついたのか、ぐっと唇を噛むと涙目で下を向く。 しばらく下を向いてポロポロと涙をこぼしていた子まりさだったが、何かに気がつき急に顔を上げる。 「ゆぅ…なんかおうちのよーすがおかしいの…じぇ………ゆわぁぁぁ?!おうちのかべしゃんがこわれ…て…ゆぅぅ?あれは…」 巣の一部の壁が消えて無くなっている事に気がついた子まりさは、慌てて巣に開いた大穴に向かって這いずり出す。 そしてその大穴から顔を出すと、目の前に広がる風景に思わず叫び出す。 「こ、これはもしかして、でんせつのゆっくちぷれいすの………はたけさんなのじぇぇぇぇぇ?!どーしちぇ?!まりちゃ、とってもいいゆっくりだから、ごほーびなのじぇ?!」 今までの曇った表情が嘘の様に、満面の笑みを浮かべる子まりさ。 お下げを振り回しながら、ぴょんぴょんと飛び跳ねてキャッキャとはしゃぐ。 「ちょっと待て、ここは私の畑だぞ?この野菜は私が育てたんだぞ?理解できるか?」 そこに一人の人間が現れた。 子まりさは両目をまん丸に見開いて驚くと、眉毛を釣り上げて両頬を膨らませる。 「なにいってるのじぇ!ここはまりちゃがみつけた、まりちゃのゆっくちぷれいすなのじぇ!おやさいさんも、まりちゃのためにはえてきたのじぇ!そーんなこともわからないのじぇ?こいつはばかなのじぇー!!」 人間を威嚇しながら大声で怒鳴り終えると、人間を馬鹿にするかのような目で見つめながら尻を突き出して屁をこく子まりさ。 人間はそんな子まりさを持ち上げると、呆れ顔で巣穴の隅に向かって呟く。 「何だ、お前らが関わってなくてもダメじゃないか。ゆっくりは所詮こんなものか、期待して損したよ」 「ゆわーい!まりちゃはおしょらのきらきらぼししゃん!…ゆゆぅ?!なにいってるのじぇ!まりちゃをおろすのじぇー!ぶれーものなのじぇ!!」 人間は子まりさの顔を見て呆れた様にため息をつくと、子まりさを軽く握り潰して堆肥用の木箱に投げ捨てた。 そして子まりさの巣だったビニールハウスの隅に埋められていた親ゆっくりを掘り返し、刺さっていた剣山を取って子まりさを捨てた木箱に二匹仲良く押し込めた。 「…いちゃい……ゆぎぎ…ぎ…どぼぢて…ゆっぐぢ…まりちゃ…ゆっぐぢ…ゆびゃぁぁ…ぁぁ…」 子まりさはネジ曲がった体をブルブルと震わせながら、大量に餡子を吐き出して涙をこぼす。 そして力なくひと泣きすると、大きく身を震わせて動かなくなった。 土塗れで半分腐れかかった二つの塊は、そんな子まりさを見つめながらブルブルと身を震わせて涙をこぼすのだった。 完 徒然あき ---- #pcomment(./comment,reply)