anko4624 ゴミ箱のゆっくり

Last-modified: Mon, 15 Aug 2016 16:12:00 JST (1537d)
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「かわいーまりちゃがゆっくちうまれるよ!せかいのみんなで、おいわいしちぇね!!」

重たそうに茎からぶら下った実ゆっくりが突然目を開き、全身をぶるぶると震わせ満面の笑みを浮かべる。
何処にでも沸いて出る、平凡なゆっくりの誕生の瞬間である。

「ゆっくちー!ゆっくちー!せかいのおともだち、こんにちわーなのじぇ!かわいーまりちゃのたんじょうなのじぇ!!」

熟れすぎた実ゆっくりが茎から離れ落ち、ポヨンと間抜けな音を響かせ大地に着地した。
赤ゆっくりとなった小さなまりさは、りりしく眉毛をつり上げると得意そうに仰け反り、自分達種族がこの世で一番好きな言葉を口にする。

「ゆっくちしていっちぇね!!」

幸せの言葉を言い終えた赤まりさは、感極まったかのように全身を震わせ、自分に帰ってくる挨拶、賞賛の言葉を期待に満ちた表情で待ち望む。
両目を閉じながら、ニヤニヤと口元を綻ばせる浮かべる赤まりさ。
だが、いくら待っても何の挨拶も返ってこない。
少し不機嫌になった赤まりさは眉間にシワを寄せると、両頬を膨らませながら睨み付ける様に周囲を見渡す。

「なんなのじぇー?!かわいーまりちゃが、ゆっくちしたあいさつをしたのじぇ!みんなでほめるのじぇ!みんなでよろこぶのじぇー!!」

高らかに不満の声を上げると、何故か再び得意そうに仰け反り、りりしく眉毛を吊り上げて震えだす赤まりさ。
だがやはり、その声にこたえる者は現れなかった。

「ゆぅ…?………うぅぅ………ゆっびゃぁぁぁぁ!なんなのじぇぇぇ!どーちて、まりちゃのたんじょーを、しゅくふくしてくれないのじぇぇぇぇ!!」

沈黙に耐え切れなくなった赤まりさは、涙をポロポロこぼしながら不快そうに身をくねらせる。
可愛そうなゆっくりだと振る舞えば、きっと世界中の誰もが放っておく筈はない。
そんな事を頭に思い浮かべながら、出来るだけ大きな声で泣き、出来る限り大げさに、びったんびったんと奇妙な音を立ててのた打ち回って見せる。
しかしそれも無駄な努力。
いくら叫んでも、いくら駄々をこねて見せても、誰も赤まりさを助けようとはしない。

「ゆっびゃぁぁぁぁぁ!おどーじゃぁぁぁぁ!おがーじゃぁぁぁぁ!どこなのじぇぇぇぇぇ!ゆんやぁぁぁぁぁぁ!!」

ついに孤独と不安に耐えきれなくなり、心の底から大泣きを始める赤まりさ。
自らの誕生の喜びなどはもう微塵もない。
薄らと親株から受け継がれた知識を頼りに、自分を保護してくれるであろう親に呼びかける。
本来なら、誕生に立ち会った親が赤まりさと最初の挨拶を交わし、赤まりさが実っていた茎を最初の食事として親から赤まりさに与えられる。
だが親株のゆっくりはすでにこの世にない。
赤まりさが生まれるずいぶん前に親株は死んでおり、その死体はすでに腐りかけていた。
肌はおろか、髪の毛や飾りも黒く変色し、形も崩れかかっている親株ゆっくり。
そのせいで赤まりさは、目の前の黒い塊を親ゆっくりと認識出来ずに、いつまでも現れる事のない親ゆっくりに呼びかけ続けた。

「ゆっぐ…ううぅ………ぐすっ…ゆえぇぇ…ゆえぇぇぇ……どぼじって…まりちゃ…こんなにないちぇるのにぃぃ…」

お下げで涙を拭うと、帽子で少し顔を隠し不安そうに周囲を見渡す赤まりさ。
そして今まで気が付かなかったある事に気が付く。

「ゆぅぅ?…スンスン……スンスン………ゆぅ…?………ゆっぴぃぃぃ!くっしゃぁぁぁ?!なにこのにおいぃぃ!くっしゃいのじぇぇぇ!くっしゃいのじぇぇぇぇ!!」

今まで気が付かなかったのが不思議なほどの悪臭。
嫌でも体に染み入ってくる悪臭に、赤まりさは顔を歪めて涙をこぼす。
だが全身が感覚器官のゆっくりに、悪臭から逃れるすべはない。
大慌てで臭いから遠ざかろうと、不恰好に彼方此方跳ね回る。

「ゆっちゃい!ゆぅぅ…なんなのじぇぇ?!まりちゃ、くっしゃいのじぇぇぇ!じゃまちないで、ここをどくのじぇぇぇ!!」

何者かに行く手を阻まれ、不快そうに体をくねらせる赤まりさ。
とりあえず頬を膨らませて威嚇をしてみるが、目の前のそれは一向に赤まりさに道を譲る気配はない。

「ゆぅぅ…どーちてむししゅるの…じぇ?………ゆぅぅぅ…にゃんで…にゃんでみんな…まりちゃを…ゆびぇぇ…くっしゃぁぁぁ…ゆっぐ…」

赤まりさは自分の行く手を阻む者、壁にもたれかかったまま悔しそうに唇を噛むと、悪臭に抱かれるようにそのまま深い眠りに付いた。

「ゆ…ん…はっ!………ゆぅぅ…またあのゆめなのじぇ…」

お下げで眠そうに目をこすりながら、ゆっくりと薄汚れた体を起こす赤まりさ。
赤まりさが生まれてからまだ一週間程もたっていないが、時間経過のわからない赤まりさにとっては随分昔の事のように感じているようだ。
あれから空腹で目を覚ました赤まりさは、とりあえず目に付くものを片っ端から口に入れてみた。
だが中々口に合うものがなく、何度も餡子を吐き出した。
それでもせいに対する執着は強かったようで、自分の吐いた餡子を口に含み、少しずつ食べられるものを探して狭い世界を這いずり回った。
腹を下して下痢に塗れた事もある。
硬いものに噛み付いて歯が欠けた事もある。
それでも、時々真上から差し込む光と、一緒に入ってくる新しい物に、今度こそ美味しくたべられる物があると、わずかな希望を見出して生きていた。

「ゆぅぅ…またまぶちーさんなのじぇ…?」

真上から差し込む光に、眩しそうに目を細める赤まりさ
薄暗い所で暮らしている赤まりさには、僅かな光でも眩しく見えた。
それが希望の光、自分を助けてくれる者に見えた。

「ゆぅぅ…こんどこそ…おいちーごはんしゃん…ゆっくち…ゆっくち…」

祈るように目を閉じる赤まりさ。
そして何かの着地音が聞こえてきた方角に目を向ける。

「ゆっくち…おいちーごはんしゃん…ゆっくち…まってて…のじぇ…ゆっくち……ゆっくち…」

赤まりさは空から降ってきた物に向かい、力なくノソノソと這い寄っていく。
だがその目は希望に満ちあふれ、キラキラと輝きを放っていた。

「ゆっくち…ゆっくち………ゆっく…ゆぅぅ?………がっくち……」

赤まりさがやっとの思いでたどり着いた場所で待っていた物は、何やらベトベトした物や、異臭のする水分を多く含んでいる物。
どれも美味しそうには見えないそれを目にした赤まりさは、くたびれた様に体を凹ませると、顔をしかめて恐る恐る舌を伸ばす。

「まっじゅい!これ、げろまっじゅ!…ゆびぇぇ…」

異臭と共に口に広がる苦味、辛味に顔を強張らせる赤まりさ。
悔しそうに唇を噛み、ポロポロと涙をこぼしながら、得体の知れないそれを少しずつ口に運んでいく。

「まっじゅい!…げろまじゅ!…ゆげぇ!…ふちあわしぇー…ゆぐっ…ゆぅぅ……ふちあわしぇー…ゆっくち…」

真っ黒に変色した体をブルブルと震わせ、自らの不幸を誤魔化すかのように目を閉じる。
そして再び空を見上げると、諦めきれないかのように何かをボソボソと呟いた。

気が付いたらゴミ箱にゆっくりが住み着いていた。
何処から入ってきたのか解らない。
かなり汚れているので、何の種類かもわからない。
潰し損ねた野良だろうか。
本当にゆっくりは何処にでも沸いて出る。
どうせゴミ箱からは出てこれないだろうと思い、うわさに聞くコンポストにでもなればと、しばらく放置しておいたのだが流石に臭くなってきた。
それに生ゴミがあまり減っていない。
明日はゴミの日なので、その時にでも捨てようと思う。
ゆっくりは所詮ゆっくり、動く生ゴミだったようだ。

徒然あき


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