anko4180 非加工所

Last-modified: Wed, 20 Jul 2016 08:16:23 JST (2830d)
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ごおんごおんと、響くは機械の駆動音。
巨大な工場では、今日もゆっくりたちの悲鳴が聞こえてくる。

「いやだ! いやだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
あ゛あ゛あ゛あ゛!」
「だずげで! だずげでおざ! おざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
「ぼううびだぐなび! うびだぐない゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!」
「ごろじで! も゛う゛い゛や゛! いぎでいだぐないいいいいいいいいいいい!」

 泣き叫ぶゆっくりたちがずらりと並んでいる。
 種類はれいむとまりさのみ。彼らは交互に並べられ、あんよ一つ動かすことのできない処置を施さ
れ、餌は背中に突き刺さったチューブから、うんうんはあにゃるに突き刺さったチューブから排出さ
れる。
 水はほとんど与えられず、常に乾いているので、しーしーは出ない。出たとしても濃いしーしーが
一滴か二滴ちょろりと出る程度だ。なので、しーしーに関しては出しっぱなしだった。

 そして、彼ら親ゆっくりたちの役割はただ一つ。
 出産である。

『非加工所』 マンネリあき

 親れいむは、夢を見ていた。
 おやまのゆっくりプレイスで、ゆっくりとした家族と共に過ごしていたあの日々。
 朝がくれば「ゆっくりおはよう!」と、番の親まりさにすーりすーりをして、
 昼がくれば「ゆっくりおひるだよ!」と、可愛い可愛いおちびちゃんたちに、草や芋虫を食べさせ
てあげて。
 夜がくれば「ゆっくりおやすみ!」と、番の親まりさとちゅっちゅして、おちびちゃんにすーりす
ーりして、みんなでベッドですーやすーやしていた。
 ゆっくりできないことなど、全く何もない。
 親まりさは優秀で、親れいむは家事に集中することができた。
 良妻賢母のできた妻、というのが群れからの親れいむに対する評価であり、そのことを彼女自身も
誇りに思っていた。

 おちびちゃんたちは果てしなく可愛らしかった。
 赤れいむ、赤まりさの二人は
「ゆっくちちていっちぇにぇ!」
「ゆっくりするのじぇ!」
 と愛らしい挨拶ができるようになり、おうたを習い、ぴょんぴょんを習い、すーりすーりを習った。
 次第次第に成長していくおちびちゃんは、まさにゆっくりだけに与えられた「みらくるっだね」と思っている。下等な獣たちには永遠に分からないだろうな、と考えて親れいむは苦笑した。

 ずっとずっと、こんな日々が続くと思っていた。
 おちびちゃんが成ゆんになって、独り立ちして、また子供を作って、また独り立ちさせて、その内、孫たちが遊びに来て……やがて、皆に看取られながら永遠にゆっくりするのだろう。
 そんなことを、親れいむは考えていた。
 退屈な一生だとは思わない。充実した……とてもゆっくりしたゆん生であろう。

 だが、だがしかし。
 彼らゆっくりたちは自分たちの山の本当の支配者が誰か、全く考えていなかった。

「こんにちは! ゆっくりたち!」

 そんな明るい声と共に、「にんげんさん」という生き物がやってきた。
 彼は「あまあま」を分け与えてくれると言って、地面に青い見たこともないものをバラ撒いた。
 親れいむは、赤ゆっくりたちと共にそれをむーしゃむーしゃして……。

「あ……ああ……あああ…………」
 気付けば、ここにいた。
 親れいむがこの工場に「仕入れ」されてから、既に一週間が経とうとしている。
 最初の一日は、脱出しようと努力した。
 次の一日は、やってきた「くそにんげん」に出すように脅した。
 次の一日は、やってきた「にんげんさま」に出してくださいと懇願した。
 次の一日は、ただ絶望に泣き叫んだ。
 次の一日は、ただ泣き叫んだ。
 声が枯れ果ててても、ただ泣き叫んだ。
 彼女がこの工場でやらされていること――それは、ゆっくりたちにとってもっとも神聖でもっともゆっくりできる行為。
 即ち「出産」である。

 ――七日後。
「おぢびじゃん! おぢびじゃん! うばれじゃだべえええええええええええええ!」
 親れいむの絶叫に、産道から顔を出した赤ゆっくりも必死の形相で泣き叫ぶ。
「いやじゃ! いやじゃあああああ! うばれだぐにゃい! うばれだぐにゃい!
 うばだいで! れいびゅをうばだいでべべべべべええええええええええええええ!」
 この世界全てから祝福されるという妄念を抱いて生まれてくるはずの赤ゆっくりだが、この工場で
生まれるものだけは別だ。
 胎内に居る頃から、泣き叫んでいる。
 生まれたくない、生まれたくないと、嘆き続けている。
 生まれたことが絶望だと、よく理解しているのだ。
「う……ば……れ゛…………る゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!」
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 すぽん、と音を立ててれいむのまむまむから赤れいむが吹っ飛んだ。
「おぞら゛どびだぐな゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!」
 黒いゴムでできた床に、傷一つなく着地する赤れいむ。

「あがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!
 う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛ばばばばばれ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え
゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!」
「やじゃやじゃやじゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!
 まりじゃうばれだぐないんだじぇえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」

「じなぜでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!
 お゛があ゛ざん゛じな゛ぜでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」
「おぢびじゃんおぢびじゃんおぢびじゃんおぢびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 生まれたくないと泣き叫ぶ赤まりさ。
 死なせて、と訴える赤れいむ。
 どれもこれも、ただひたすらに異様な光景である。

 必死になって出産を我慢する親ゆっくりたちであったが、無駄なことだ。
 妊娠誘発剤を餌に混ぜられている以上、どうあっても子供が産み落とされるのは避けられない。

「「「う゛ばれ゛る゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」」」
「「「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」」」

 すぽーん! すぽーん! すぽぽーん!

 赤れいむとほぼ同時に、隣り合った親ゆっくりたちからも一斉に子供が産み落とされた。
 誰一人として「おそらをとんでるみたい」などという、本能に刻まれた言葉を発するものはいない。
彼らはただひたすら生まれることを拒み、死ぬことを望み続けていた。
 赤ゆっくりたちは、細長いベルトコンベアのような床に着地した。上には、コンベアのサイズに合
わせたようなプレス機がある。

「あ……あ゛……あ゛ぁ゛……」
「う゛ば……れ゛だ……う゛ばれ゛じゃ゛っ゛だ……」
「ゆっぐぢ……ゆっぐぢ……じでえ゛……」

 親たちが、泣きながら生まれた赤ゆっくりたちを見つめている。
「おちびちゃんがいればゆっくりできる」というゆっくりたちの本能すら凌駕する絶望。
 別に目の前の赤ゆっくりが可愛くない訳ではない。
 むしろ可愛く、愛しく、まさに「てんしのような」おちびちゃんたちであることは間違いない。
 だが、親たちはよく分かっているのだ。
 これから、彼女たちに待つ運命を。

「……ゆ゛……あ゛……」
「ぢ……ぢぢ……」
「ぐび…………」

 生まれたことがまだ、信じられないという形相の赤ゆっくり。
 普通ならば、ここで「ゆっくりしていってね!」と世界に向けて挨拶を始めるはずだ。だが、彼ら
は違う。そんな言葉すらも言えなくなるほど、赤ゆっくりたちは追い詰められているのだ。

「あんよじゃん! あんよじゃん! ゆっぐりうごいでえええええええええええええええ!!!」
「まりじゃのあんよじゃんうごいでええええええええええええええええええええ!」
「でんじょうざんゆっぐりじでぐだざいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

 赤れいむと赤まりさたちが、一斉にぐねぐねと蠢き出す。その形相は生まれたばかりとは思えない
ほどに絶望的だ。
 だが黒いゴムでできた床は低反発と低粘着の性質を持っており、赤ゆっくりの柔らかなあんよでは
ひっついてぴょんぴょんもできず、這うこともできないのだ。

 ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!

 サイレンの無機質な響き。
 ぐおんぐおん、と音を立てて床がせり上がり始め、同時に天井が下がり始めた。

「あ゛……あ゛……あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
「やじゃやじゃやじゃやじゃやじゃあああああああああああああああああああ!!!」
「おがあざん゛! おがあざああああああああああああああああああああああああああん!」

 床が、親ゆっくりたちの丁度目の高さに合わせる位置で停止する。
 だが天井はのんびり、じっくりと床の位置まで下降していく。
 その速度はゆっくりの目から見てすらも、酷く鈍重だった。これは、工場長の「ゆっくりたちの目
にも何が起きているかちゃんと分かるように」という、意地悪い心遣いである。

 ガタガタと震え、しーしーとうんうんを漏らし、口からは餡子を吐き出しながら、赤ゆっくりたち
はゆっくりゆっくりと下がってくる天井を見る。
「お゛ね゛え゛じゃん! お゛ね゛え゛じゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!」
 赤ゆっくりたちはその声に、慌てて親ゆっくりのまむまむを見る。
 産道から、自分たちの妹が泣き叫んでいた。彼女たちは『次』の犠牲者だ。
 胎内では死にたくないと泣き喚くだけ、保護膜のせいですーりすーりもできなかったけれど。
 それでも大事な大事な妹だ。
「い゛も゛う゛……ぢょ……いもうぢょ…………!」
「まりちゃのいもうぢょ……ゆっぐぢ……」
「あ……あ゛ぁ゛……」
 姉ゆっくりたちも、届くはずのないおさげやもみあげを懸命に伸ばす。舌を伸ばし、空を飛ぼうと
すら考えた。
 だが、全くの無駄だ。
 ただ視線を交わすだけ、ただ愚にも付かないやりとりをするだけ。
 親たちは妹たちに「みちゃだめ」と必死に訴えかけるが、それでも姉恋しさのあまり妹たちは、そ
の光景を見続けてしまう。
 この後に何があるか、親も姉も妹も分かっているのに。

「ゆび!」
「じゅぶ!」
「ぎゅぶ!」

 天井が赤ゆっくりたちの頭に触れた。ここから、更に天井が下降する速度は低下する。
 ゆっくりゆっくりと……赤ゆっくりたちは「潰れて」いく。

「いじゃい! いじゃい! ごろじで! ごろじでぐだざい! ごろじでええええええええ!」
「おぼおおおおおおお! おぼおおおおおおおおおおおお!」
「ゆっぐぢ! ゆっぐぢゆっぐぢゆっぐぢゆっぐぢいいいいいいいいいいいいいいいい!」

 中には不幸にも非ゆっくり症を発症させてしまった赤ゆっくりもいる。
 内部の痛みと外部の痛み、二重の痛みに苦しむゆっくりはレアモノだった。
 そんな彼女たちの悲鳴や懇願にも関わらず、天井はなおもゆっくりと赤ゆっくりたちを潰していく。

「いじゃ……い……がおも……あんよじゃんも……じぇんぶ……いじゃいよぉ……」
「どうぢでうんだの……どうじでごろじでぐれないにょ……?
 おぎゃあじゃん……どうじで……どうじでぇ……」
「ゆっぐぢぢぢぢぢぢぢ……ゆっぐぢぢぢぢぢぢぢ……」

 親ゆっくりは、枯れ果てた涙を一粒零す。
「ごべんでぇ……うんで……ごべんでぇ……」
「ゆっぐりじであげだい……ゆっぐりざぜだいよぉ……」
「ゆっぐり……ゆっぐりぃぃぃ……」

 そして、別れの時間がやってくる。

「じゅぶじゅぶじゅぶれ゛れ゛れ゛れ゛れ゛れ゛れ゛れ゛れ゛れ゛れ゛れ゛」
「いじゃい゛ゃい゛ゃい゛ゃい゛ゃい゛ゃい゛ゃい゛ゃい゛ゃい゛ゃい゛」
「ゆっぐぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢ」

 ぷっくぷっくに膨らんだ赤ゆっくりたちの顔から、ゆっくりと餡子がはみ出していく。
 じっくりじっくりと、人間における内臓や筋肉、血液のようなとろっとろの餡子が、にゅるにゅる
と吐き出されていく。
 その様は口の部分に固形化してしまった歯磨き粉のチューブを、無理やり握り締めたときの光景に
も似ていた。

「おぢ……びじゃ……」
「ゆあ……」
「ああ……ぼうやだ……」

 親ゆっくりはただひたすら嘆き、

「おね……じゃ」
「だじゅげで……」
「まりぢゃも……ああなるのじぇ……? いやなのじぇ……いやなのじぇ……」

 妹ゆっくりたちは、生まれることへの絶望に呻いた。
 やがて、終わりが訪れた。

「「「「「じゅびぃ!!!!」」」」」

 赤ゆっくりたちが一斉に潰され、平べったい轢死体となる。天井が、先ほどまでの鈍重な動きを忘
れたかのように、滑らかに上昇していった。
 それから、床部分に設置されたスプリンクラーが放射され、ゴミとなった赤ゆっくりたちを洗い流
していく。
 五分もせずに掃除は完了。今度は温風が吹き始めて瞬く間に床を乾かしてしまう。
 そして、そこにはもう何も無かった。わずかに漂う死臭もすぐに掻き消えるだろう。だが、この工
場で死臭が止まることは決してない。

 そして、「ピーッ!」とアラームが鳴る。

「「「ゆっびゃあああああああああああああああああああああ!!」」」

 妹ゆっくりたちが絶叫する。
 このアラームを、胎内にいるときから彼女たちは記憶しているのだ。
「出産の準備ができた」ということ。
 遅かれ早かれ、自分たちも姉と同じ運命を辿るのだ――。

 ――ところで、ここは加工所ではない。

 ここは、とある男が私財を投じて造らせた「非加工所」である。
 男は子供の頃から、加工所が好きだった。
 加工所で泣き叫ぶゆっくりたちが、本当に好きで好きでたまらなかった。
 虐待お兄さんであることもひた隠しに隠し、彼は加工所に就職して――三ヶ月で退職した。

 彼は気付いたのだ。
 加工所で働くことが夢だったのではない。
「加工所で泣き叫ぶゆっくりたちを見続けること」が夢なのだった。

 人間たちに歯向かうとか、ゆっくりできるとか、そういう下らない望みを一切絶たれ、ただ絶望に
死ぬことだけを望み続ける出産ゆっくりたち。
「人間や動物、あるいはゆっくりたちのごはんになる」ということを知り「まりざはだべぼのじゃな
いいいいいいいいいいいい!」と泣き叫びながら、バラバラにされる加工ゆっくりたち。
「ぎゃばいいまりじゃをゆっぐぢじゃぜでええええええええええ!」
「れいびゅまだにゃんにもじでないいいいいいいいいいいいい!」
 生まれてすぐに死ぬことを宿命付けられた赤ゆっくりたち。

 そういうものを、見続けることだけが夢だったのだ。
 幸い、男は金と土地は有り余るほどに持っていた。そこで、早速自分だけの加工所を建設しようと
したが――政府から待ったが掛かった。
 加工所を建設する際には、幾つかの決め事が必要なのだ。男は、その膨大な許可申請リストを見て
さすがに膝を屈したくなった。
 だが、よくよく調べてみるとこれらは全て「加工所で作られたゆっくりを(あらゆる形で)流通さ
せること」に関して縛っていることが分かった。
 男は、そんなものはどうでもいい。
 ただ、加工所で泣き叫ぶゆっくりたちが好きなだけである。

「だからね、ここは加工所じゃないんだよ。非加工所なんだ。
 ここでは、ゆっくりたちはただ死ぬ、ただ生まれてただ死ぬ。
 ゆっくりフードにもならない、餌ゆっくりにもならない、ペットショップに卸されたりもしない。
ただただ、死ぬためだけに君たちは生きていくんだ!」
 男は捕まえた野生ゆっくりたちの群れを前に、そう宣言した。
 小さな群れだった。群れのりーだーはゆっくりまりさ。彼らは山菜を食い荒らし、虫を食って肥え
太り、ただひたすら増え続けてすっきり制限もしないという、ごくごく「善良」な群れだった。
 世界はゆっくりのためにあると信じており、人間もまたゆっくりを見ればゆっくりできるはずとい
う、大変に「善良」な群れであった。
 もっともこの場合、善良という部分に「ごみども」とルビを振るべきだろうが。

 ともあれ、世界の悪意に晒されたことのない野生ゆっくりたちは今、男のおぞましいほどの悪意に
晒されていた。
「あ……ああ……あ……ひどい……ひどいよおおおおおおおおおお!」
「ゆっぐりじでない! ゆっぐりじでないよおおおおおおおおおおおおおお!」
 一斉に泣き喚く野生ゆっくりたち。だが、一匹とて逃げたり立ち向かったりはしない。
 男が「あまあまをあげるよ」とラムネを飲ませ、その間にあんよに動けないよう処置を施したので
ある。
「さあ、君たちは死ぬまでおちびちゃんたちを生み落としてね! でも生まれてすぐに死ぬけどね!
 でも、すぐにまた精子餡で妊娠しちゃうけどね! 妊娠と出産しか、もうできなくなるけどね!
 それで、目の前で死んでいくおちびちゃんをずっとずっと見ていてね!」
「おに! あぐま! じね゛! じね゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」
 りーだーである長まりさがぐねぐねと体を動かすが、あんよは全く動かない。
 男はにっこり微笑み、長まりさをひょいと抱き上げた。
「ふふふ、それじゃあ君からだ。
 ゆっくり妊娠していってね!
 ゆっくり胎内でおちびちゃんを育ててね!
 大丈夫、ボクの計算だと7日もすればお腹のおちびちゃんも『じなぜでえええ!』って泣き叫ぶ
ようになるから!」

 がちがちと歯を打ち鳴らしながら、長まりさは男の本気さを見て取った。
「ゆ゛ん゛…………や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 彼の言葉通り、長まりさが生み続けたおちびちゃんたちは7日後に、胎内で死を望むようになった。

「おぢびじゃん! おぢびじゃん! ゆっぐりじでね! まりざのだいじなおぢびじゃん!」
 胎内で、彼らは嘆き続ける。
 どうして生まれてしまったのか、どうしてずっと胎内に居られないのか、どうして……ここにいる
のか。保護膜の内部で、赤ゆっくりたちは閉じた目から涙を流す。
《うばれだぐにゃいよぉ……》
《うばれだぐない……じにだい……》
《ごろじで……ごろじでよぉぉ……》

 ……そうして、物語は冒頭に戻る。

「じなぜで……ぼう……やじゃ……」
「じにだいじにだいじにだいじにだいじにだいじにだいじにだい……」
「やだ……やだあ゛あ゛…………ぼう……やでずう゛……」

 新たに捕まえられたゆっくりたちも、遂に悟った。

 ――自分たちに生きている意味などない。
 ――自分たちは、全くの『無意味』なのだと。

 ……おたべなさい、にもある通り、ゆっくりたちは自分たちが滋養の富んだ餌であることを本能的
に理解している。
 だが、ここではその「おたべなさい」はおろか「加工所で何かのご飯になる」ことすらも許されな
い。

 この非加工所は、全く意味もなくゆっくりたちを孕ませ、全く意味もなく殺し続ける。
 いつか、男が飽きるか。あるいは男が死ぬかするそのときまで。
 あるいは、この非加工所の思想を受け継いだ誰かがいれば。
 ここは、ゆっくりたちにとって永遠の地獄と成り得るのかもしれない。

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