anko4131 トランポリンゆっくり
「ゆわーい!たかい、たかーい!ゆっくちゆっくちー!!」
「おしょらをとんでりゅー!まりちゃは、すぺーすしゃとるしゃーん!」
ポヨンポヨンと、気の抜けた音と共に宙を舞う二匹の赤ゆっくり。
不規則に体をくねらせ、ポーズを決めるかのように、眉を吊り上げてみたり、片目を閉じてみたりする。
キャッキャとはしゃぎながら、揉み上げやお下げをブンブンと振り回して、空を飛ぶ感覚を楽しむ子ゆっくり達。
「ちょーちょ!ちょーちょ!れーみゅはきれーなちょーちょしゃん!!」
「まりちゃはとりしゃん!おしょらはぜーんぶ、まりちゃのものなのじぇー!!」
二匹は両目をキラキラと輝かせながら、思い思いに憧れの空を飛んだ気分に浸っている。
「ゆふふ!おちびちゃんたち、とーってもゆっくりしてるよ!!せかいでいちばんかがやいてるよ!ゆっくり、おぶ、びゅーてぃーだよ!!」
「ゆんしょ!ゆんしょ!おちびはじょーず!ゆんしょ!ゆんじょ!おそらをとぶのがじょーずだぜ!!」
そんな二匹を見守りながら、満面の笑みを浮かべて幸せそうに体を揺らす親れいむ。
空飛ぶ二匹を寝そべりながら見守り、お腹で受け止めては再び空に向かって打ち上げる親まりさ。
ニヤニヤしているだけの親れいむにくらべ、苦しそうに顔を歪めながら腹をトランポリンのようにうねらせる親まりさ。
どちらも労力と表情こそ違えど、太陽のように輝いて笑う二匹の赤ゆっくりを見ているだけで、心はとても「ゆっくり」出来ているのである。
捨てられたばかりの、比較的綺麗な野良のゆっくり一家。
食べ物も住居もろくな物ではないが、それでも最高にゆっくりしていると、この親まりさはそう考える。
辛いと言われる野良生活も、この子ゆっくりの笑顔があればやっていけると自信を持つ親まりさであった。
それからしばらくして、二匹の赤ゆっくりは子ゆっくり程のサイズに成長する。
野良初心者の一家の赤ゆっくりが、ここまで成長するのはまさに奇跡的な事。
それだけで十分恵まれているのだが、常に「ゆっくり」を求めているゆっくり達には当然物足りない。
「おとーしゃん!おとーしゃん!たかい、たかいやっちぇー!れーみゅ、おそらをとびちゃいよ!」
「れーみゅばっかりずるいのじぇー!まりちゃだって、おそらをとびたいのじぇー!おそらがまりちゃをまってるのじぇー!!」
「ゆーん…おとーさんは、きょうはかりでつかれているんだよ…ちょっとだけやすませてね…」
「やだやだやだー!ゆっくち!ゆっくち!おしょらをとびちゃいよぉぉぉぉぉぉ!!」
「ゆびゃぁぁぁぁ!まいにち、そういってるのじぇぇぇぇ!まりちゃは、おしょらをとべない、あわれなとりしゃんなのじぇぇぇぇ!!」
ボロボロにやつれた顔色の悪い親まりさに、空を飛びたいと強請る二匹の子ゆっくり達。
不満そうに膨れ上がって、涙目で親まりさを睨みつける。
野良の割には比較的綺麗なその姿から、多少なりとも優遇されて育てられたのだろう。
そのせいもあってか少々我侭になってしまった二匹は、当然親まりさの苦労など知らない。
ちなみに親れいむは育児放棄して現在失踪中。
子育てと狩の負担は全て親まりさに圧し掛かっていた。
「おちびちゃん、ゆっくり!ゆっくりしてね!おとーさん、あしたはもうすこしがんばるから、きょうはがまんしてね!」
「やだやだやだー!おとーしゃんの、おなかのとらんぽりんしゃんで、れーみゅはおそらをとびたいのぉぉぉぉぉ!!」
「まりちゃも、まりちゃもぉぉぉ!おそらしゃんも、まりちゃをまってるのじぇー!こいしがってるのじぇぇぇぇ!!」
「おちびちゃん、ごめんねぇぇぇ!ゆっくり!ゆっくりしてねぇぇぇ!…ゆっぐ…ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり…」
疲れた顔で笑ってごまかす親まりさだったが、二匹はそんな事で納得などしない。
ゆんゆんと泣きながら体を激しくうねらせて、可愛そうな自分達を親まりさに見てもらおうと必死にアピールする。
鬼威惨が見れば即殺コースだろうが、親まりさはこんな子ゆっくり達の姿を見て心を痛める。
自分が不甲斐無い事を改めて自覚し、悔しそうに唇を噛む親まりさ。
唯一ゆっくり出来るはずの子ゆっくり達が、ゆっくり出来ない姿を自分に見せる。
本当ならば、自慢のお腹を使って子ゆっくり達をお空に飛ばしてあげたい。
だが野良になりたての頃に比べると、体が大部細くなり、子ゆっくり達も大きく成長してしまっている。
数日前に子ゆっくり達をお腹に乗せてみたところ、普通に子ゆっくり達が飛び跳ねるくらいしか飛ばしてあげる事しか出来なかったのだ。
そればかりか、子ゆっくり達がお腹に着地する度に、餡子を吐き出しそうなほどの苦痛を味わってしまう。
その上お腹の上に乗せられるのは、一度に子ゆっくり一匹だけ。
中途半端な空中散歩で不満を漏らすばかりか、順番争いで喧嘩になってしまうと踏んだり蹴ったりな結果に終わってしまったのだった。
思わず泣きそうになる親まりさだったが、すぐに作り笑いをして子ゆっくり達をなだめる親まりさ。
こうして親まりさは、日々心身ともに疲弊していくのであった。
「おねがいじばすぅぅぅ!まりざのおちびちゃんを、とらんぽりんさんしてあげてくださいぃぃぃ!!」
人通りの多い歩道に姿を現した親まりさが、汚れた顔を涙で濡らし菜がら必死に頭を下げるようにグネグネと動いている。
疲弊した頭で悩んだ末、結局人間に頼る事を選択した親まりさ。
少々変わった要求ではあるが、当然通行人が相手にするわけもなかった。
「おっ!ゆっくりだ!とらんぽりんさんって何の事だ?ちょっと話してみろよ!」
「ゆゆぅ?!ありがとうございばず!ありがどうございばずぅぅぅぅ!!」
そんな親まりさに声をかける一人の少年。
親まりさは声をかけられた事が嬉しくて、思わずブルブルと震えながら号泣し始める。
少年は、そんな親まりさを興味深そうに眺めながら嬉しそうに笑う。
親まりさには、そんな少年の笑顔がとても友好的に見えたのか、思わず笑顔になってしまう。
「ぎいでくだざいぃぃぃぃ!かわいそうなまでぃざと、かわいそうなおちびちゃんのおはなしなんでずぅぅぅぅ!!」
こうして親まりさは少年に自分の不幸な境遇と、ここに来た理由を語りだす。
拙い喋り方で、大げさに体をくねらせたり、飛び跳ねたりをして、まるで劇でもしているかのように熱心に少年に訴える。
「えーっと…何だか解らんけど、子ゆっくりをとらんぽりん出来ればいいんだな?」
「そうなんでずぅぅぅ!おちびちゃんたちを、おそらにとばしてあげたいんでずぅぅぅぅ!ありがどうございばずぅぅ!ありがどうございばずぅぅ!!」
首を傾げながら考え込む少年に対して、両目をキラキラと輝かせる親まりさ。
嬉しそうに左右に体を振りながら、何度も少年にお礼を言う。
少年はそんな親まりさを抱えると、親まりさの案内する公園に向かうのだった。
「ゆっくちー!ゆっくちー!おとーしゃんすごいよぉぉぉ!さすが、かわいいれーみゅのおとーしゃんだね!!」
「ゆっくちー!ゆっくちー!どれーがきたのじぇー!さっそくまりちゃのうんうんくわせるのじぇー!!」
親まりさの連れてきた少年を見て、キャッキャとはしゃぐ子ゆっくり達。
少年をバカにするかのような目で眺めると、尻を向けて屁をこいてみたり、少年の周りを飛び跳ねてみたりと大騒ぎ。
「おちびちゃんたち、おちついてね!このにんげんが、おちびちゃんたちをおそらにつれていってくれるだぜ!さあ、さっさとよういするんだぜ!!」
そんな子ゆっくり達を見て、満足そうに微笑む親まりさ。
思わず調子に乗ってしまい、少年に対する態度がでかくなってしまう。
だが少年は、そんな親まりさの態度を少しも気にする事無く、何かをポケットから取り出した。
「ほら、お前膨れ上がってみろよ。じゃないと、トランポリン出来ないぞ!」
「ゆあーん?!なにいってるんだぜ!どうしてまりさが、そんなことしないといけないんだぜぇぇぇ?!どれいのいうことなんか、きけるわけないんだぜぇぇ!!」
「いいから早くやれよ!この腐れドブ饅頭!ゴミまりさ!くず!駄目ゆっくり!うんうんゆっくり!!」
「ゆっがぁぁぁぁ?!まりざざまをぶじょくするのは、ゆるせないんだぜぇぇぇ!ぷっくぅぅぅぅぅぅ!!」
少年の要求に、不満そうに顔をしかめる親まりさ。
先程まで、通りで涙を流して頭を下げていたとは思えない程、憎らしい顔で少年を睨みつける。
子ゆっくり達の「どれい」という言葉を聞いて、すっかり少年が奴隷になったと勘違いしてしまったようだ。
だが少年は親まりさを軽く足で小突くと、わざと親まりさを挑発する。
親まりさは、そんな少年の挑発にあっさり乗ってしまい、大きく息を吸い込んで頬を膨らませる。
「よっしゃ!チャンス!本当にゆっくりって単純だな!」
「ぶが?!ぼがっ!ぶもも!ふっごぉぉぉぉぉぉ!!」
少年は膨れ上がった親まりさの口を素早くガムテープで塞ぐと、更にあにゃるもガムテープで塞いだ。
親まりさは体をくねらせて必死に抵抗するが、力で少年には敵わなかった。
「よし、これでちょっとは膨らんだかな?ほら、この汚い腹でトランポリンするんだろ?ちょっと移動するぞ!」
「ぶががっ!ごべ!ぶべぇぇぇ!!」
「ゆっがぁぁぁ?!おとーしゃんになにしゅ…ゆわーい!おそらをとんでるー!れーみゅはおそらのぷりんせしゅー!!」
「ゆわーい!まりちゃは、でんせつのえーすぱいろっとしゃん!!」
少年は膨れ上がったままの親まりさのお下げを掴んで持ち上げると、足元で騒ぐ二匹の子ゆっくりを反対の手で捕まえた。
最初の内は少年に罵声を浴びせていた子ゆっくり達だったが、少年の手の高さから眺める世界に感動してはしゃぎだす。
少年は手の中で動く子ゆっくり達が気になるのか、少し不快そうに顔をしかめながら公園内に設置してある滑り台の方に歩いていった。
「ゆんわーい!しゅっごーい!ここなんにゃのぉぉぉ?!おそらのおしろしゃん?!」
「ゆわーい!すっごいのじぇー!まりちゃは、ここにくるために、つばさをてにいれたのじぇー!!」
「ぶんごぉぉぉ!ぶおぉぉぉ!ぶぉぉぉぉぉ!ぶおおぉぉぉぉぉ!!」
少年に滑り台の上まで連れてこられた子ゆっくり達は、始めてみるその光景に大喜びで飛び跳ねる。
一方、地上に取り残された親まりさは、心配そうに我が子を見上げながら唸り声を上げて飛び跳ねる。
「よーし!今からこいつ等を下に落とすぞー!しっかり腹で受け止めろよー!」
「ぶぉぉ?!ぶっごぉぉぉぉぉぉ!!」
少年の言葉を聞いて、両目を丸くして固まる親まりさ。
すぐに少年を睨みながら、不満そうに飛び跳ねてブンブンと唸る。
少年はそんな親まりさの方を見て笑うと、子れいむを掴んで放り投げた。
「ゆわあぁぁぁぁ!おしょ 『ブチャ!』 じゃ!」
「ぶぉ?!」
「ゆぅ?!」
子れいむはお決まりの台詞も満足に言えないまま、親まりさの手前に落下して砕け散る。
それを見た少年は大笑いするが、親子まりさは両目を飛び出さんばかりに見開いて動かなくなる。
「はははっ!だめじゃないか、しっかりお腹で受け止めないと!トランポリンしてやるんじゃないのか?駄目な親だな!!」
「ぶべぇ?!ぶごぉぉぉ!ぼぼぶごぉぉぉぉぉ!ごぉぉぉぉぉぉ!!」
「ゆんやぁぁぁぁぁ!まりちゃのいもーちょ!どーなってるのじぇぇぇぇぇぇ?!」
親まりさは涙を流しながら、子れいむの残骸の周りを跳ね回て唸りだす。
子まりさは子れいむが砕け散ったのが信じられないのか、大声で泣きながら両目をキョロキョロと動かして子れいむの落下地点を眺める。
少年はそんな子まりさを持ち上げると、笑顔で親まりさに呼びかける。
「おーい!次いくぞ!今度はちゃんと腹で受け止めろよ!トランポリンまりさー!!」
「ぶびゃ!ぶぉぉぉ!ごぎぃぃぃぃ!!」
親まりさは少年の言葉を聞くと、大慌てで腹を天に向ける。
少年はそんな親まりさを見て満足そうに笑うと、親まりさの腹目掛けて子まりさを投げた。
「ゆっびゃぁぁぁぁ?!おじょら 『ボズッ!!』 ずんぼっ?!」
「ぶっずぅぅぅ?!ぼぉぉぉぉぉ!!」
子まりさは、勢いよく親まりさの腹に頭から突っ込むと、そのまま尻をだけをブリブリと振り続ける。
親まりさは子まりさが腹に当たった瞬間に、両目を飛び出さんばかりに見開くと全身を小刻みに震わせながら涙としーしーを溢れさせた。
激しい痛みが腹から全身に広がり、そのせいでろくに動けない親まりさ。
腹に刺さったままの子まりさが、激しく尻を振るせいで余計に痛みが腹に響く。
「あれ?上手く跳ねないな………あー!そっか、膨らんでるのは頬で、腹じゃなかったのか!腹を膨らませないと駄目だったのか!ははははっ!!」
そんな親まりさに、少年の笑い声がかすかに聞こえる。
親まりさは悔しそうに眉をしかめるが、腹の痛みでどうする事も出来なかった。
「さてと…じゃあ、このクソチビゴミ饅頭に変って、俺が乗ってやるよ!しっかり腹を弾ませろよ!トランポリンまりさ!」
滑り台から降りてきた少年は、笑いながら親まりさの方を見てそう呟いた。
グチャ!
少年は両足をそろえて親まりさの腹に飛び乗る。
その重みと圧力にやせた親まりさが耐えられるはずもなく、親まりさは両目から餡子を飛び出させ、汚らしい音を立てて絶命した。
その時同時に子まりさの頭も踏み潰したらしく、ブルブルと震えていた子まりさの尻が動きを止めた。
少年の去った後には、小さな靴跡状に腹を凹ませて死んでいる野良まりさの死体だけが残された。
完
徒然あき
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