anko4025 人間に飼われるというのは…2

Last-modified: Mon, 25 Jul 2016 07:08:42 JST (2171d)
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「ゆっくりこーろこーろするよ!」
「ちぇん!おいかけっこするのぜー!」
「ありすーあまり遠くへ行っちゃだめよー」
「わかってるわおねえさん!」
「ゆっくりー!」

暖かな昼下がり。
その公園はまさに愛でに特化された地であった。
金バッジの飼いゆっくり達が飼い主に連れられて遊びにくる……
そこはゆっくりできることが約束された地。まさに人間とゆっくりの楽園といえよう。
ゆっくりは思い思いに他の飼いゆっくりと遊び、昼寝し、ゆっくりをし、
飼い主はその様子を眺めて目を細めて微笑んでいる美しき光景。

ああそうだとも。この地にはこの世の底辺であり生ゴミたる野良ゆっくりもいなければ
弱い者虐めの帝王にして社会不適合者なる虐待鬼意惨もまた存在しないのだ。
まさに神が与えもうた人間とゆっくりのパライソと呼ぶに相応しい、神聖なる場所ではないか。
人間とゆっくりがお互いを思いやり、共にゆっくりしている究極の共存が今ここに確かに存在しているのだ。

「おでがいじまずぅぅぅぅっ!がわいぞうなばりざをぉぉぉっ!がいゆっぐりにじでぐだざいぃぃぃぃっ!」

おお……だがしかし!禍福はあざなえる縄の如しとはよくぞ言ったもの!
この世の幸福なる時間は長くは続かないものなのか。
突如として公園内すべての人間と飼いゆっくり達に電流を走らせる悲痛な叫びが木霊してきたのである!

あわれな悲鳴の主はこの薄汚れた野良まりさであろう。
肌は汚れ弾力はほぼなく、金髪はボサボサ、帽子も染み汚れでよれよれ。
いかにも野良ゆっくりなるみじめ極まる風体である。
そして黒帽子のある箇所にはなにかをむしり取ったと思わしき小さな穴……
そのような歩く生ゴミが恐れ多くもベンチに座って雑誌を読んでいた男性に向かって、
己を飼ってくれと涙を流しながら懇願しているのだ。

「ばりざはぁぁぁっ!もときんばっじのかいゆっぐりでじだぁぁぁぁっ!おといれをきめられたどころででぎまず!
 ごはんざんにも、もんぐいいまぜんっ!ぜっだいにおにいざんをゆっぐりざぜてみぜまずっ!
 だがらっ!だがらばりざをがっでくだざぃぃぃっ!もうのらはいやなんでずぅぅぅぅっ!」

捨てられた飼いゆっくり、過酷な野良生活での苦労と挫折の連続、そして飼いゆっくりへの回帰を希望……
おお有史以来このようなありふれた喜……悲劇が何度繰り返されたことか!
もっともゆっくりがこの世に姿を現したのはほんの十数年前のことであるが!
ともあれ男はまりさに事情を聞かなくてはなるまい。
金バッジの飼いゆっくりが、なぜこのように薄汚れた野良の風体で飼いゆっくりに戻るのを望んでいるのかを。

「……なんで元金バッジ様が野良なんてしてるんだ?話してみろ」
「ばりざはゆうしゅうっなきんばっじだっだよ!かいぬしのおねえざんをまいにちゆっくりさせてあげでだよ!
 でもあるひ、びゆっぐりののられいぶとうんめいっのであいをじだよ!さっぞくれいぶとずっぎりー!じて
 かわいいおちびじゃんをつくったよ!とっでもかわいいゆっくりしたあがちゃんだったよっ!
 ぞれなのに……ぞれなのにぃぃぃぃ……!」
「それなのに?」
「ばりざはかえっでぎたおねえざんにいきなりずてられたんだよ!おちびじゃんはゆっぐりでぎるのにっ!
 がいゆっぐりはのらとおちびじゃんつぐっちゃだめだっで……っ!
 ぞれがら、ばりざはいとしのれいぶとのらになってがんばってかりをじだよ!
 でもさむかっだり、ごはんさんがとれながったり、げすゆっくりにいじめられたりじてぇぇぇ……」

「ゆっくりできるかわいいおちびちゃんとやらは全ゆん死んだってわけか」
「ど、どぼじてわがるの!?」
「ありふれたパターンだからな……で、それからどうした?」

「れいぶはさいごにのこったおちびじゃんをたずけるだめに、にんげんさんにたのみにいっだよ!
 ゆっぐりできるおうたをうたって、かわいいおちびちゃんをたくさんみせてゆっくりさぜてあげたんだよ!
 ぞれなのに……ぞれなのにぃぃぃぃ……れいぶもおちびちゃんもにんげんざんにつぶされちゃっだんだよぉぉぉぉぉっ!
 どぼじて?どぼじてにんげんざんはゆっぐりをたずげてくれないのっ!?
 ごんなのりふじんっだよ!ふこうへいっだよぉぉぉぉっ!
 ばりざはごんなにがんばって、にんげんさんをゆっぐりざぜてあげたのにぃぃぃ!ゆんやあああああああっ!」

ああ……なんという不幸な物語であろうか!?
周囲を見ると飼いゆっくり達は野良まりさの不幸なゆん生に全ゆん涙を流し、
飼い主の人間さんたちも気の毒そうに目を伏せているではないかっ!

「もうばりざにはなにもないよっ!だがらおでがいでずっ!もういちどばりざのゆんせいをやりなおさぜてぐだざい!
 もういちどだげかいゆっぐりにじでぐだざい!もうさむいさむいも、おなかぺーこぺーこもいやなんでずぅぅぅ!」
「……」

なんという波乱万丈の数奇なるゆん生!
ゆっくりを愛でる人間にとってはまさに涙涙の感動ヒストリー……っ!
けれど当のベンチに座っているお兄さんは果てしなく無表情である。
そうだ人間に物乞いをするという愚行、その果てに待っている不幸を我々は痛いほどに知っているではないか。
当然この後に行われるのは男の拒絶、そして制裁……愚行という罪に対する壮絶なる清算である。

その気配を察した愛で派の飼い主たちは、次第に自分のゆっくりを連れて公園を出ようとする。
そのような光景を自分のゆっくりに見せたくないからであろう。下手をするとトラウマになってしまう。
またある飼い主は怒りにも似た表情で男の一挙一動を監視している……何故か?
男が潰そうとしたらすかさず割って入って哀れなるまりさを救うつもりなのだ。
そして非道な行為をしようとした男を糾弾する腹づもりである。

だが野良まりさを自分が飼うのだけは当然お断りである。
乱暴かつ野蛮な男から救った後、まりさを無責任に言葉で慰めてあげよう、勇気づけてあげよう。
そしてポケットに入っている飴玉の残りでもお土産に持たせてやれば、まりさはきっと力強く生きていくであろう。
きっとそうだそうに違いない。今日は駄目でもいつか親切な人に拾われて飼いゆっくりになれるはずだ。
だって野良まりさのゆん生はまだある!飼いゆっくりに戻れるチャンスはまだまだ残されているのだから!
どうぞ存分に飼いゆっくりになる夢を追い続けてください。我々はその姿を心から応援する者です!

そして遂に男の審判が下る。
その姿は罪人を断罪する神のごとく。
ゆっくりと……はっきりと……そして力強く、男はまりさに向かって言い放った。

「いいよ。飼ってやるよまりさ」
「ゆんやあああああっ!ぞんなぁぁぁ………ゆっ?」
「どうした?飼いゆっくりになりたいんじゃなかったのか?俺はお前を飼ってやると言ってるわけなんだが」
「ほ……ほんとうに?ほんどうにまりざをがっでくれる……の?」
「くどい。男に二言はない」
「や……や……やっだぁぁぁぁぁっ!ばりざきょうがらまだがいゆっぐりだ!がいゆっぐりにもどれだよぉぉぉぉっ!」

おお見よ、緊張の空気があっというまに緩和してゆく。
飼い主たちも飼いゆっくりたちも、安堵の表情で男とまりさを眺めている。
野良とはいえゆっくりSATUGAIの危機は過ぎ去ったのだ!
そうン十年前にアメリカとソ連でキューバのミサイル基地徹去の合意がなされた時のようにっ!
危機は遥か遠くに過ぎ去った!男は寛大にもまりさを飼いゆっくりにしてくれるというのだっ

「まりさ、お前には毎日ゆっくりできるフードさんやあまあまを食べさせてあげるよ」
「ほ、ほんとっ?もうげろまずー!ななまごみさんや、くそまずー!なざっそうさんをたべなくてもいいのっ!?」
「もちろんだとも。それからまりさを快適なお家に住まわせてあげるよ」
「もうゆっくりできないかぜさん、ゆきさん、あめさんとおさらばできるんだねぇぇぇっ!ゆっくりぃぃぃぃっ!」
「ゆっくりできるおもちゃも買い与えてあげるよ。休みの日には公園に遊びに連れてきてやる」

「ゆっ!し、しあわ……しあわせっ……!ゆゆうぅぅぅっ!ま、まりさはおなじあやまちっをくりかえさないよ!
 ゆっくりさせてもらうかわりに、にんげんさんをまりさがゆっくりさせてあげるんだよ!
 いっぱいおべんきょうして、またきんばっじをとるよ!それがまりさのおしごとなんだからね!」
「ああもちろんだとも。頑張って俺をゆっくりさせてくれ……その為にまりさを飼うんだから」
「ゆっくりりかいしたよっ!」

しあわせーの波に飲み込まれそうになりつつも必死に自分を自制するまりさ……
なんという美しい光景であろうか?ここに理想の飼い主と飼いゆっくりがいるのだ。
まさに奇跡の出会いとしか言いようのないこの運命。
あまりの美しすぎる一人と一匹を、愛で飼い主と飼いゆっくり達は心底ゆっくりした表情で微笑ましく見ている。

べ、別に無理にとはいわないけれどなんだったら私達、愛で派の仲間に入れてあげてもいいわよ!
もちろん嫌とは言わないわよね?あなたはもう立派な愛で派なんだからぁぁぁぁぁっ!
ムホォォォォォっいい愛で男ねええええええ!……と脳内では暴走しているに違いない。鼻血垂らしてるし

「まりさ。俺はさっき言ったとおり君の衣食住を一生涯保証しよう」
「ゆっくりりかいしたよっ!まりさゆっくりできるよっ!」
「うんうん。だから……たった今から君の自由はすべて剥奪するよ」
「それもゆっくりりかいし…………ゆっ?」

「まりさはこれから俺が決めた決まりを遵守しなくてはならない。部屋を散らかすな、トイレは決められた場所でしろ、
 野良との接触は禁止する、飼いゆっくりとの交流も俺の許可がなければ駄目だ。当然、番は与えない。
 子供も作らせない。外出は俺の同伴が条件だ。ひとりでの外出など絶対に認めない。
 まりさはこれからただただ俺をゆっくりさせる事、それだけを考えて俺に笑顔を振りまいて生きていけ」
「ゆっ……?ゆっ?ゆゆゆゆゆっ!?」
「それからまりさがさっき言っていた金バッジの再取得だが……それは別にいい。期待してないからな」
「お、おにいざ……?ぞ、ぞれどういうこ…」

「あなたっそれどういう事なのよっ!」
「わ、わけがわからないよ!どぼじてそんなゆっくりできないことをいうのっ!?」

突如としてまりさの自由を奪うと宣告した男に対して……茫然自失のまりさが質問をするより先に、
金バッジのれいむを抱えた20代中盤くらいの若い女性が男に対して猛然と食ってかかってきた。
この女性……お姉さんはさっきまりさが潰されるのを阻止しようとしていた人物である。
それだけにまりさが救われて人一倍ほっとしていた偽善者なのだ。
それなのにこの男の突然の暴言。思わず問いただしたくなるのもまた人情といえようか。

「どういう事と言われても……飼い主として当然の決まりを飼いゆっくりに通達しただけですが?」
「うっ……!そ、それにしても言い方というものがあるでしょう?もっとオブラードに包んだ
 優しい言い方で諭してあげるべきだわ!」
「そうだよ!おにいさんのいいかたはとげとげしすぎて、ゆっくりできないよ!」
「真実はストレートに言った方が伝わりやすい。ゆっくり相手にあなた達のような言い方では誤解を招く恐れがあるのでね」

感情で常識を説こうとするお姉さんと金バッジれいむ、対してゆったりと構えてクレバーな男……お兄さん。
当然そのような返答でおねえさんが納得するはずもなく……
激情のままにお姉さんはお兄さんを問いただしていくのであった。

「そ、それにさっきの発言はなんなの?金バッジをとるのは期待していないなんてまりさに対して失礼だわ!」
「そうだよ!れいむがみたところ、まりさはとってもかしこそうだよ!きんばっじぐらいすぐとれるよ!」
「……ふむ。つかぬことをお聞きしますけど、あなたは自動車の運転免許を持っていますか?」
「え?そ、それは……普通免許だけだけど……一応」
「ならば免許を取得なさるときに実技の他に筆記試験をお受けになられましたよね?
 そのときあなたは何点お取りになられました?」
「な……なんなのよ!そんな話がバッジとなんの関係があるというのっ!?」
「できれば、教えていただきたいのですが」

お姉さんは関係のない質問なんか無視して話を先に進めようと思ったが、
お兄さんのなんともいえない雰囲気に押されてつい答えてしまったのだった。

「………満点で一発合格したわよ!」
「それはすごい。俺なんか自信満々で挑んで90点でしたよ。あと一問間違っていたら落第していた所でした」
「だからそれがっ!」
「ならばここでもう一つあなたにお聞きしたいのですが……今この場でもう一度同じ試験を受けて
 満点を取る自信はおありですか?」
「……え?」
「どうですか?」
「そ、それは……ないわよ。免許とったは何年も前の話だし……試験内容だってもうほとんど覚えてないわ」
「そうですか……いえ気になさらないでください。俺も含めてみんなそういうものです」
「そ、それはどうも……てだから!今はそんな話をしているんじゃ!」
「おねえさんおちついてね!れいむがついてるからゆっくりしていってね!」

「今の話でまだ俺の言いたいことが分かりませんかね?
 試験というものは受ける前に問題と解答を頭に詰め込んで、万全の状態で挑んではじめて合格できるものなのです。
 それはゆっくりのバッジ試験だって同じことなんですよ。
 バッジを取る……ただそれだけを目標に憶えたくもない事を暗記して、結果合格ラインを超えただけのことですからね。
 目当てのバッジさえ取得できれば試験のために憶えた勉強なんてものは時間とともに忘れていくのが人情……
 いえゆん情というものです。どんなに頭がいいゆっくりでも……まあ試験後はいいとこ半分も内容を憶えていれば
 上等ってところなんじゃないんですか?」

「そ、それは……!でもそんなのは屁理屈だわ!多くの金バッジは試験で覚えたルールを守っているいい子よ!」
「果たしてそうでしょうか?ならば何故このまりさのように野良とすっきりーして子供を作りたがる
 金バッジが後を絶たないのでしょう?」
「ゆゆっ!?」
「うっ……それは……中にはそういう悪い子もいるかもしれないけど……で、でも…」
「れ、れいむはのらとすっきりーなんてしないよ!しつれいなことをいわないでね!ぷんぷんっ!」
「俺はそうは思わないなれいむ。むしろ決まりを破ってすっきりーをする事は至極当然のことだと思っているんだよ」
「ど、どぼいうごとぉっ!?」

「考えてみな?バッジ試験の内容というのは一言でいえばゆっくりの自由を制限するという事なんだよ。
 そういう、ゆっくりにとって不本意な内容を憶えろと言う方に無理があるとは思わないかい?
 最近は飼いゆっくりに定期的にバッジ試験を受けさせるのが義務になっているけれど、
 再合格率の低さは目に余るものがあるようだよ」

「う……」
「ゆ、ゆううううう……」
「以上のことから、一度野良に落ちたまりさが再び金バッジを取得できる知識も
 ゆっくりできない決まりを覚えられる頭脳も、もはや持ち合わせていないと俺は判断します。
 かなりの猛特訓をすればもしや……かもしれませんが、そもそもバッジなど必要だとも思いません。
 バッジとはぺット業界が愛玩用ゆっくりを高値で売りつける為に設けた一種の目安にすぎませんからね。
 最低限、飼いゆっくりだと証明できればそれでいいんです。自分のペットの性能は自分だけが知っていればそれでいい」

激情のままに喰ってかかるお姉さんを、冷静にそして的確に受け答えていくお兄さん。
話している内容の半分ですら理解できなくとも必死にお姉さんを援護しようとする金バッジれいむ。
そしてもはや発言する気もなく唖然とお兄さんの足元で会話を聞きいっているまりさ。
その中を静かに流れていくお兄さんの理。その言葉はこの世の成り立ちを説く高僧のよう……

「で、でも!試験を受けさせてより高ランクのバッジを付けさせる事は飼い主の義務だわ!」
「まあ世間一般的にはそうですけどね……でももしあなたが…」
「ぜんりょうっなゆっくりにはばっじさん!これはていせつっなんだよぉぉぉぉっ!」
「そ、そうよ!バッジはゲスな野良と善良な飼いゆっくりを隔てる証のようなものよ!」
「……善良?」

「私のれいむはまさに善良な理想の飼いゆっくりそのものだわ!一人暮らしの私、
 毎日仕事から帰ってきて自宅でひとりきりの寂しい日々がこの子を飼いはじめたおかげで
 どれほど癒されるようになったことか……ね、れいむ!」
「ゆゆ~ん♪おねえさんがゆっくりできると、れいむもとてもゆっくりできるよ!」
「私もよれいむ……れいむはもう私にとって家族同然だわ!」
「そうだよ!れいむはかいゆっくりをちょうえつっした、おねえさんのかぞくさんなんだよ!」
「いえ!もはや家族そのものよ!れいむと私の絆は固く結ばれているのっ!」
「ゆーん!おねえさんゆっくりしていってね!」
「れいむもゆっくりしていってねええええええええええっ!」

なんという事であろう。いきなりお姉さんとれいむがノロケはじめてしまうとは。
もしかしてこのお姉さんはHENTAIの気でもあるのだろうか?
お兄さんはそんなお姉さんとれいむをしばらく物珍しそうに眺めていたが……ふとポツリと言った。

「あのー善良って…………なに?」
「……え?」
「……ゆ?」

「さっきから善良、善良と言ってるけど……あなたの言う善良ってなんなの?
 何をもってあんたはこいつは善良、こいつはゲスって言ってるの?
 人間に迷惑かけなきゃ善良なのか?言葉使いが綺麗なら善良なのか?
 違うだろう?あなたにとって善良なゆっくりというのは……」

そこで一度言葉を止めると。
お兄さんは言ってはならない言葉を解き放った。

「あなたにとって都合のいいゆっくりの事を言うんじゃないか?」
「……っ!?」
「ゆうううううううううっ!?」

「自分がゆっくりしたい時にあなたをゆっくりさせてくれるゆっくり、手間がかからないゆっくり、
 番を欲しがらないゆっくり、子供を欲しがらないゆっくり、あなただけを好きでいてくれるゆっくり、
 どれだけ自由を縛ろうがあなたを恨まないで笑顔を向けてくれるゆっくり。
 そういう都合のいいペットが欲しかったって事なんじゃないんですか?」

「な……なっ!な、なにを……っ!ち、違うわ!私は断じてそんなつもりじゃ……っ!」
「何がどう違うというのです?あなたとれいむの会話を聞く限り、そういう風にしか解釈できないのですが」
「つ、つごうがいいから……れいむをかっているの?おねえさ」
「ちがうわ!そんな事あるわけないじゃないれいむっ!忘れたの?私とれいむは家族同然だって!」
「そうでしょうか?あなたは一人暮らしは寂しいと思ったからこそれいむを飼ったんでしょう?」
「そうよ!それがなんなのっ!?」
「ならあなたが仕事で家にいない間、一匹で家で留守番しているれいむだって寂しいと思ってるはずじゃないですか」
「え……」

「人間がひとりは寂しいと感じるように、ゆっくりもまた孤独は耐えがたいものなんですよ。
 ならば他ゆんの温もりが欲しくなる、それもまたゆん情です。他ゆんを求める行為が無断のすっきりーに繋がる……
 番や子供を欲しがるのに善良とかゲスなんて関係ないんですよ。
 たとえ金バッジを付けていてもゆっくりは番や子供を欲しがるものです。それはもはや本能といっていい」

「くっ……あ、あなたは……飼いゆっくりに対してずいぶん否定的な気がするわ!」
「ええ。飼いゆっくりなんてもの自体、人間が生み出した悪しき風習だと思っています」
「……何故っ!」

「さっき言いかけましたがね、もしあんたが飼いゆっくりの立場だったらと仮定して考えてみてください。
 ……ゾっとしませんか?お前の衣食住だけ保証してやるから、
 ご主人様が求めた時は愛玩動物らしくゆっくりできるように振舞え、というのは……
 軟禁状態で自由に外に出られない、他ゆんと触れ合う機会が少ないから友達も容易につくれない、
 毎日毎日なにを為すわけでもなく、来る日も来る日もメシ食ってクソして寝るだけの毎日……
 飼いゆっくりというのは、そんな無為な時間を一生かけてだらだらだらだら死ぬまで浪費する存在なんですよ?
 拷問じゃないですかそれは。そうは思いませんか?」

「そ、それはあまりにも悪意に満ちた偏見だわっ!それなら他のぺット……猫や犬や鳥、魚も否定するというの?
 人間の奴隷同然だから!だから自分がかわいそうだと思っているって!?」
「それは……分かりません。正直そこまで否定はできない」
「ほ、ほうらね!ぺットの存在を否定するなんて出来るわけないわっ」
「猫、犬、鳥、魚……俺には彼らが何を考えているか分かりませんからね」
「……ど、どういうことよ?」

「動物のほとんどが何を考えているのかなんて人間に知る術はないんです。
 それらの動物がぺットという境遇に不満をもつメンタルや自尊心をもっているのか?
 案外生存さえしていれば彼らはそれで満足かもしれません。
 いずれにしろ他生物の心や考え方を知る方法がない以上、ペットという地位に不満をもっているかどうかは不明です
 ……が、ゆっくりだけは違う」

「どこが違うというの……!」
「ゆっくりは人間と同じ言葉をしゃべり、人間に限りなく近いメンタルをもち、人間並みのプライドをももっている。
 つまり精神的に人間寄りだということです。人間に近い自我と自尊心をもつ者が飼いゆっくりなどという奴隷同然の
 扱いを受けて果たして不満に思わないものでしょうか?」
「そ、それは……」
「どうも俺が思うに、世間一般の飼い主たちは意図的に都合の悪い現実から目を背けているように思えるのですよ」

いつのまにかお姉さんの金バッジれいむは口を閉ざしてしまった。
足元のまりさと同じくお兄さんの話を唖然としながらをじっと聞いている……
周囲を見ると他の飼い主と飼いゆっくり達もまた同様であった。

「あなたは……生物の生きる目的が何か知ってますか?」
「生物の生存目的?これはまた唐突ね……」
「人間の一部など例外はありますが大抵は『種の存続』、つまり子孫を残すことです。
 子孫を残すってのは要するに自分が確かにこの世に産まれて、生きて、そして死んだという証を残すってことですね」
「まあ……そうね。でもお互いまだ子孫を語れる身分じゃないようだけど?」
「そうですね俺もまだ未婚ですし。まあそれはさておき……」

「それは不思議饅頭のゆっくりだって例外じゃあないってことです。
 ただでさえ脆弱なゆっくりは子孫を残すことに異常に執着する。
 死の危険が高い生命体ほど子孫を多く残す傾向があるのだから当然の事と言えますね。
 だから子供をたくさん産んで大家族を作ることが多くのゆっくりの夢であり本能になってる。
 その本能は非常に強烈で、ゆっくりは生まれる前から将来の夢として自覚しているって程です」

「確かに……飼いゆっくりに関するトラブルの半分くらいは番と子供関連だわ」
「それだけゆっくりにとって重要な事なんですよ。
 『おちびちゃんはゆっくりできるんだよ!』……と、ゆっくりは子供ぽい言葉使いをするから
 飼い主にはあまり深刻に聞こえないかもしれませんがね。
 子供を生んで育てる事でゆっくりはゆっくり種にとっての生きる目的である、
 『ゆっくりする事』と『種の存続』を同時に為しえてるんです」
「……」
「だったら本能として子供を作りたがるに決まってるじゃないですか……だってゆっくりできるんだから。
 だから子供を作るなと言う人間の方が本来異常なんですよ」

「でも現実問題として子供を作られるのは飼い主として困るわ。一匹で充分なのにそう何匹も面倒見切れないし……
 どうしても子供がほしいというのなら……やりたくはないけど去勢するしか……」
「ゆ、ゆんやあああああっ!?」
「きょせいさんはゆっぐりでぎないぃぃぃぃっ!」
「あっ!もしも!もしもの話よれいむっ!あなたを去勢なんてするわけないじゃないっ!」
「ゆぐっ、ゆぐっ……ほ、ほんと?おねえざ…」

「去勢なんかしたら、その飼いゆっくりはほぼ間違いなくゲスか廃ゆんになりますよ」
「ゆひいいいいいっ!?」
「ど、どうしてあなたはそういちいち酷いこと言うのっ!」
「だって去勢をしたら生物としての目的を失い、自分が生きた証をなにも残せずに死ぬのが確定するんですよ?
 生きながら死んでるも同然。ヤケになるか自暴自棄になるかして当然です
 人間ならばまあ他に仕事や趣味に生きがいを見つける事もできますが、怠惰に喜びを見出すゆっくりでは……」
「だ、だいじょうぶだよ!れいむはだいじょうぶだよ!れいぶにはかぞくどうぜんっのおねえさんがいるから!」
「そ、そうよねれいむ!私達は家族同然……」

「いくら飼い主に可愛がられようが、当のゆっくりにとっちゃなんの意味もないと俺は思いますけどね?
 人間とゆっくりがどんなに仲が良くなっても所詮別種の生き物同士、
 別種同士より同種同士の方がゆっくりできるに決まっている。
 人間だって犬や猫をいくら家族同然に可愛がってても、
 実際は同種である自分の親兄弟や友達、子供の方が遥かに大事でしょう?
 同族である我が子を捨てて飼い主である人間だけ好きになれってのはどうやったって無理なんですよ」

「や、やめてえっ!もう酷いこと言わないでぇっ!」
「れ、れいぶは……ゆっぐり……?かぞく……おねえさ………かぞく?ゆっくり……ゆっくり……」

「……だから、さ。飼いゆっくりを家族同然に思ってたーなんてのは所詮あなたの身勝手な妄想でしかないんですよ。
 実際は家族どころか奴隷です。飼いゆっくりは飼い主……人間の奴隷なんですよ。
 衣食住だけを与えてやるから、その代わりお前の一生を飼い主に捧げろって命令されている奴隷。
 まずはそこを自覚してほしい。意図的に目を背けている現実を認めてほしい」

どんなに言い繕おうとも人間と飼いゆっくりの関係は、主人と奴隷もしくは召使いの間柄なのだとお兄さんは言う。
HENTAI趣味の飼い主ならば主人とオナホの関係であろうか?間違っても恋人同士ではないらしい。
自由を縛り、我侭を決して許さず、飼い主の気分次第で愛でるも殺すも性欲処理に使うも思いのままという歪な存在……
それが飼いゆっくりだとお兄さんは言う。

「美味しいあまあま、快適なおうち、優しい飼い主……!それらが演出する……偽りの公平感を。
 実際は家族どころじゃない、態度次第ではいつ捨てられてもおかしくない砂上の楼閣に彼女らは住んでいる。
 飼いゆっくりは飼いゆっくりの本質を知らぬままゆっくりしていく……
 そして何かが些細なことがきっかけでルールを破ったり、ゲス化したりする」

「あなた……!なんでこんな酷い事を言うのっ!?言わなければ誰も気付かないまま幸せに暮らせたのにっ!」
「……フェアじゃないと思ったから」
「フェア!?」

そう言うとお兄さんは足元のまりさの目を見ながら言葉を続けていく……
それはまるで震えるまりさにいい聞かせるように。

「このまりさは野良になってはじめて野良の本質を理解した。野良に対して人間の態度はつれないものだったはずだ。
 何を要求しても聞き入れてもらえず、優しくされず、蹴られ、殺され、無視されて……
 それらは野良ゆっくりに対する人間の本音。建前抜きの嘘偽りない完全な本音……本心」

「ゆっ……ゆひっ!ゆひぃぃぃぃぃ………っ!」
「ならまりさを飼う以上、飼いゆっくりの本質も教えてあげなきゃフェアじゃない。
 飼いゆっくりに対する扱いが本当はどのような意味をもっているのか……勘違いしたままだとまた過ちを犯すから」
「ゆ、ゆっく……ゆっくりしてい……ゆひぃぃぃっ……」
「か、勘違いさせとけばいいじゃない!本音を巧妙に隠して建前で接していけば双方幸せになる可能性が……」
「あいにく俺はそういうごまかしは嫌いなんだ。契約内容をよく説明しないで契約させて
 後でクレームが来るなんて事はね……さあまりさ?」
「ゆひっ!?」

お兄さんは怯えるまりさに手を差し出す……悪魔が手招いているかのごとく。
そして遊女が耳元で甘く囁くようにまりさを誘う。

「あまあまをあげるよ。快適なお家に住まわせてあげるよ。ゆっくりできるおもちゃもあげるよ。
 それは飼い主の義務だからね。してあげて当然さ、だからまりさはそれ以外の事はなにも考えなくてもいい。
 なにも選ばなくてもいい。ただ俺をゆっくりさせればそれでいい。
 さあおいで……幸せな奴隷になる為に俺の所へおいで。君を……一生飼い殺してあげよう」

「ゆ、ゆひぃ!ゆっゆっゆっ……!い……いやじゃぁぁぁぁぁっ!」
「……まりさ?」
「ば……ばりざはっ!ばりざは……じぶんでぎめだっ!ぎめだんだぁぁぁっ!れいぶとずっぎりー!じだことも!
 おねえざんにすてられだごともっ!のらになっだごともっ!ぜんぶぜんぶばりざが
 じぶんできめだことなんだよぉぉぉっ!?」
「うん」
「だがらっ!ごのままゆっぐりでぎなぐで、えいえんにゆっぐりじだとじても!ばりざがじぶんでえらんだことだがら
 ゆっぐじでぎるよ!ゆっぐじでぎるんだよっ!?で、でぼ!ごのままおにいざんにがわれだら……
 ばりざはゆっぎりでぎないぃぃぃっ!おちびじゃんもつぐれずに、いっしょうかいごろじなんでいやだぁぁぁぁっ!」
「ちゃんと理解しているじゃないか偉い偉い。さすがは元金バッジゆっくりだ」

「かいゆっぐりになんてなりだぐない!ば、ばりざはのらっ!のらでいいでずぅぅぅぅぅっ!」
「そうか……残念だ。野良がいいというなら無理強いはしないよ」
「ゆひぃ!ゆひぃぃぃっ!かいゆっぐりはゆっくりでぎないぃぃっ!ゆっくりでぎないぃぃぃぃっ!
 どれいなんてばりさいやだっ!じゆうがないのはゆっぐりできないよぉぉぉっ!ゆんやああああああああっ!」」

まりさはお兄さんに背を向けると、恐怖で顔を引きつらせたまま懸命に跳ねて公園を出て行った。
あとに残されたのはさして残念そうな顔をしていないお兄さんと、
青ざめた顔をしている飼い主と飼いゆっくり達。
やがて……金バッジれいむはギギギィ……と油が切れたブリキのおもちゃのようにお姉さんの方に顔を向けると
お姉さんに恐る恐る質問をしたのであった……してはならない質問を。

「お、おねえさん……?れ、れいむは……れいぶはおねえさんのどれい……だったの?」
「な……っ!?」

れいむの問いをきっかけに公園中の飼いゆっくり達が一勢に騒ぎ出す。
真実という禁断の果実を食したがゆえに。彼女らは今、心地よい偽りの楽園を追い出されたのだ。

「ちぇんはおにいさんのどれいだったのぉぉぉっ!?わがらないよぉぉぉぉっ!」
「むきゅっ!けんじゃなぱちゅはゆっくりさとりをひらいたわ!
 おねえさんはぱちゅのさいのうにしっとして、かいごろしにするきだったのね!?」
「ばばあああああああっ!よくもいままでばりささまをだましてぐれたんだぜぇぇぇぇぇっ!」
「おちびじゃんがつぐれないなんでいやだぁぁぁぁぁっ!」
「ゆっぐり!ゆっぐりぃぃぃぃっ!」

もはや公園は愛での楽園ではない。
阿鼻叫喚、絶望と憤怒と悲嘆が渦巻く地獄絵図と化したのであった。
飼い主たちは慌てて自らの奴隷どもをなだめようとするが時すでに遅し。
ただ空しく「愛誤ー!愛誤ー!」とただただ泣き叫ぶばかりである。どこかの半島人の鳴き声かっつーの。

「……行くか」

そんな騒ぎをよそに当のお兄さんはベンチから立ち上がって公園を去っていった。
飼い主たちがお兄さんに文句を言おうとした時はもう立ち去った後。完全に後の祭りである。

歩きながらお兄さんは考える。ゆっくりにとっての幸せはなにかを。
少なくとも飼いゆっくりに幸せはないだろう。飼いゆっくりとは去勢された豚みたいなものだ。
なら野良で生きていくことか?少なくとも自由だけはたっぷりとある。自由を押し通すには力がいるが。
野性ゆっくりとして山中などで生きるか?この世の法則はゆっくりではなく弱肉強食である事を嫌というほど
身をもって知ることができるであろう。

「……まあどうでもいいか」

ゆっくりの幸せはゆっくり自身の力で勝ちとるべきだ。それさえも他人任せにするというのならそれもいい。
飼い殺しですら嫌だと己のプライドに殉じるのならばその意思を尊重しようではないか。
明日には物言わぬ饅頭となろうとも、本ゆんが幸せならば人間が口を挟む道理はない。
ただ来る者は拒まないというのがお兄さんの流儀である。飼われたいなら受けて立つだけのことだ。

だからお兄さんは我が家へと帰っていく。
死んだ目をして虚ろな笑顔を向けて出迎えてくれる飼いゆっくり達が待つ我が家へと。
飼う以上はぺットが死ぬまで面倒を見よう。それが飼いゆっくりにとって幸せかどうかは分からないが……
お兄さんは妥協やごまかしを許さないだけで責任感が強い飼い主なのだ。