anko4516 人間に飼われるというのは……3

Last-modified: Mon, 25 Jul 2016 07:14:58 JST (2171d)
Top > anko4516 人間に飼われるというのは……3

「おでがいじばずぅぅぅぅぅっ!でいぶをがいゆっぐりにじでくだざいぃぃぃぃぃぃっ!」
「ありずはむーじゃむーじゃのときしあわぜーっていわないわ!おといれだってきめられたところでできるわ!?」
「まりざはゆっぐりできるんです!にんげんざんをゆっぐりさせてあげらればず!」
「だかられいぶをかっでね!はやくひろっでね!」
「ぱちゅといっしょにゆっくりしましょう!?だからにんげんざ………ああああああああああああっ!」
「まっでえぇぇぇぇっ!いがないでぇぇぇぇっ!ぜめでっ!ぜめでばりざのおはなしをきいでよぉぉぉぉぉっ!」
「ごんなのとがいばじゃないぃぃぃぃぃっ!」

道行く通行人に向かって必死に声を張り上げる野良ゆっくり達。
この通りは通称乞食饅頭ストリートと呼ばれている。
野良生活に適応できず、番が死んだり子供が死にかかってたりと
いろいろな理由でゆん生を詰んでいる元飼いゆどもが再び飼いゆ生活に戻ろうと最後の希望に賭ける場所。

だが当然こんな野良ゆっくりを飼おうなどという奇特な人間がいるわけもなく……
ひたすら無視され、近寄れば蹴飛ばされるだけであった。
だがそれでも元飼いゆっくり達は泣きながら懇願し続ける。
自分は。自分だけは飼われるはずだと根拠もなく確信しているから。
生まれついての野良ゆにはない、飼いゆっくりのマナーという絶対的な武器を身につけているのだから拾われないはずはない。
元飼いゆっくり達は誰もが内心そう思って、ささやかな優越感をもっていた。

だが現実は非情なものであり人間達は野良ゆっくり達に目もくれない。
悲痛な叫びに耳を傾けようともしない。
何故?何故?何故……?

「どぼじてぇぇ……?どぼじてだれもれいぶのおはなしをきいてぐれないのぉぉぉぉ………?」
「まりさはにんげんさんをゆっくりさせてあげられるのにぃぃぃ……」
「ありすのどこがだめなのぉ……?ありすはこんなにとかいばなのにぃぃぃ……」

人間の通行が少なくなり、声をかける対象がいなくなって意気消沈する乞食野良ゆっくり達。
その顔はどうして自分たちが飼われないのかまるでわからないといった感じだ。
こんなに自分はゆっくりできると人間が得できる利益を説いているというのに。こんなに自分たちは可哀想なのに。
どうして誰も彼も話を聞こうとすらしないのだ?どうして?どうして?どうし……

「当たり前だろ。そりゃ飼われるわけねーわ」

「「「「ゆ、ゆゆゆゆっ!?」」」」

突然の声に乞食ゆっくりどもがついそちらの方を見る……と。
そこには壁に寄りかかって携帯をいじっている青年の姿があった。
目の前にバス停があるところを見るに、どうやら路線バスがくるのを待ってるらしい。
今日初めて返事をしてくれた人間さんに、乞食ゆっくり達は色めきたった。

「ゆ、ゆっくり!ゆっくりしていってねっ!?」
「ああはいはい。ゆっくりゆっくり」
「ま、まりさはかわいそうなゆっくりなんだよ!まりさはなにもわるくないのにとつぜん、おねえさんにすてられてっ!」
「ありすはついすっきりー!をしちゃっただけなのっ!おにいざんにかわいいおちびちゃんをみせたかっただけなの!」
「ぱ、ぱちゅは……ぱちゅはげほっごほっ!?」

口々に自分はゆっくりできる、自分は悪くない、
理不尽で野良に落ちただけで本当はゆっくりしたゆっくりだとアピールを開始した。
だが青年はピシャリと一言。

「最初に言っとくけど俺はお前らなんか拾わないし飼わないから」

「「「「どぼじてぞんなごというのぉぉぉぉぉぉぉっ!?」」」」

垂れ下がった蜘蛛の糸はいともあっさりと切られた。

「いやどうしてもなにも……お前らさっきからピーチクパーチク叫んでたけどさぁ。
 お前ら自分がなに言ってるかわかってんの?」
「ゆ、ゆぅ!?」
「ああ、その様子だとやはりわかってなかったのか」
「ど、どぼいうごと……?おにいさん……」
「まあいいや教えてやるよ。お前らはさっきから涙流して通行人に向かってこう言ってたんだぞ?
 『おでがいでずぅぅぅ!人間さんはゆっぐりのどれいになっでくだざいぃぃぃ!』……てさ」

「「「「………?」」」」

青年の言葉に乞食ゆっくり達はしばしの沈黙……あまりに予想外のことを言われたもんで思考が追いつかないようだ。
1分後、比較的理解が早いぱちゅりーが恐る恐る青年に向かって反論する。

「む、むきゅ……?に、にんげんさん…ぱちゅはそんなだいそれたことはいってないわ?ただかわれたいだけで……」
「……ゆっ!?ぞ、ぞうだよぉぉぉぉっ!まりざだちはぞんなごといっでないぃぃぃぃぃぃっ!」
「ありずのことばをきょっかいっじないでねえぇぇぇぇっ!」
「れいぶはただにんげんざんをゆっぐりさせたいだけだよっ!れいぶけんきょすぎてごめーんねぇぇぇぇぇっ!?」

「別に曲解なんかしてねえよ。要するにお前らが飼いゆっくりになりたい理由はこうだろ?
 自分で餌取るのも嫌、家を見つけて確保すんのも嫌、とにかくゆっくりできない事すべてが嫌で嫌で、
 そういうのは全部人間に押し付けて自分はゆっくりだけしたい……って事だろ?」
「ゆううううっ!?」
「お前ら乞食にとって飼いゆっくりになるって事はそういうことなんだろ?
 で、なんだ?飼われたら人間をゆっくりさせてやるって?」
「む、むきゅ!そ、そうよぱちゅたちはこんどこそぜんしんぜんれいっでにんげんさんをゆっくりさせてみせるわっ!」
「ほーそりゃすげえ。で、具体的にどうゆっくりさせてくれるわけ?」
「……むきゅっ?」

「あのさ。お前ら乞食野良を飼うって事はお前らのメシの用意やら寝床の用意やらを人間様がしなきゃいけねえんだけど。
 それってものすごくゆっくりできない事なんじゃねーの?」
「む、むきゅぅぅぅぅぅっ!?」
「は、はぁぁぁぁぁっ!?な、なにをいっで…」
「いやいやいや。だってお前らはメシの用意……狩りだっけ?その狩りが嫌で嫌で飼いゆになりてーんだろ?
 じゃあその狩りをお前らに押し付けられた人間は?ゆっくりできると本気で思うか?」
「ぞ、ぞれは……」
「お前ら乞食がゆっくりできないと感じる事を全部人間に押し付けておいてゆっくりさせてやるだ?
 何様のつもりだお前ら。そういうのをなんだ……お前らの中じゃ奴隷って言うんだろ?
 飼い主はまさにそれじゃん。人間様に対して奴隷になれって言ってるようなもんじゃん」
「ち、ちがうのぉぉぉ!ありずはぞんなつもりでいっだんじゃないのぉぉぉぉっ!」

「そもそもさー。お前らが言う『人間をゆっくりさせる』ってなに?メシ食うときしあわせーとか言わないこと?
 クソは決められた場所でするって?お歌とやらをきかせてやる?それともガキ作ればゆっくりできるはずってか?」
「ゆっ!そ、そうだよ!れいむがゆっくりしているところをみれば、にんげんさんはきっとゆっくりできるはずだよ!」
「無理」
「どぼじてそくざにそんなごというのぉぉぉぉぉっ!?」
「じゃあ聞くけどさ。お前は自分のガキを見てゆっくりできるか?」
「おちびちゃんっ!?ゆんっもちろんゆっくりできるよ!にんげんさんもれいむのおちびちゃんをみたら
 きっとゆっくりするはずだよ!まっててね!いまおうちからつれてきて」
「じゃあガキだけ見てりゃいいじゃん」
「あげ………ゆっ?」
「そんなにガキ見てゆっくりできるんなら一生自分のガキの面を見てゆっくりしてりゃいいだろ?
 飼いゆになんかならなくてもいいじゃん」
「な………っ!なにいっでるのぉぉぉぉぉぉっ!?いくらおちびちゃんでゆっくりできたって、
 おなかはぺーこぺーこになるでしょぉぉぉぉっ!?おうちのなかがさむいさむいのはかわらないでしょぉぉぉっ!?」

「おおーわかってるじゃねえか。それだよそれ」
「ゆ、ゆぅ!?」
「ガキをお前に置き換えて考えてろよ。人間がお前を見て仮にゆっくりできたとしてもだ。
 お前の食い扶持の面倒を見るのはやはりゆっくりできないじゃん?つまりお前を飼うとゆっくりできねーんだよ人間はさ」
「な、なんでぇぇぇぇぇっ!?れいぶはにんげんさんをゆっくりさせてあげたんだから、
 れいぶにおれいのあまあまをくれるのはとうぜんっでしょぉぉぉっ!?」
「そういうれいむはゆっくりさせてくれた自分のガキにお礼……つか養うことができなくてその挙句、
 人間に肩代わりさせようとしているわけだが?」
「ゆゆっ!?」
「別に乞食野良を拾わなくても人間は人間なりにゆっくりしてるし。
 ぺット飼う対価にお礼なんてもんを求められるくれーなら饅頭なんてめんどくさいもん飼う必要ないわ。そうだろ?」
「ゆ、ゆぐ……ゆぐぐぐぐ……っ」

れいむは言葉につまってもはや何も言えなかった。

「身の程を知ったかカス。あと乞食すんなとは言わないけど忠告だ。
 ここで物乞いすんのはもうやめといた方がいいと思うぞ。どうせゆん生の無駄だろうし」
「ど、どぼじてっ!?」
「人間はお前らの見え透いた性根なんてとっくの昔に看破してるってこった。まあ万に一つも拾われるこたぁなんだろうな」
「なんでぇぇぇっ!?ありすはこんなににんげんさんをゆっくりさせようとがんばっでるのにぃぃぃぃっ!?

「はあ……なあその餡子脳で少しは考えてみろよ……本当にお前ら乞食野良が人間をゆっくりさせようと思ってるのなら
 こんな所でぎゃーぎゃー飼いゆっくりにしろなんてほざいてねーよ。
 とにかく人間にゆっくりしてもらおうと人間がゆっくりできそうな芸でも披露してるのが本当だろ?」
「ゆ、ゆ、ゆ………」
「結果飼いゆっくりにしてやるだのなんだのってのはその後の話だ。順序が逆なんだよ順序が」
「れ、れいぶおうたをうたいまずぅぅぅぅっ!おどりだってしまずぅぅぅぅぅっ!」
「やりたきゃやれば?でもまあお前の騒音としか言いようがない歌モドキや、
 ぐねぐね身をよじるだけの踊りモドキなんか見たって人間はゆっくりなんかできんと思うけど」
「ゆ、ゆあ、あ………ぞ、ぞんなぁぁぁぁ…」

「お前らは人間が何に対してゆっくりを感じるとか真剣に考えたことねえだろ?
 おうた?踊り?ガキ?そりゃお前ら饅頭どものゆっくりであって、人間がゆっくりできると感じる行為じゃねーんだよ
 そんな乞食野良ゆっくりどもが飼い主を全身全霊でゆっくりさせるとかさぁ……ふざけんなカス。
 自分のゆっくりしか考えられないお前らなんかにゃそんな芸当、死んでもできねーよ」

「ゆ、ゆゆ………」
「ぞ、ぞんなぁぁぁ……」
「ありすたち……いなかものだったの………?」
「む、むきゅ…」

青年に自分たちの行動言動の本当の意味をことごとく指摘され、意気消沈する乞食野良ゆっくりたち。
みんなそんな事考えたこともなかったといった面持ちをしている。
物乞いの文句は無意識からついつい出た本音という奴だろう。

「それとさ……ああそこのゲロ袋でいいや。ゲロ袋にひとつ聞きたい事があんだけどいいか?」
「げ、げろってぱちゅのこと…?な、なにかしら……?」
「お前たちってさぁ………実は心の中じゃ人間を見下してるだろ?」

「「「「!??!?」」」」

「涙ちょちょぎらせて、いかにも人間に情けを乞うあわれな下等生物でございって卑屈な態度とってるけど……
 本当は自分たちの方が人間より格上だと思ってるだろ?」
「な、な、な、な……なにをこんきょにぞ、ぞんな……!」

「いま全部説明してやっただろ?所詮お前ら乞食野良は自分たちがゆっくりする事しか考えてないってよ
 あーなんだ、お前らの中じゃゆっくりしているゆっくりが一番偉いんだって?
 だから饅頭どもは自分がゆっくりしていると自覚するとだな
 すぐに内心見下している人間……いや飼い主に対してこう吐くんだよ『おい奴隷っ!』……てな」
「……ゆ、ゆ、ゆ」

「ぺットは飼い主より立場が下ってことがどうしても理解できないらしいなゆっくりという饅頭は…
 だからお前らは捨てられんだよ。拾われないんだよ。りきゃいできりゅ?」
「ゆぐっ!?ゆ、ゆぐぐぐぐぐっ!」

「ああそうそう、あと大げさに泣き喚いているのも悲劇のヒロインを演じて自分はカワイソーだと思う事で
 ゆっくりしたいだけなんだろ?すげえよなあ……いや本当にそう思うよ。
 生きるか死ぬかの瀬戸際で人に真剣にモノを頼む時ですらゆっくりしようとするだなんてよ。
 どこまでゆっくりとやらに対して強欲なんだお前ら」
「む、むきゅ……むきゅぅぅぅ」

「もう一度言うけど人間はさ、お前ら乞食野良の薄っぺらい魂胆なんかぜーんぶ見透かしてるの。
 だからここで乞食なんかしても絶対に飼われないからもうやめとけ。
 乞食して無駄に時間を浪費したって仕方ねえだろ?もう諦めて真面目に野良を生きろ、な?」
「ゆぅぅぅぅぅっ!?」

青年に次々と言い負かされる野良ゆっくり達。
あまりの正論に野良ゆ達はこのまま大人しく引き下がる……わけはなかった。
青年はあまりにもストレートな言葉でゆっくりの尊厳を傷つけすぎた。
もう自分たちは飼われない。飼いゆっくりには戻れる見込みはない。ならばせめて言いたい事を全部言ってやる!
四匹がそう思い至るのにさしたる時間はかからなかった。

「ゆがあああああああっ!うるざいよぉぉぉぉぉっ!ゆっぐりがゆっぐりじでなにがわるいんだぁぁぁぁぁっ!」
「ゆっぐりはゆっくりじでるからゆっくりなんだよぉぉぉぉぉっ!?」
「りがいでぎるぅぅぅ!?ねえねえいなかものなにんげんざんっ!りがいでぎるぅぅぅぅっ!」
「げほごぼっ!ゆ、ゆっぐりがゆっぐりをもとめるのはしぜんのせつりっなのよぉぉぉぉっ!」
「ゆっぐりじでるからっ!れいぶはゆっぐりなんだぁぁぁぁぁっ!ゆっぐりりがいじろぉぉぉぉぉっ!」

「いや?別にゆっくりしてるからお前らがゆっくりって呼ばれてるわけじゃないぞ?」

「「「「…………ゆ?」」」」

「前になんかの本で読んだ事あるんだけどさ。
 お前ら動く饅頭どもがゆっくりゆっくりって言ってたからゆっくりと呼ぶようになったんだってよ
 要するに鳴き声からテキトーに名前を付けただけなんだと。結講いい加減なもんだよな~」

ブロロロロ……、キーッ!

「お、やっとバスが来たな。ま、いい暇つぶしにはなったわ」
「……ゆ」
「じゃあな乞食野良ども。物乞いなんてしてる暇があったらおとなしく狩りでもしてろや」
「………ゆ」
「ゆっくりするなんてお前らにとっちゃただの幻想、ファンタジーなんだから本気になんかしてんなよ。じゃーなー」
「むきゅ……」

ブロロロロ……!

言いたい事だけ一方的に言い捨てて、青年はバスに乗ってどこかへ行ってしまった。
あとに残されたのは魂が抜けたような顔で佇む4つの饅頭のみ。
と、そこへサラリーマン風の男が通りかかった。

「に、にんげん……さ……」
「……」
「……」
「……」

れいむだけが思わず物乞いをしようと口を開きかけたが、言葉が続かずそのまま黙りこんでしまう。
他の三匹はもう乞食をしようという気力すらないようだった。
青年が最後に言っていた鳴き声という言葉が頭から離れなかった。

「……なきごえ……まりさはなきごえさんだったの……?」
「ゆっくりっていってるから……ありすはゆっくり……」
「む、むきゅきゅきゅ……なきごえさんかあ……なきごえさんがにんげんさんをゆっくりさせられるわけないわねえ……」
「ねえ…ゆっくりって……ゆっくりするって……なに?」

れいむの最後の問いに答える者はどこにもいなかった。
乞食饅頭ストリートにはかつてゆっくりと呼ばれていた、
思い込みの力を失った物言わぬ饅頭が4個転がっていただけであった。