anko3629 オーディション のバックアップ(No.1)


「ゆゆゆ~ゆゆ~ゆゆ~んゆゆ~♪」

公園の植木のそばに置かれているダンボールの中から、楽しそうな歌声が聞える。
中では三匹の子れいむが、体をクネクネと動かしながら不思議なリズムの歌を歌っている。

「ゆふふ、ぶらぼーだよおちびちゃん!おちびちゃんたちは、てんさいてきな、おうたのさいのうがあるよ!せかいのうたひめだよ!!」

自分の世界に入りきって歌う子ゆっくり達を見て、涙を流して感動する親れいむ。
人間には騒音に聞こえてもでも、ゆっくりにとっては『すてきなおうた』になる。
その上自分の子、特に自分にそっくりな子をこよなく愛する、自己愛の塊である親れいむがこの歌を聞いている。
たとえ同族にもっとお歌の上手いゆっくりがいたとしても、絶対に敵うはずがなかった。

「ゆぅ…れーみゅ…いもーちょ………まりちゃも…いっしょにゆっくちしちゃい………」

そんな様子をダンボールハウスの隅で、涙目で見つめる子まりさ。
その姿は子れいむ達に比べるとボロボロで、やつれている。
親れいむや子れいむ達から毎日苛められている上に、ろくに食事も与えられてないせいである。

番の親まりさは元飼いゆっくりで、野良のれいむに騙されて子供を作ったせいで捨てられた。
それでも親まりさは必死に公園で草や虫を取り、ゴミを漁って一家を養った。
だがそんな生活がそう長くは続くはずもなかった。
親まりさの唯一の頼りだった運が、尽きる時がやって来たのだ。
親まりさは公園に遊びに来た人間の子供達に捕まり、おもちゃとして死んでいった。
ゴミのように捨てられていたボロボロの親まりさを見た子まりさは酷く悲しんだが、親れいむ達は役立たずのクズだと罵った。

だがそれは親れいむにとって、少しも悲しい出来事ではなかった。
それどころか、これから訪れるであろう幸せな未来に期待を膨らませていた。

「ゆふふ!これなら、あしたのおーでぃしょんは、かんぺきだよ!れいむたちが、かいゆっくりになるのは、きまったようなものだよ!!」

『ゆわーい!ゆっくちー!ゆっくちー!かいゆっくちー!』

子れいむ達は満面の笑みを浮かべてピョんピョンと飛び跳ねたり、体を伸ばしてユラユラと幸せそうに揺れる。
親れいむもそんな我が子を見て、思わず微笑むと一緒に体を揺らした。
そんなれいむ達の姿を、寂しそうに眺めて子まりさは涙を流すのだった。

翌日。
早朝にもかかわらず、公園中の野良ゆっくり達が噴水の前に集合していた。
種類も大きさも様々、その数ざっと三十匹位だろうか。
何やら踊りの練習や、お歌の練習をする者。
待ちきれずに寝てしまう者や、早く飼いゆっくりにしろと騒いで転げまわる者もいる。
するとそこに、一人の女性が現れた。
彼女は噴水の淵に腰を下ろすと、集まったゆっくり達を見渡して挨拶をする。

「いっぱい集まったわね。さあ、ゆっくりしていってね!飼いゆっくりオーデションを始めるわよ!」

『ゆっくりしていってね!!』

集まったゆっくり達も釣られて挨拶をすると、ゆんゆんガヤガヤと好き勝手に騒ぎ始める。

「はやく、まりささまをかいゆっくりにするんだぜぇぇぇぇ!!もう、まてないんだぜぇぇぇ!」

「かってなことはゆるさないよ!かいゆっくりになるのは、れいむだよ!れいむいがいはみんな、みじめにしんでいってね!!」

「むきゅ!ここはずのうはな、まちけんのぱちゅりーが、かいゆっくりになるべきだとおもうわ!これはもうきまっていることなのよ!うちゅうのしんりよ!!」

「ゆっちー!ゆっちー!きゃいゆっちー!ゆぴゃぴゃーい!」

だが彼女はそんなゆっくり達に笑顔で語りかける。

「はい、静かにしてね。チャンスは誰にでもあるわ。順番にオーディションをやって行きましょう」

「なにいってるんだぜ!まりささまが、かいゆっくりになるってきまってるんだぜ!おーでしょんなんかいらないんだぜ!むいみなんだぜ!さっさとかいゆっくりしろぉぉぉ!!」

一匹のまりさが彼女の足元まで跳ねていくと、そこで唾を撒き散らしならが大声で騒ぎ始める。
だが彼女は顔色一つ変えずに、睨み付けてくるまりさを両手で持ち上げる。

「あら?元気が良いわね、私そういうゆっくりは大好きよ。でもオーデションの邪魔をするのは許せないわね…失格よ」

「ゆぅぅぅ?!なにいってる…ゆ?…ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁ?!までぃざのおべべがぁぁぁぁぁ!!」

彼女はまりさに優しく語りかねながら、少し爪の伸びた指をまりさの右目に付きたてた。
まりさは左目をグルグルと動かし、涙とよだれを撒き散らす。

「がびゃ!げびゅ!なにずるんだ…ぜ…ゆびぃ!ばびゅ!ごびゅ…ががげびゅ………びびゃ?!」

彼女はまりさの目を潰すと、そのまままりさの体内に手を突っ込んでいく。
彼女の手が何かを探すように動く度に、まりさは体を痙攣させて呻き声をあげる。
栓が壊れたかのようにしーしーを漏らし、彼女から逃れようと体をくねらせる。

「やべ…っで…ごべんな…がじゃ?!べびゃ!ゆびぃ!びゃっびゃ…ばびぃん!!………」

彼女の手がまりさの中枢餡に触ると、まりさは一層大きく体を痙攣させる。
悲願するように彼女の眼を見つめて涙を流し、途切れ途切れになりながらも何かを口にする。
だが彼女の手は止まらず、まりさの中枢餡を握りつぶした。
まりさは大きな呻き声を上げると、涙としーしーをダラダラと滴らせて動かなくなる。
彼女はそんなまりさを、まるでバスケットボールの様に放り投げ、公園据え付けのゴミ箱にシュートした。

「ゆ?…ゆっぎゃぁぁぁぁぁ?!どぼじでぇぇぇぇぇ?!なにがおごったのぉぉぉぉぉ?!!」

「ゆっっぴぃぃぃぃ!!こわいぃぃぃぃ!このにんげんしゃんは、ゆっくちできにゃいぃぃぃぃぃ!!」

それまで何が起こっているのか理解出来ずに固まっていた野良ゆっくり達が、一斉に悲鳴を上げて騒ぎだす。
おそろしーしーを漏らして震えるゆっくりや、逃げ出そうとする野良ゆっくりゆっくり達。
彼女はそんな野良ゆっくり達に向かって優しく微笑む。

「はいはい、恐がらなくていいのよ?あのまりさは、自分だけ飼いゆっくりになれれば良いと思っている、とっても悪いゆっくりなの。ゆっくりしてないゆっくりだったのよ。だからあんな事になったのよ」

『ゆゆ?!』

「あなた達はどう?ゆっくりしてるかしら?ゆっくりしてないゆっくりは、飼いゆっくりにはなれないわよ?」

『ゆっくりしてるよ!かいゆっくりになれるよ!!』

怯えていた野良ゆっくり達が、彼女の言葉に引き込まれるかのように聞き入る。
そして「飼いゆっくり」という言葉を聞いた途端に、キラキラと目を輝かせる。

ここに集まったのは、辛い野良生活をしいられていても、何よりもゆっくりしていると言う見栄を張った野良ゆっくり達。
自分をゆっくりしてないと否定する事は、自分のすべてを否定するのと同義。
どんなにゆっくり出来なくてもそれを認めない、認めたくない。
ゆっくりとしてのプライドがそれを認めない。

そんな野良ゆっくり達ではあるが、飼いゆっくりへの憧れはある。
飼いゆっくりの現実を知らない野良達は、幸せそうに暮らしている同族を眺めては、勝手に素敵な妄想を膨らませていく。
自分のせいで野良に身を落とした元飼いゆっくり達は、その安定した生活に戻りたいと願う。
憧れの飼いゆっくりになる為に、このオーディションに参加しにやってきたのだ。
『飼いゆっくり』と言うたった一言に過ぎない言葉。
だが野良ゆっくり達にとっては、眩いばかりの希望の光だった。

「まりちゃが、かいゆっくちになるのじぇ!かいゆっくちだいいちごうなのじぇ!まりちゃのぷりちーな、だんしゅをみるのじぇ!」

自分がどれだけゆっくりしているかをアピールする為、子まりさは自慢のダンスを披露する。
ゆんゆんと歌いながら不規則に跳ね回りグネグネと体を伸ばしたり、ユラユラと左右に揺れたり、尻を突き出してブリブリと振る。
一見意味不明な行動だが、子まりさはキラキラと目を輝かせて得意そうに微笑む。

「まりちゃのすーぱーだんしゅはどうなのじぇ?!ぷりちーでかっこいいのじぇ?とーってもゆっくりしてるのじぇ?まいけるしゃんも、はだしでにげだしゅのじぇ!」

「ゆゆ~ん!さすがありすのおちびちゃんよ!とーってもとかいはよ!おちびちゃんのみりょくに、おねーさんもこうさんね!!」

「えーっと…何かしら?誰が逃げ出すの?私?私には理解不能だったわよ?」

『ゆゆ?!』

自信たっぷりの子まりさと、我が子を絶賛するありすだったが、彼女の一言が信じられないと言った表情で固まる。
様子を見ていた周囲の野良ゆっくり達も彼女の言葉に便乗して、「ゆっくりできない」だの「かいゆっくりにふさわしくない」だのと騒ぎ始める。

「残念ね、失格よ」

ブチャ!

「びゃ!」

彼女は笑顔でそう言うと、あっさり子まりさを踏み潰す。
子まりさは汚らしい音と共に餡子をぶちまけて息絶える。

「ゆ?………ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁ?!おちびちゃ 『グチャ!』 びぇ?!」

「あなたも失格よ。あんなゆっくり出来ないものをゆっくり出来ると嘘をついた罰よ。嘘つきは飼いゆっくりに相応しくないわ」

子まりさに続いてありすも踏み潰される。
周囲から悲鳴に混ざって歓声が沸き起こる。
潰された子まりさとありすの親子を見て、ニヤニヤと笑う。
自分こそが飼いゆっくりに相応しいと思っている野良達。
故に自分以外のゆっくりに対しての評価はとても厳しいのだ。

「にゃぎゃ!わがらな…」

「ときゃいば!ゆっぐち…」

「れいむはしんぐびゃ!…」

自分の可愛さや不幸さをアピールしては、あっさりと崩れ去っていく野良ゆっくり達。
数もどんどん少なくなっていき、最初に集まっていた数の約半分以上が失格となりゴミ箱に捨てられる。
これが一斉駆除ならさっさと逃げる所だが、危機感のない野良達は自分は大丈夫だと根拠のない自信を持っている為逃げようとはしなかった。

「むきゅきゅ…おばかなゆっくりたちね…かいゆっくりになれるのは、ぱちぇなのに。それに、まんがいちしっかくでも、ぱちぇには、『きりふだ』があるわ。ぱちぇはあんぜんよ!」

次々と失格になって潰されていくゆっくり達を見て、ニヤニヤと笑うぱちゅりー。
このぱちゅりーも飼いゆっくりに憧れる、あほな野良ゆっくりの一匹。
飼いゆっくりは、野良よりも良い生活が出来ると思っている程度の知能しかない。

そんなぱちゅりーに順番が回ってくる。
ぱちゅりーはむっきゅんと少し仰け反り、得意そうに笑う。

「むきゅきゅ!にんげんさん、ぱちぇはひみつのあんごうを、かいどくすることにせいこうしたのよ!これをみてちょうだい!」

ぱちゅりーは帽子の中から折り畳まれた一枚の紙切れを取り出すと、彼女の前に差し出した。

「このあんごうさんによれば、このばしょにたくさんのおやさいや、あまあまさんがいーっぱいあるのよ!ぱちぇにまかせておけば、ここにたどりつくことができるわ!おうごんのゆっくりぷれいすよ!!」

再びむっきゅんと仰け反るぱちゅりー。
だがその言葉に反応したのは、周囲にいた野良ゆっくり達だった。

「おやさい?!あまあま?!れいむもいくよ!さっさとばしょをおしえてね!いますぐでいいよ!!」

「そんなすてきなばしょは、くそにんげんにはもったいないのぜ!まりさこそふさわしいのぜ!!」

「ゆわーい!あみゃみゃ!おやしゃい!ゆっくちー!ゆっくちー!!」

「むっきゅぅ!かってにもりあがらないで!あなたたちは、けんけいないのよー!むっきゅー!!」

ぱちゅりーは集まってくる野良達を怒鳴りながら、その場でウネウネと動く。
そんなゆっくり達を気にも止めず、彼女はぱちゅりーから渡された紙をまじまじと眺める。
ぱちゅりーはその様子を横目で見ると、ニヤリと笑い勝利を確信した。

「何これ?半年前の広告じゃないの?ある程度字が読めてるのかな?でも、もうこのお店潰れてなくなってるわよ?」

「むっきゅっきゅ!ぱちぇのえいちにおどろい………はんとしまえってなに?なくなっているって、どういうことなのぉぉぉぉ?!」

「だから、この広告は古いのよ。暗号でもなんでもないわ。それにあなたみたいな中途半端な英知は要らないわ。残念ね、さよならよ」

彼女はぱちゅりーを持ち上げると、頬笑みながら少しずつ手に力を込める。
ぱちゅりーは驚いている暇もなく、恐怖でガタガタと震えながらしーしーを漏らし始める。

「まっで!まっでぇぇぇ?!ぱちぇはゆっぐりじでるわぁぁぁ!!これを、これをみでぇぇぇぇぇ!!」

「ちゃお?…ちゃおぉん…ちゃおぉぉん…」

ぱちゅりーは引き攣った顔で笑顔を作りながら、被っていた帽子を取った。
帽子の中には小さなめーりんが、震えながら彼女を見上げる。

「どぼかじらぁぁ?!このくずめーりんと、ぱちぇと、どっちがゆっくりじでるかしら?!ぱちぇよね?ぱちぇにきまっでるわぁ!ふぁいなるあんさーよぉぉぉ!!」

これがぱちゅりーの「きりふだ」だった。
偶然見つけた野良の子めーりんを、ゆっくりしてないゆっくりを見せる事で、自分をゆっくりしてるように見せる作戦。
ぱちゅりーは未だ震えが止まらないままだったが、めーりんを見つめる彼女の反応を見て、今度こそ勝利を確信する。

「この子は合格よ。知り合いにめーりん好きが居るから、そっちで面倒見てもらうわ。でもあなたは失格のままよ」

「ちゃお?」

「むぎゅ?!」

不思議そうに首を傾げるような仕草をする子めーりんと、涙と涎を垂らしながら両目を丸くして固まるぱちゅりー。
しばらくすると、ぱちゅりーはまるで産声を上げるかのように叫び出す。

「むっぎゅぅぅぅ?!どぼじでぇぇぇ?!こんなくずめーりんより、ばぢぇのほうがゆっくりじでるぅぅぅぅ!じぬのはくずだぁぁぁ!けんじゃはかいゆっぐりになるんだぁぁぁ!!」

「私ね、森げろって嫌いなのよ。頭は悪いし、すぐゲロ吐くし、ゲロ袋は要らないわ。ゆっくりできないでしょ?それに賢者の癖に人に飼われるのもなんか変でしょ?」

彼女の言葉に賛同して、次々と周囲の野良達が騒ぎ出す。
自分達より優れたゆっくりなど居ないと自負している野良達。
醜い姿をさらすぱちゅりーに助け船を出す者などいなかった。

「むぎょぉぉぉ?!うぞだぁぁぁ!ぱちぇがじんだら、せかいはくらやみ…むっ!むぎょあぁぁぁぁ?!ゆげごべげろぉぉぉぉ?!えれえれえれえれ………」

ストレスに耐えきれなくなったのか、ぱちゅりーは口から白い泡と一緒にクリームを吐き出す。
彼女はぱちゅりーが吐くのを予感したのか、ぱちゅりーを地面に捨てると子めーりんを小さな透明の箱に入れた。

「はい合格第一号よ。ゆっくりしていってね。あなた達も、合格目指して頑張ってね!」

「ちゃお!ちゃお!」

『ゆおぉぉぉぉぉぉ!ごうかくめざすよぉぉぉぉ!!かいゆっくりになるよぉぉぉぉぉ!!』

彼女に答えるように笑顔で鳴く子めーりん。
子めーりんが飼いゆっくりになるのを、内心認めていない野良達ではあったが、格下と思っているめーりん種が合格した事でさらに自信を持つ。
グズが合格したなら、間違いなく自分が合格出来る。
野良達は雄たけびを上げて、飼いゆっくり宣言をした。

「かわいいれいむが、しゅっさんするよ!きちょうなしゅっさんしーんをみて 『グチャ!』 ごびぇ?!」

「かわいーまりちゃが、うんうんしゅるのじぇ!ゆっくちみとれ 『ブチッ!』 びゃ!!」

「とかいはなありすの、まぐなむぺにぺにをみせて 『ザシュ!』 どっどがいば!!」

オーデションが再開されるが、どのゆっくりも自己満足の「ゆっくり」を彼女に見せびらかしては、無残に潰されていった。
公園には、逃げ出すゆっくりが居てもおかしくない程のゆっくりの死臭が漂い、ゴミ箱には大量のゆっくりの死体で溢れている。
今や公園は、飼いゆっくりオーディションの名を借りた、ゆっくりの大量虐殺会場に姿を変えていた。
だが、野良ゆっく達はそんな事は一切気にしていなかった。
めーりんが合格した事で、野良達のプライドの火がついたのだ。
めーりんには負けられない。
自分はめーりんよりゆっくりしている。
自分はめーりんより飼いゆっくりにふさわしい。
そんな考えばかりが先行して、野良ゆ達は冷静に状況を判断出来なくなっていた。
そしてその結果、どんどん数を減らしていった。

「ゆゆっ!つぎはおまちかね!れいむたちのばんだよ!おちびちゃん、じゅんびはいい?」

『ゆゆっ!ばっちりだよ!れーみゅたちが、かいゆっくちになるよ!!』

ようやくれいむ一家に順番が回ってきた。
とは言っても、この一家が一番最後に残った野良ゆ達。
ちなみに子めーりんが合格してから、一匹の合格もない。
親れいむの掛け声で気合の入る子れいむ達。
三匹横一列に並ぶと、それぞれが自分勝手にユラユラと体を揺らしリズムをとる。

ゆゆゆ~ゆんゆんゆ~ゆゆんゆゆ~~♪

三匹がばらばらに歌い始める。
メロディーやテンポもまったく合っておらず、輪唱にすらなっていない。
三匹の子れいむが、三匹とも違う歌を歌っているようにも聞こえる。
だが子れいむ達は、自分の歌に酔いしれるかの様に目を閉じて微笑み、気持ち良さそうに体を揺らす。
親れいむもそんな我が子に見とれて、幸せそうに微笑み体を揺らす。

「もう止めて、耳が腐るわ」

『ゆ?』

その一言が信じられないとばかりに、目を丸くして固まる子れいむと親れいむ。
最高に、完璧にゆっくりしているはずの自分達に、ありえない言葉が聞こえた。

「ゆぅぅぅぅ?!なにいっちぇるのぉぉぉぉ?!くしょにんげんは、おみみがくさっちぇるのぉぉぉ?!」

「れーみゅのおうたは、このよでいちばんの、せーなるねいろにゃんだよ!くしょにんげんは、げーじゅつがわからにゃいの?!」

「ばーきゃ、ばーきゃ!れーみゅのおうたがりかいできにゃい、ごみにんげんはじごくにおちてね!」

硬直が溶けた途端に暴言を吐く子れいむ達。
親れいむは怒りを通り越して、呆れ顔で彼女を見つめる。

「ゆっぷっぷ!かわいそうなにんげんだね、おお、あわれあわれ!れいむたちのげいじゅつが、ゆっくりがりかいできないんだね!しんだほうがいいよ!」

頬を膨らませてぴょんぴょんと跳ねる子れいむ達と、その後ろでニヤニヤと笑う親れいむ。
すでにこのれいむ一家は目的を忘れて、ただ目の前のゆっくり出来ない愚かな人間を見下し、罵る事で自らをゆっくりさせていた。

「言いたい事はそれだけかしら?じゃあ、そろそろ片付けないといけないわね…覚えてるでしょ?」

「ゆゆ?くそにんげんがなにいって………ゆ?」

『ゆ?』

「ほらあれ、もう忘れたの?面白いわね。だからゆっくりって好きなのよ」

れいむ親子は何かに気がつき、冷や汗を垂らして動かなくなる。
周囲に漂うゆっくりの死臭。
れいむ親子はガタガタと震えだし、周囲を見渡す。
地面には餡子やクリームがばら撒かれ、蟻が集まっている。

「ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁ!なにあれぇぇぇぇぇぇ?!ゆっぐりできないぃぃぃぃぃぃぃ!!」

「ゆんやぁぁぁぁぁぁぁ!ゆっげぇ?!ゆぶぶっ!ゆっげろぉぉぉぉぉぉ!!」

臭いの元を見つけた親れいむは、しーしーを漏らして泣き叫ぶ。
子れいむ達はその惨状に耐え切れなくなり、苦しそうに顔を歪めて餡子を吐く。
ゴミ箱に押し込められた野良ゆっくりの死体は、ゆっくりにしか解らない死臭と甘ったるい臭いを放っていた。
何匹分あるのか解らないほどの目玉、舌、歯、髪の毛、お飾り。
苦悶の表情を浮かべているものや、それがゆっくりなのか解らないくらい崩れているものもある。
暗い所で見たら、人間でも腰を抜かしそうな塊。
集まってくるのは捕食種のゆっくりくらいだろう。

「じゃあ、覚悟はいいかしら?ゆっくり死んで…あら?」

「ゆっゆっ…このあたりから、おかーしゃんのこえがきこえちゃのじぇ…ゆっゆっ…おかーしゃんはどこなのじぇ?おかーしゃぁぁぁぁん!」

「ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁぁ?!ゆゆ?あれはつかえないまりさにの、ゆっくりしてないおちびちゃんだよ!くそちびぃぃぃ!はやくこっちにこいぃぃぃ!れいむたちを、このくそにんげんからだずけろぉぉぉ!!」

そこに現れたのは、オーディションに参加させて貰えなかった子まりさだった。
それに気がついた親れいむは、涎を撒き散らしながら助けを求める。
自分でも危険だと思っているこの人間に、この子まりさが勝てるとは初めから思っていない。
ただ、自分が逃げる為の時間稼ぎになれば良いとしか考えていなかった。
そんな事とも知らずに、子まりさは慌てて跳ねてくる。

「ははぁ…なるほどねぇ。少し痩せてるのも、貴方達より薄汚いのもそう言う事かしら?」

親れいむの態度と、子まりさの姿から何かを読み取った彼女は、親子ゆっくりを品定めするように見比べる。

「決めたわ!貴方達を飼いゆっくりしてあげるわ」

『ゆゆ?!』

「ゆ?なんのことなのじぇ?」

涙としーしーと餡子に塗れたれいむ親子は、驚き固まる。
子まりさは何の事かわからず、首を傾げるような仕草をする。
しばらくすると、れいむ親子は大喜びで跳ね回り、子まりさはその様子を不思議そうに眺めているのだった。

「ゆっがぁぁぁぁぁ?!どぼじで、かいゆっくりにこんなこどずるのおぉぉぉぉ?!」

「くっしゃぁぁぁい!こんにゃのたべちゃくないぃぃぃぃ!ゆっくちできにゃいぃぃぃぃ!!」

防音加工されてない透明な箱から、れいむ親子の叫び声が聞こえる。
その風貌は、野良暮らしをしていた時より薄汚く、顔色も悪かった。

「ゆっぷっぷ!はやくそれをたべるのじぇ!とーってもゆっくちした、まりちゃさまのうんうんなのじぇ!ごーかなごはんなのじぇ!」

「ゆっげぇぇぇぇ?!こんなのたべられるわけないでしょぉぉぉ?!おかーさんが、くそちびをここまでそだててあげたおんを、わすれちゃったのぉぉぉ?!」

「ゆゆ?なにいってるのじぇ!まりちゃさまがまいにち、おまえりゃのために、うんうんしてあげちぇるおんを、もうわすれたのじぇ?」

そんな家族を箱の外から眺めてニヤニヤと笑い、得意そうに尻を突き出して屁をする子まりさ。
親子れいむ達はそんな子まりさと、箱の中に盛られた子まりさのうんうんを見比べて、悔しそうに唇を噛む。

子まりさは以前と比べ物にならないくらいに肥え太り、体もお飾りも綺麗になっていた。
あれから子まりさは飼い主の意向により、野良時代と立場を逆転させられて飼われているのだ。
最初の内は子まりさには抵抗があったものの、今ではすっかり以前の親れいむや子れいむのように自分の家族を苛めて喜んでいる。
所詮は同じ餡を分けた親子といったところだろう。

「あら、仲良くやってるみたいね。いい事ね」

「ゆゆ?くしょどれーが、きやすくまりちゃさまに、はなしかけるんじゃないのじぇ!みのほどをわきまえるのじぇ!!」

「ゆっがぁぁぁぁぁ?!これのどこが、なかがいいのぉぉぉぉぉ?!くそにんげんは、おめめがくさってるのぉぉぉぉ?!かいゆっくりは、たいせつしたいとだめでしょぉぉぉ?!」

そんな親子のやり取りを、楽しそうに眺める飼い主。
子まりさは飼い主である彼女を睨んで頬を膨らませる。
調子に乗ったゆっくりが、自分以外を見下し傲慢な態度を取る良い例だろう。
親れいむも彼女を睨みながら、大声で怒鳴り散らす。
こちらの場合は初めから飼い主、人間をゆっくりより下の存在と考えているゆっくり。
だが、そんな態度のゆっくり達を見ても、彼女は笑顔を崩さなかった。

「元気が良くて結構よ。でも、もう貴方達にも飽きたのよ。そろそろお別れして、新しいゆっくりを公園に探しに行くわ」

『ゆゆゆ?!』

彼女はそう言うと、小さな透明の筒を取り出した。
ゆっくり親子は彼女が何を言っているのか理解出来ず、困惑した顔で固まる。

「これはね、あの子めーりんを友人に上げた時に御礼に貰ったお金で買った物よ。『ゆザリザリ君』って言うらしいの。最近は面白い物がいろいろあるわよねぇ」

「ゆわーい!おしょらをとんでるみちゃーい!」

彼女は一匹の子れいむを捕まえると、透明な筒の中に押し込めた。
筒の内部は丁度子ゆっくり1匹が納まる大きさで、彼女はその筒に蓋をする。

「ゆゆぅ!なにこりぇ!せまいよ!これじゃ、ゆっくちで…ゆんぶぅ?!いちゃい!くるちぃぃぃぃ!ちゅぶれりゅぅぅぅぅぅ!!」

子れいむは蓋についていたフック付のバネで頭を固定され、蓋の内部のバネのせいで押しつぶされる寸前まで筒の底に体を押し付けられた。
子れいむは苦しさのあまり、涙を流して叫び声を上げる。
そんな子れいむの様子を見て彼女は満足そうに笑うと、筒の底をくるくると回し始める。

「ゆゆゆぅぅぅ?!いっちゃい!いっちゃい!れーみゅのあんよがちくちくしゅるぅぅぅぅ!」

筒の底からは、すり潰された子れいむの皮がポトポトと透明な箱の中に落ちていく。
しばらくすると子れいむの餡子と、皮が混ざったペーストがその上に積み上がっていく。

「じゃばばぁぁぁぁ?!いちゃいぃぃぃぃ!れーみゅのあんよがぁぁぁ!ばーじんまむまむしゃんがぁぁぁぁ!ぷりちーなひっぷがぁぁぁぁ!!」

「ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁ!!れいむのかわいいおちびちゃんがぁぁぁぁぁ?!せかいのたからがぁぁぁ!ぷりちーなてんしさんがぁぁぁぁぁ!!」

「ゆっぷっぷー!いいきみなのじぇ!くじゅはくじゅらしく、ごみみたいに、しぬのがおにあいなのじぇ!」

子れいむは筒の中で必死に身を捩り脱出を試みるが、バネの力には逆らえず身動きが取れない。
ぽろぽろと涙を流してしーしーを漏らすが、あっという間にしーしー穴も磨り潰されて消えていく。
それを見ていた親れいむは大声を張り上げて泣き叫ぶ。
子れいむ達はあまりの惨状に、気絶してしーしーを漏らす。
子まりさは大笑いで磨り減っていく子れいむを眺め、ウネウネと子れいむに見せ付けるように体を動かして幸せな自分をアピールしている。

「ゆばばばば!ちゃばばばばばば!ゆびゃん!ぎぎ…ががごびゃ!……………」

口を完全に磨り潰されると同時に、黒目が跳ね上がるように上下させた子れいむは、そのまま白目を剥いて固まる。
おそらく、中枢餡を削りだされて絶命したのだろう。
フックに引っかかったわずかな頭皮と、半分以上削られたリボンを残して子れいむはペーストになった。

「ゆあぁぁ…おちびちゃ…どぼじで…?」

「ゆぷぷのぷー!ごみが、ほんとうにごみになったのじぇ!わらいすぎて、しにしょーなのじぇ!ゆっぷっぷー!」

「そうね、じゃあ笑いながら死ぬと良いわ」

子れいむの残骸を見て悲しそうに涙を零す親れいむ。
そんな親れいむと子れいむの残骸を見比べて大笑いしていた子まりさは、帽子を取られて筒の中に押し込められる。

「ゆっぴぃぃぃ!まりちゃのおぼーち!すてきなおぼーちかえしゅのじぇぇぇぇぇ!!」

突然の事態に訳が分からず、帽子を返せと泣き叫ぶ子まりさ。

「あらあら?笑って死んでくれるんじゃないの?意外と普通なのね」

「ゆびゃぁぁぁぁぁぁ!!まりちゃのおぼーち!やめりょぉぉぉぉぉ!やめちぇよぉぉぉぉぉぉ!」

彼女はそう言いながら、子まりさの帽子を細かく千切って子れいむの残骸の上に捨てていく。
子まりさは筒の中で体を必死に伸ばしながらも、バラバラになっていく帽子を見続けた。

「ゆえぇ…おぼーち…これじゃゆっくちできにゃいのじぇ…ゆっく…ひっく………ゆんぶぅぅぅ?!つぶれりゅぅぅぅ?!なにごりぇぇぇぇぇ?!」

「さっき見てたでしょ?あなたもゴミみたいに死んでいくのよ?うれしい?」

「やじゃやじゃぁぁぁぁぁ!!まりちゃ、もっとゆっくちしちゃい!もっとゆっくちしゅるのじぇぇぇぇぇぇ!しにちゃくないのじぇぇぇぇぇ!!」

筒に蓋をされると、先ほどの子れいむの様に底の方に押しつぶされて顔を歪める子まりさ。
ゆんゆんと泣いて必死に命乞いをするが、筒は無常にも回され始める。

「ゆびゃびゃびゃぁぁぁぁ?!ざりゅざりゅいちゃいぃぃぃぃぃぃ!いやじゃぁぁぁぁぁ!まりちゃごみじゃないぃぃぃ!しにちゃくにゃいぃぃぃぃ!!」

「ゆぷぷ!いいきみだよ!いままでれいむたちを、ばかにしたむくいだよ!ゆっくりこうかして、みじめにしんでいってね!」

子まりさもあっという間に摩り下ろされ、体がどんどん小さくなっていく。
そんな子まりさを、形勢逆転した親れいむが涙目で睨みながら罵った。
痛みからか、悔しいからか、子まりさは歯を食いしばり、両目を見開いて叫び続ける。

「じゃばぁぁぁぁ!!じょばぁぁぁぁ?!びゃびん!!………」

「ゆふん!つかえないくそちびだったよ!ごみみたいにしんでくれて、せいせいしたよ!ゆっくりできたよ!!」

そして子れいむと同じように、口を完全に磨り潰されると同時に白目を剥いて息絶える。
親れいむはそんな子まりさを鼻で笑うように、ゆふんと唸ると満足そうに踏ん反り返った。

「さっきからゴミゴミって言ってるけど、ゴミにはならないわよ?次に飼うゆっくりの餌、ご飯になるから安心してね。あとそこで気絶してるのも、ちゃんと磨り潰すから安心してね」

「ゆゆぅ?なにいってるの?くそちびは、あのまりさだけだよ!くそまりさのごみおちびはしんだんだよ!おいわいにあまあまもってきてね!!」

「当然貴方もご飯になるのよ?まあ、貴方は大きすぎるから私が直接解体してあげるからね。ゆっくりってリサイクルの出来るペットだから本当に便利よね」

「ゆゆ?………ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」

彼女は親れいむに優しく語り掛けると、親れいむの皮を手で剥いでいった。
親れいむは抵抗する事が出来ず、ただ叫び声を上げるだけだった。

それから数日後。
公園に現れた彼女は、増え始めた野良ゆっくり達に飼いゆっくりのオーディションの話をして回った。
話を聞いた野良達は、目を輝かせて喜んだ。

そしてオーディション当日。
何も知らない野良達が、期待に満ちた顔で公園の噴水前に集まった。

「さあ、飼いゆっくりオーディション始めるわよ!準備はいい?ゆっくりしていってね!」

『ゆっくりしていってね!!』

徒然あき