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前anko2451 ゆっくり退化していってね!7 「まりちゃでちゅっきりちてくだしゃい!」 建物の陰で、一匹の薄汚い赤まりさが必死の形相で叫んでいた。 「おねがいでしゅ!まりちゃでちゅっきりちてくだしゃい!ちゅっきりちてゆっくちちてくだしゃい!ちゅっきりできましゅ!」 餌を恵んでくれるよう頼んでいるのではない。 ダンスやお歌でゆっくりできるとアピールしているのでもない。 なんとこの赤まりさは、自分からすっきりするように誘っているのだ。 集団自殺以後、こうしたどの群れにも属さないはぐれ売ゆん婦が多く見られるようになってきた。 「まりちゃはどんなことでもしましゅ!まみゅまみゅでもあにゃるでもしゅきなほうをちゅかってくだしゃい!おとくでしゅ!」 赤まりさはすっきりと引き替えにご飯が欲しいとわめき立てる。 汚く、浅ましく、卑しく、見るだけで気分が悪くなるゴミ饅頭が道ばたで騒音を発している。 ぼろぼろの帽子と外見を見れば、誰だろうとこいつが孤児だと察するに違いない。 「だれか……だりぇか………だりぇかまりちゃでちゅっきりちてくだしゃい!くだしゃい!くだしゃい!ごはんしゃんくだしゃい!おにぇがいでしゅ!」 赤まりさは、橋から蹴落とされて溺れ死んだまりさとれいむの生き残った子どもだった。 あれから二匹は親の後を追って飛び込まず、恐くてその場から逃げ出した。 赤ゆっくりの視力と聴力では考えられないことに、赤まりさと赤れいむは両親の死を目と耳に焼き付けた。 どんな時でもゆっくりしていて、みんなを温かく包み込んでくれた優しいお母さん。 家族のためにいつもご飯を探してきてくれた、頼りになるゆっくりしたお父さん。 二匹が水の中で、たくさんのゆっくりたちと一緒にもがきながら沈んでいくのを見届けた。 苦しんで苦しんで、あんなに苦しむ必要がどこにあるのかと聞きたいくらい苦しみぬいてから、お父さんとお母さんは溺れ死んだ。 最愛の両親が、自分たちを残してこの世からいなくなるのを理解してしまった。 「やじゃぁぁああ!やじゃぁ!やじゃやじゃやじゃやじゃぁああああああ!あああああああ!あああああああああああ!」 「ゆんやぁぁああああ!おとうしゃぁぁあん!おかあしゃぁああん!ゆんやぁ!ゆんやぁ!ゆんやあぁああ!ゆびゃあああああああ!」 想像を絶する苦悶を見せつけられた二匹は、絶叫して走り出した。 死にたくなかった。死ぬのだけは恐かった。 お父さんとお母さんのように、永遠にゆっくりするという表現とはかけ離れた死に方で息絶えるのは絶対に嫌だった。 二匹は泣きながら、なんとしてでも一緒に生きていこうと誓ったのだった。 「むーちゃ…むーちゃ……おぶぇぇぇ!ぶぼっ!ぶぼぇっ!にぎゃぃいいいいいい!にぎゃいよぉぉおおお!きもちわりゅいよおぉお!」 「むーちゃむーちゃ………えげぇぇぇ!えげぼげぇぇぇええええええ!くりゅちい!まりちゃのあんこしゃん!くりゅちいぃぃいいいいい!」 「おちびちゃんたち………にがいけどがまんだよ…………。くるしくて…いたくて……きもちわるいけど……ほんのすこしだけたべるんだよ…………」 しかし、浮き世は赤まりさと赤れいむの健気な誓いなど知ったことではないと言わんばかりに冷たかった。 激痛を生む日光に怯えて道路をさ迷っても、おいしい餌などどこにもない。 ぎりぎり致死量に達しない微量を食べる野良ゆっくりと一緒に雑草を噛んだが、あまりの苦さに二匹は口から餡子を吐いた。 「おにぇがいでしゅ!おにぇがいでしゅ!れいみゅに!ごはんしゃんくだしゃい!ちょっとでいいんでしゅ!ひとくち!ひとくちでいいんでしゅ!」 「まりちゃのおねがいでしゅ!まりちゃいいこでしゅ!とってもゆっくちちてるゆっくちでしゅ!だかりゃごはんしゃんくだしゃい!くだしゃいなのじぇ!」 「はああああ!?むれのゆっくりでもないくそがきがなにいってるのおおおおおお!ここはれいむたちのなわばりなんだよ!さっさとかえってね!」 「しつけのなってないいなかものね!かえって!みてるだけでこっちまでゆっくりできなくなるわ!にどとこないで!」 人間のガードの緩いゴミ捨て場は、既にタフな野良ゆっくりたちの群れの縄張りになっていた。 ここを警護している野良ゆっくりたちは、一匹残らず全身が傷だらけだ。 人間に虐待された傷ではない。 貴重な餌場を奪おうと、ほかの群れの野良ゆっくりたちによる襲撃を常に受けているのだ。 二匹はなおも頼もうとしたが、突如攻めてきた別の群れの野良ゆっくりたちに恐れをなして逃げ出した。 「ゆっくち……れいみゅも…なかまにいれちぇにぇ……いっしょに…にんげんしゃんに……………ごはんしゃん……………」 「まりちゃ……なんでもしゅるのじぇ……おうた………だんしゅ………いっぱい…できるのじぇ………だかりゃ……」 「ごめんにぇ……ありしゅたちで…もうこじきしゃんはいっぱいにゃの…………」 「これいじょうゆっくちがふえたりゃ……ごはんしゃんがなくなりゅって………おとうしゃんがいってたよ………だみぇだよ……」 「ありしゅ…れいみゅ……いこうにぇ……にんげんしゃんに…………おにぇがいしちぇ……ごはんしゃん……もらおうにぇ……」 赤まりさと赤れいむの頼みを、飢えて頬のこけた赤ゆっくりたちは拒絶する。 乞食も満員だった。 ただ人間に慈悲を請うだけの物乞いだが、ゆっくりが安全かつ効率よく乞食をできる場所は限られている。 そこはすべて他の群れの赤ゆっくりによって占拠され、赤れいむと赤まりさを受け入れる余裕はなかった。 ただでさえ少ない人間からの施しは群れのみんなに分配され、一匹の腹を満たすことは到底できない。 そんな状況下で、孤児となった二匹を受け入れる野良ゆっくりがいるはずがない。 飼いゆっくりから餌を恵んでもらう方法は、もはや娼ゆしかない。 運の悪いことに、二匹は売ゆんで稼ぐ群れに出会うことがなかった。 路地裏ですっきりしている飼いゆっくりが、相手の野良ゆっくりにゆっくりフードを払った光景を目にしただけだ。 群れに所属することなく、勝手に売ゆんをして日銭を稼ぐはぐれ売ゆん婦に二匹は堕ちた。 一日ずつ交代で二匹は仕事をする。 朝から晩まで叫び続け、薄汚い赤ゆっくりですっきりする物好きな飼いゆっくりの注意を引こうとする。 赤まりさと赤れいむの姿はサディスティックな欲望をかき立てられるらしく、いやらしい笑みを浮かべた飼いゆっくりが時たま客となった。 二匹のまむまむはほぼ開いたままであり、普段隠れているはずのあにゃるもはっきりと分かる程広げられている。 体格にあまりにも不釣り合いなぺにぺにを受け入れた末路だ。 すっきりさせられれば、嫌でもにんっしんっしてしまう。 赤ゆっくりの体で妊娠すれば、餡子の栄養をすべて実ゆっくりに吸い取られて死ぬことは確実だ。 どう足掻いても、赤まりさと赤れいむに子どもを育てる余裕はない。 実ゆっくりは壁に額を擦りつけて茎を折り、胎生ゆっくりはやはり壁に腹を何度もぶつけて体内で殺す。 汚らわしいゆっくり殺しの罪を、二匹は日常的に行っているのだ。 これが、ゆっくりたちの間で売ゆん婦が嫌われる最大の理由である。 「れいみゅ………れいみゅぅぅぅぅ………まりちゃ…がんばっちぇごはんしゃんをもらうのじぇ……いっちょに…ゆっくちするのじぇ………」 毎日ろくに食事にありつけない二匹の体は、いまだに赤ゆっくりのままである。 それでも、二匹は売ゆん以外で生活できない。 だが、世間はそうやって二匹が生きていくことさえ許さないようだった。 昨日のことだ。 「ゆっ…ぐ…ぢ………ただ…いま…だ…よ…………まり…しゃ………れい…みゅ……かえっちぇ……きぢゃ…………よぉ…………」 「れ…れい…みゅ………?れい…みゅ?……れいみゅぅううううううううううううう!?れいみゅ!れいみゅぅ!ひどいのじぇ!いちゃいいちゃいなのじぇぇぇぇ!!」 「……ゆっぐ………いちゃ…い……よぉ…………いちゃい…いぢゃいぃ………よぉ……おみぇみぇ…あちゃま……まみゅまみゅ…あにゃる……ぜんぶ…いぢゃいぃぃぃ…………」 帰ってきた赤れいむを見て、赤まりさは絶叫した。 一瞬誰が帰ってきたのか分からなかったほど、れいむは痛めつけられていたのだ。 全身が傷だらけで、特に商売道具のまむまむとあにゃるは執拗に傷つけられ小石を詰め込まれていた。 赤まりさの所まで帰ってこられたのが不思議なくらいだ。 赤まりさは誰がそんなひどいことをしたのかと問いただしたが、もはや赤れいむは全身の激痛で朦朧としていて答えは聞けなかった。 今も痛みに泣きながら帰りを待つ赤れいむのためにも、赤まりさは客を取らなければならない。 「かいゆっくちしゃん!まりちゃでちゅっきりちましぇんか!まりちゃでちゅっきりできましゅ!ちゅっきりちたいでしゅよにぇ!」 叫ぶ度に赤まりさの目から涙がこぼれる。 あまりにも堕落した自分の境遇が耐えられない。 すっきりという神聖なゆっくりできる行為を、商売にしている自分はとてつもなくゆっくりしていないとよく分かる。 「おそらのうえのゆっくりぷれいす」にいる両親が悲しんでいるだろうと思うと、赤まりさの餡子は悔しさと悲しさでいっぱいになる。 両親がそろっていて、姉まりさと姉れいむがいて、幸せだった頃のことが夢のようだ。 あの時は毎日が楽しくて、とてもゆっくりした日々が過ぎていった。 辛いことや悲しいこともちょっとだけあったけど、家族そろってがんばれば簡単に切り抜けられた。 そのご褒美に、たくさんのゆっくりが赤まりさたちには与えられていたはずだった。 楽しく両親と一緒にピクニック。 おいしい取れたての草を食べて、デザートにちょっとだけお菓子もある。 れいむはお歌を歌い、まりさはダンスを披露する。 近所のゆっくりや飼いゆっくりと一緒に談笑し、「これからもいっしょにゆっくりしたいね!」と言ってほほ笑み合う。 そんな日々があったはずだ。 本当にあったのだろうか? 毎日繰り返されるゆっくりなどかけらもない辛い日々は、赤まりさの記憶からゆっくりできたもの、かけがえのないものを奪っていった。 今の赤まりさには、何も残っていない。 ただ今日を生きるためだけに、体を売って餌をねだる汚らしい野良ゆっくりに餡子の髄まで染まっていた。 「まりちゃはちゅっきりだいしゅきでしゅ!だれでもいいからちゅっきりちたいでしゅ!いっぱいいっぱいちゅっきりできてゆっくち~!」 「なんなの……このきもちわるいゆっくりは…………」 「すっきりがだいすきだって………おちびちゃんなのに……あたまがおかしいわ………」 「はやくいこうね………きぶんがわるくなっちゃうよ………ゆげぇ………」 道を行く飼いゆっくりたちのほとんどは、まりさの卑しい呼びかけに軽蔑の眼差しを向ける。 赤ゆっくりの癖に、大人のゆっくりにすっきりをねだるのだ。 飼いゆっくりが不気味に思って当然である。 「…………まりしゃ………ゆっくちちていってにぇ…………」 目を血走らせて客を引く赤まりさの前で、一匹の赤れいむが立ち止まった。 哀れな赤まりさの姿を見て、赤れいむは小さな眉を寄せる。 (ゆわあぁぁ………きれいな…れいみゅなのじぇ…………いいにおいがしゅるのじぇ……しゅごく……ゆっくちちてるのじぇぇぇ…………) 赤まりさはしばし自分の仕事を忘れて、その赤れいむに見入ってしまった。 飼いゆっくりなのは一目瞭然だ。 真っ赤なリボンにはほつれや染みなど一つもなく、親に舐めて綺麗にしてもらっているのがよく分かる。 栄養状態のいい、ふっくらとした頬からは、ほんのりと甘い匂いが漂ってくる。 真っ黒な髪の毛とつぶらな瞳。 何から何まで惨めな赤まりさとはかけ離れた、リッチな赤れいむが赤れいむを見ていた。 「おちびちゃん?どうしたの?なにかあったの?」 赤れいむが立ち止まったのを、側にいた親れいむが気づいた。 「おかあしゃん……このまりしゃ…どうちて……しゅっきりちたいっていってりゅの?」 赤れいむの質問で、初めて親れいむは赤まりさの存在を認めた。 じろりと成体のゆっくりににらまれ、赤まりさは「ゆぴっ!」と悲鳴を上げて縮こまる。 親れいむはしばし赤まりさを見ていたが、「孤児のまりさ」と「すっきりしたいと言っている」という語がようやく頭で結び付いたらしい。 親れいむの表情が急変した。 「おちびちゃん!そんなゆっくりにかかわっちゃだめだよ!よごれちゃうよ!きたないよ!びょうきがうつっちゃうよ!ゆっくりできなくなるよ!」 露骨な嫌悪だった。 赤まりさの顔に、親れいむの口から吐かれる唾と罵声との両方がまともに浴びせられる。 汚れる。汚い。病気がうつる。ゆっくりできなくなる。 赤まりさの心に、深い傷がざくざくと刻まれていく。 お前なんかいなくなれ。お前がいるとゆっくりできない。お前なんかゆっくりする価値がない。 赤まりさは声も出せずに、目から涙をこぼして震えた。 一言一言が、赤まりさの餡子を痛めつける。 徹底した罵倒に、赤まりさは物理的に痛めつけられているかのような反応をする。 「ゆぁ……………………わかっちゃよ…………………………」 赤れいむは悲しそうな顔で赤まりさを見ると、身を翻して跳ねていった。 赤まりさはその綺麗な後ろ姿を、涙で潤んだ目で追うことしかできない。 一緒にほっぺたをくっつけて「しゅーりしゅーり!」してみたかった。 ちょっとだけ赤れいむに自分の顔を「ぺーりょぺーりょ!」してもらいたかった。 あんなに素敵な赤れいむとそれができたら、どんなにゆっくりできただろう。 せめて、ほんの少しだけお話がしたかった。 言葉を交わして、最後に「ゆっくりしていってね!」って言って欲しかった。 できれば、辛い今の状況を分かってもらって、慰めてもらいたかった。 本音を言うなら、自分と赤れいむを家に連れて行ってもらって、一緒に飼いゆっくりになりたかった。 そうしてもらえたら、どんなにゆっくりした気持ちになれただろう。 そんな赤まりさの小さな望みは、すべてぶち壊された。 触ってもらえるはずがない。 赤まりさの外見は赤れいむとはかけ離れた、生きたうんうんのようなものなのだ。 お話しできるはずがない。 赤まりさはただの惨めな野良ゆっくりで、赤れいむは貴族の令嬢とでも言うべき飼いゆっくりなのだ。 慰めてもらえる?身の程をわきまえて欲しい。 赤まりさは、野良ゆっくりでさえ軽蔑する、すっきりを売り物にした最下層の売ゆん婦なのだ。 ましてや、売ゆん婦の分際で飼いゆっくりにしてもらいたいとは。 赤れいむの親が罵倒するのも無理はない。 ちょっとでも仏心を見せれば、ゆっくりはすぐにつけあがる。 こんなまむまむもあにゃるも開きっぱなしの吐き気がするゆっくりを家に連れて帰ったら、飼いゆっくりの方が捨てられかねない。 赤まりさは赤れいむとその親にとっては、ただの不潔な疫病神でしかないのだ。 「にどとおちびちゃんにこえをかけないでね!すっきりがだいすきなへんたいゆっくりなんか、おちびちゃんはだいきらいだよっ!いますぐしんでいいよっ!」 親れいむはまだ名残惜しそうに赤れいむを見ている赤まりさに、とどめの一言を浴びせてから背を向けた。 一方的に惚れて、赤れいむに付きまとうようになっては困る。 はっきりと近寄らないように釘を刺したのだ。 それはまだ幼い赤まりさの心に、癒しようのない傷を作るのに十分すぎるものだった。 「ゆぐっ……ゆえぇ……まりちゃだって…まりちゃだってぇ……こんにゃの…いやなのじぇ………ゆぇぇぇぇぇん……………」 二匹がいなくなると、赤まりさは泣きじゃくった。 ただひたすら、惨めで悲しかった。 ささやかな幸せさえも味わえない自分の境遇が、悔しくて仕方がなかった。 目の前でゆっくりした赤れいむを見たことと、親れいむに罵られたのがさらに惨めさを倍増させる。 泣き顔を誰かに見られるのが恥ずかしく、赤まりさは帽子の中に潜り込むかのようにして顔を隠す。 こんな無様な自分を、誰にも見られたくなかった。 できることなら、両親にいっぱい慰めてもらいたかった。 ぺーろぺーろしてすーりすーりして、あったかいほっぺたに「ゆんっ♪」とくっついていっぱい甘えたかった。 そうすれば、こんな悲しみなど簡単に吹き飛ばせたことだろう。 今の赤まりさには、慰めてもらえる相手など誰もいない。 商売を中断して帽子を涙で濡らす赤まりさの耳に、なにかが地面にぶつかる音がした。 「ゆっ…ゆぅ……ゆぐぅ…………ゆぇぇ…………?」 ありもしない鼻をすすり、赤まりさはなにかが近づいてきたのかと帽子の中から顔を出した。 甘くて食欲をそそる匂いが漂ってきた。 赤まりさのお腹が大きな音を立てて鳴った。 それまで悲しさと恥ずかしさとで忘れていた空腹が、一気に押し寄せてくる。 思えば、昨日は保存食として取っておいた、カビのびっしり生えたクッキーを半分かじっただけだ。 「ゆっっ!ごはんしゃん!ごはんしゃんなのじぇ!」 赤まりさは涙を忘れて匂いの元にぴょんぴょん跳ねて近づいた。 その茶色い固形物は、ゆっくりフードと呼ばれている。 原料は加工場で大量生産されるゆっくりであり、ゆっくりの好む甘味が量を調整されて含まれている。 あまり甘すぎると、他の食べ物を受け付けなくなってしまうからだ。 保存が利き、持ち歩きも容易で、しかもほとんどのゆっくりにとって好物となる。 この街のゆっくりにとって、ゆっくりフードは主食であると同時に通貨になりつつある。 いまだに雑草をほとんど食べられない野良ゆっくりにとって、ゆっくりフードは共通して欲しがるものなのだ。 一瞬目を輝かせてゆっくりフードに噛み付こうとした赤まりさだったが、動きが止まった。 のろのろと口を閉じ、暗い表情になる。 そこには他のゆっくりに対する怯えと、痛みに対する恐怖がはっきりと表れていた。 仕事だ。 これは前払いの料金だ。 自分はすっきりのために買われたのだ。 「ゆぅ……い、いらっしゃいましぇ……なのじぇ。まりちゃをおかいあげ……ありがとうございましゅなのじぇ…………」 下手糞な口上と共に、赤まりさは不格好におじぎをする。 目を上げた赤まりさの顔が、さらなる恐怖で引きつった。 そこにいるのは成体のありすだった。 髪には立派な金バッジがついている。 これまでの商売で、赤まりさは嫌と言うほど思い知らされた。 ありすは性欲がゆっくりの中で一番強い。 大事なまむまむは、ありすのぺにぺにでめちゃくちゃにされるだろう。 もしかしたら、あにゃるにもぺにぺにを突っ込まれて裂かれるかもしれない。 今日も、激しい痛みと不快感に耐えなくてはいけないのだ。 命の危機さえ感じても、赤まりさはありすを拒否できない。 「ま…まみゅまみゅ……でしゅか……?しょれとも……あにゃる……でしゅか?」 赤まりさははがたがた震えつつも、仰向けにひっくり返った ありすに、自分のまむまむとあにゃるを隅から隅まで見せているのだ。 自分のしていることの惨めさと恥ずかしさで、赤まりさの目に涙が浮かぶ。 しかしありすは、差し出されたまむまむもあにゃるも手を出さなかった。 「おちびちゃん。ありすはどちらもいらないわ。これはあなたにあげるわよ」 「ゆぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」 「かわいそうに。おとうさんもおかあさんもいないのね。これをたべてすこしはゆっくりしなさい」 赤まりさは耳を疑った。 こんなにおいしいものを、自分にくれるとありすは言ったのか。 無料で、何も支払わずに、美味しくて甘いゆっくりフードを食べていいのか。 痛い思いも気持ち悪い思いも、恥ずかしい思いもしなくて今日のご飯が手に入るのか。 みるみるうちに赤まりさの両目に涙が溢れ出し、それは嗚咽と一緒になって流れ出した。 「あ…あ……あああああ……ありがとうごじゃいましゅうぅぅぅううううううう!ゆっくちできましゅ!ゆっくち!ゆっくち!ゆっくちできりゅのじぇぇぇぇ!」 わんわん泣く赤まりさ。 その号泣は今までのような絶望にうちひしがれたものではなく、歓喜と感謝で満ちたうれし泣きになっていた。 まるで両親と再会できたかのように赤まりさは泣く。 久しぶりに、赤まりさの餡子にゆっくりが戻ってきた。 一通り赤まりさが泣き終えると、ようやく金バッジの飼いありすは口を開いた。 口調もゆっくりとしていて、いかにありすがゆっくりした環境にいるのかを示している。 「ありすはね……あしたひっこすのよ。おねえさんといっしょに、しらないまちにいくわ」 それまでゆっくりフードとありすとを見比べて、にこにこしていた赤まりさの顔が曇る。 浅ましい話だが、赤まりさはこれからもありすがゆっくりフードを定期的にくれないだろうかと期待していたのだ。 もしそうしてくれるなら、もう売ゆんのような商売をしないで済む。 赤れいむと一緒に、食べていく心配もしないでゆっくりできる。 もしかしたら、うまくありすに口利きを頼めば飼いゆっくりにしてもらえるかもしれない。 たった数分だけの邂逅で、赤まりさの思考はここまで飛躍していたから恐ろしい。 ちょっとした慈悲でゆっくりフードを恵んでもらえたのに、いつの間にか飼いゆっくりになれるのではと期待しているのだ。 赤まりさの心境を調子に乗っていると断じるのは簡単だが、それほどまでに赤まりさはゆっくりからかけ離れた生活を強いられていたのだ。 しかし、やはり赤まりさの思考は調子に乗っていたと言えるだろう。 「ゆぅ……おねえしゃん……もうあえないのじぇ…………?」 「そうよ。このまちももうみおさめ。だから、おせわになったのらのゆっくりたちにおわかれをいってあるいてたのよ」 ありすは地べたにはいつくばる赤まりさから視線を移し、街の雑踏を見つめた。 この街は希有な街だった。 人とゆっくり、飼いゆっくりと野良ゆっくりが共存したゆっくりした場所だったはずだ。 今この街を訪れたゆっくりにその話をしても、到底信じないことだろう。 貴族のように振る舞う飼いゆっくりと、飼いゆっくりを顧客に何とかしてゆっくりフードを手に入れようと画策する野良ゆっくり。 集団自殺を生き残った野良ゆっくりは、驚くべき早さで人間を真似た経済活動を行いつつある。 かつては仲良くゆっくりするついでに、お礼としてゆっくりフードは与えられていた。 今では、飼いゆっくりと野良ゆっくりはサービスを受ける側と与える側とに二分された。 一度は市民の間でゆっくりを駆除する話も持ち上がったが、結局集団自殺によってうやむやになった。 ゆっくりの数が激減したことだし、わざわざ予算を割いて野良を駆除する必要もないだろう。 そう判断した人々は、ゆっくりに対する態度を以前と変えることはなかった。 ありすの目は、かつてのゆっくりした街を懐かしむかのようだった。 「それじゃあ、ありすはもういくわね。さようなら、おちびちゃん」 ありすは舌でゆっくりフードの塊を赤まりさに押しやり、きびすを返した。 道路の端を歩き、きちんと人間の歩行の邪魔にならないようにしている。 「さようなら……なのじぇ。おねえしゃん……ゆっくちちていってにぇ……」 赤まりさは感謝と羨望の混じった視線で、ゆっくりした金バッジのありすを見送った。 あのありすと自分や傷ついた赤れいむが、同じゆっくりだとはとても思えなかった。 別世界にいるゆっくりの、別世界の生活を見せつけられた気分だった。 「れいみゅ……いっぱい……きょうはおなかいっぱい……ごはんしゃんたべられるのじぇ………」 しかし、赤まりさは惨めさに押し潰されることはなかった。 目の前には、ありすが振る舞ってくれたゆっくりフードがいっぱいある。 約一週間の稼ぎに匹敵する量だ。 これだけあれば、しばらくの間痛みの伴う売ゆんをしないでもゆっくりできる。 傷ついた赤れいむも、いっぱい食べてゆっくりすれば傷も治ることだろう。 ほんのわずかな幸福を、赤まりさは味わっていた。 ささやかでも、ここにはゆっくりフードという確かな形を持った幸せがある。 それは赤まりさのものだ。ありすがくれた、赤まりさたちだけの幸福だ。 赤まりさが、小さな帽子にいっぱいのゆっくりフードを入れようとしたその時。 「おい、そこのちびゆっくり」 「だれにことわって、ばいゆんをしているのかしら」 「ちゃんと、おさにほうこくしたよね?そうだよね?」 赤まりさのささやかな幸福は、あっさりと踏みにじられた。 並んでいるのはまりさ、ぱちゅりー、れいむ。 人間の目から見ればただの薄汚れた野良ゆっくりだが、赤まりさからすればそうではない。 三匹のゆっくりの全身から放たれる、獰猛な気配。 「ゆっ!ゆあっ!まりっ!まりちゃ!まりちゃは!ゆっくち!まりちゃ!なのじぇ!なのじぇええ!ゆんやああっ!ゆぴゃっ!ゆっぴゃぁああああ!」 道を歩いていて、刑務所帰りのヤクザの三人組に因縁を付けられたようなものだ。 これが恐くないはずがない。 赤まりさはわけの分からないことを叫び、下半身からしーしーを漏らしてその場を跳ね回った。 「そんなことをきいてるんじゃないのぜ」 「むきゅ。こんらんしているようね」 両目をぐるぐる回してあらぬ方向を見て叫ぶ赤まりさは、発狂したかのように見える。 単に、あまりの恐ろしさにどうしていいか分からないで混乱しているだけだ。 まりさとぱちゅりーは、無様な赤まりさを見てため息をついた。 気が短かったのはれいむだった。 「ちょっとうるさいよ。しずかにしようね!」 「びゅぎぇぇっっっ!」 恐慌状態の赤まりさの叫び声としーしーが気に食わなかったれいむは、もみあげで赤まりさの横っ面をひっぱたいた。 縄張り争いで鍛えられたれいむのびんたは、そこらの野良ゆっくりのびんたとはワケが違う。 ひとたまりもなく赤まりさは吹っ飛び、壁に頭をぶつける。 「い゙ぃ゙っ゙!いぢゃいぃっ!いぢゃいのじぇぇぇぇぇぇ!」 地面に落下した赤まりさは、顔中を口にしてわんわんと泣き出した。 突然の暴力に、赤まりさのデリケートな心は耐えられない。 そのかん高い泣き声がいらついたようだ。 「ゆぁん!?だからなんだっていうんだぜ!おもてにでるのぜ?」 一歩前に出たまりさが、声音を低くして恫喝する。 「ゆぴぃぃいいい!」 傷だらけの顔を突きつけられ、あっという間に赤まりさは泣き止んだ。 あまりの恐さに、ひきつけを起こしたかのように硬直する。 歯をむき出して固まった上半身とは裏腹に、ちょろちょろとしーしーがまだ漏れていて地面を濡らした。 これでようやく振り出しに戻った。 一呼吸置いて、三匹の中で一番温厚そうなぱちゅりーが口火を切る。 「はなしをもとにもどすわ。まりさ、あなたうちのおさをしってる?」 ぱちゅりーの言葉に、すぐに苛立たしげなれいむが食いついた。 「おさのれいむさまをしらないわけないよね!そうだよね!」 「ちゃんとれいむさまにあって、ばいゆんのほうこくはしているのぜ?」 有無を言わさぬ口調に、赤まりさはさらに怯えた。 何よりも恐ろしいことに、赤まりさには三匹の野良ゆっくりが何を言っているのかまるで分からない。 長。れいむ様。 どちらも初耳だ。 「しらなかったら、ただじゃおかないのぜ。かってにうちのなわばりでしょうばいして、はいそうですかとみのがせるわけないんだぜ」 「むきゅう!おちびちゃんだからってゆるせないわね。これはせいっさいっがひつようかしら?」 「どうなのかな?はやくこたえてね!れいむたちはいそがしいんだよ!」 赤まりさと赤れいむはどの群れにも属していない。 両親のいない孤児ゆっくりなど何の利益も上げないと、どこの群れでも判断されたからだ。 だから二匹は、自分たちだけで売ゆんをしていたもぐりだ。 この三匹にとっては、飼いゆっくりからの貴重なゆっくりフードの売り上げをくすねる生意気な餓鬼でしかない。 「ゆっ……ゆわぁ……ゆわぁあぁ………ゆあぁあああぁぁああぁぁ………」 三匹の野良ゆっくりの脅しに怯える赤まりさ。 下半身からはいまだにしーしーが漏れ、赤まりさの足元に小さな水たまりを作っている。 さっきまでの幸福は消し飛び、恐怖しかない。 答えようによってはただじゃおかない。絶対に二度とゆっくりさせない。 その迫力に赤まりさはがたがた震えつつも、ぎゅっと目を閉じた。 瞼の裏に、ぼろぼろになって帰りを待つ赤れいむの姿が浮かんで消えた。 (れいみゅ……れいみゅ!れいみゅぅぅぅうう!まりちゃがんばりゅのじぇ!じぇったい!じぇったい!ゆっくちふーどをもってかえりゅのじぇ!) 赤まりさは心の中で誓った。 何としてでも、ゆっくりフードを持っていかれるわけにはいかない。 これは赤まりさと赤れいむのものだ。 絶対に、これを守り抜いてみせる。 赤まりさは固い決意を胸に目を見開き叫んだ。 「し……し……しってるのじぇええええええええ!ほうこくちたのじぇぇぇええええ!」 赤まりさは大嘘をついた。 れいむ様なんて長のことは知らない。売ゆんの報告もしてないし、代金の一部を収めてもいない。 それでも、嘘をついてごまかしてみせる。 一世一代の賭けに出たのだ。 下半身を引き締めて何とかしーしーを止め、赤まりさは潤む目で野良ゆっくりたちを見返した。 「ゆあっ!そうだったのぜ。だったらまりさたちのおなかまなのぜ!おちび、おどかしてわるかったのぜ」 「むきゅー。ごめんなさいね。おなじむれならぱちぇとまりさはかぞくみたいなものよ」 「うたがってわるかったよ。ゆっくりしてなくてごめんねっ!なぐったりしてれいむはゆっくりしてなかったよ!」 赤まりさの嘘を、三匹は信じてくれたようだ。 ころっと態度が180度変わる。 たちまち三匹は、まるで旧知の友だちのように赤まりさに話しかける。 まりさとぱちゅりーはすりすりし、れいむに至っては謝ってからもみあげで赤まりさの帽子を撫でることまでする。 「べ、べつに……いいのじぇ…………。まりちゃ……へいきなのじぇ…………」 「ゆっゆー!おちびはちいさいのにどきょうがあるのぜ。まりさきにいったのぜ!」 「まりさ!またこぶんをふやすつもりなの?ちょっとふやしすぎよ!」 「いいのぜいいのぜ。まもるこぶんがいればまりさはもっとゆっくりできるんだぜ!」 「まりさはゆっくりしてるよ!さすがだね。れいむもがんばってこぶんをふやすよ!」 「ゆぅ………………」 三匹の野良ゆっくりは、すっかり警戒を解いたように見える。 赤まりさはほんの少しだけ、三匹が羨ましかった。 自分たちは惨めに地べたをはいずり回り、その日の食事と引き替えに無理矢理すっきりさせられる。 でも、この三匹はゆっくりしている。 なかよしのように見えるし、何よりとっても強そうだ。 赤まりさは自分の無力が恨めしかった。 無力、ということで気づいた。 家に帰らなくてはいけない。 今のうちに、まだ野良ゆっくりたちがゆっくりしている間に、ここから逃げなくてはいけない。 それに気づくと、赤まりさの心に恐怖が蘇った。 三匹の横をすり抜けて帰るのが、とてつもなく恐ろしい。 「もっ、もっ、もう、いいのじぇ?いいの……じぇ?ま、まりちゃ、もう、おうち!おうちかえりゅ!かえりゅのじぇ!」 大あわてでゆっくりフードをかき集め、何度もこぼしながらも帽子に収める。 三匹の視線が自分に向けられていることが分かり、赤まりさは饅頭皮にじっとりと甘い冷や汗をかく。 かちかち歯を鳴らして赤まりさは顔を上げると、三匹がじっとしているのをいいことにダッシュで脇をすり抜けた。 「ま、まりっ!まりちゃは、さ、さ、さよならなのじぇ!ゆっくち、ちていってにぇ!お、おうちかえりゅのじぇぇ!」 やけくそに叫んでまりさとすれ違おうとした時だった。 「ちょっとまつのぜ、おちび!」 「ゆぴっ!」 有無を言わさぬ語調に、赤まりさは硬直した。 まりさがこちらを見ている。 そのゆっくりしていない目と、赤まりさの目があった。 「べつにたいしたようじじゃないんだぜ。ただ、ひとつききたいことがあるんだぜ」 ずり、ずり、と隣のぱちゅりーとれいむが動いた。 巧みな動きで、赤まりさの逃走経路を塞ぐ。 自然と、赤まりさは壁を背にした形を取らされた。 最初の詰問の時と同じ配置になる。 「むきゅきゅ。これくらい、おなじむれのゆっくりならとうぜんしっていることよ」 「ひとつきくけど、れいむさまのおしえてくれたあいことば、いってみてね!」 合い言葉。 赤まりさの目の前が真っ白になった。 知らない。そんなこと知るわけがない。 「かんたんなんだぜ。おちびみたいなあかゆっくりでもすぐにおぼえられたんだぜ」 「そうよ。しっかりといのちがけでおぼえたから、わすれるわけないわ」 「あいことばがいえないはずないよね。れいむさまのむれのゆっくりなんだから。そうだよね!?」 忘れた、とは言わせない三匹の連携。 忘れるわけがない、と先んじて言われてしまえば「わすれちゃったのじぇ」と言い逃れできない。 たとえそう言っても、それは知らないことと同じだ。 「ゆぁぁ……ゆぁぁ…………ゆぁあああああああああああ!!」 今度こそ、赤まりさはどうしようもなかった。 知らないものは知らない。 どう足掻いても、群れの合い言葉とおぼしき言葉は赤まりさの餡子の中にはなかった。 謝らなくてはいけない。 勝手に商売したこと。 三匹を騙したこと。 その両方を、赤まりさは謝罪しなくてはいけない。 「ごめんなしゃい!ごめんなぢゃい!ごめんなぢゃぁぁああああああい!うそでしゅ!まりちゃうそついてまちた!ぜんぶうそでしゅぅううう! しりましぇん!れいみゅしゃましりまぢぇん!あいことばしりましぇん!ほうこくちてましぇん!かってにおしごとちてまちた! ごめんなぢゃい!ごめんなぢゃいなのじぇ!ごめんなぢゃいなのじぇえええええ!まりちゃしらなかったんでしゅ!しらなかったのじぇええええ!」 赤まりさは恐怖で滝のように涙を流しながら、顔を地面に擦りつけて土下座した。 土下座は、両親が健在の頃何度もした。 道行く人間にご飯をもらうために、プライドをすべて捨てて必死にすがるための方法。 赤まりさはそれとまったく同じようにして、三匹の野良ゆっくりに謝った。 「やれやれなんだぜ。そんなにあやまらなくてもいいんだぜ」 「そうよ。まちがいはだれにでもあるんだから。きにしなくていいわ」 「だいじょうぶだよ!れいむたちはおこってないからね!ゆっくりしていいよ」 懸命の土下座と謝罪の言葉がうまくいったのか。 罵声が聞こえてくるものとばかり思っていた赤まりさは、意外な言葉を聞いた。 謝らなくてもいい。気にしなくていい。ゆっくりしていい。 本当だろうか。 何て優しいゆっくりたちなのだろう。 「ゆぐっ……ゆぐえぇ…………ごめんなしゃい…ごめんなしゃいなのじぇ…………」 ぐずりながら顔を上げる赤まりさ。 その顔が引きつった。 ちゅっちゅをする時くらいに、れいむが顔を近づけていたのだ。 その顔はまったくゆっくりしていない。 れいむの目は、赤まりさに対する怒りで燃えていた。 赤まりさは悟った。 自分は、絶対にしてはいけないことをしてしまったのだ。 それも二つも。 勝手に、知らない群れの縄張りで商売をしたこと。 その群れのゆっくりを騙して、その場から逃げようとしたこと。 これから自分は制裁されるのだ。 ゆっくりできないことをした悪いゆっくりとして、いっぱい痛いことをされるのだ。 赤まりさの目から、ぽろりと大粒の涙がこぼれた。 「なんていうとおもってたの?れいむさまをなめきったこのうすぎたないねずみさんのうんうんふぜいがなまいきなんだよ」 れいむはもみあげを振り下ろした。 赤まりさは顔から地面に叩きつけられる。 「ぴぃっっぎぃぃぃ…………!」 それは、凄惨な制裁の開幕を告げるのろしだった。 次anko2602 ゆっくり退化していってね!9 #pcomment(./comment,reply)