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ザクッ! 固い地面に鍬が突き刺さる。 ……ザクッ! 地面があまりにも固いせいか、渾身の力で鍬を振り下ろしてもあまり地面に鍬が刺さらない。 しかし男は諦めずに鍬を振り上げる。 全身汗だくになりながら。ただ黙々と……男は不毛の大地を耕し続ける。 そして、そんな男の姿を遠くからにやけながら見ている者達がいた。 「ゆぷぷぷっ!みてみてまりさ!きょうもあのじじいはばかなことをしているよ!」 「まったくばかのやることはりかいできないのぜ!あんなことしたっておやさいさんがはえてくるわけないのぜ!」 「ばーきゃばーきゃ!じじいはゆっくちちてないのじぇ~~~♪」 「すこしはれいみゅをみならっちぇゆっくちすればいいにょにぇえ!」 「おちびちゃんたち!あんなゆっくりしてないじじいみたいになったらだめだよ!」 「「ゆっくちりきゃいちたよ!」」 この男は少し前まで都会でサラリーマンをしていた。 だが田舎の両親が年老いて他界した為、遺産としていくばくかの土地を相続する。 その土地とは山の麓にある荒地であった。 昔はその土地を使って両親が農業をしていたのであるが、 親が年老いて農作業ができなくなってからはずっとほったらかしにされていた為、荒れ放題になっていたのだ。 男は自分なりに考えてやがて決断した。サラリーマンを辞めてこの土地で農家を始めようと。 周囲が止めるのも聞かずに会社に辞表を叩きつけるとさっさと生まれ故郷の田舎へと帰ってきた。 さて農業を始めるには色々な準備をしなければならないものだが…… 男はまず不要のゴタゴタを避ける為に根回しに向かうことにした。 根回しする相手は、男の土地のすぐそばの山に住む野性ゆっくりの群れである。 「……さんぼんのすぎさんがたっている、やまのにしがわのとちさん?」 「むきゅっぱちゅはしってるわ!くささんもはえないあれちさんで、むれのゆっくりはだれもいかないばしょよ!」 「ああ、あのじめんさんがひびわれてるいなかものなばしょね……」 「かりにいってもなにもとれないから、まりさはほとんどいったことないのぜ!」 男は近くの山に生息しているドスまりさの群れへと赴いた。 この群れは麓の村と協定を結んでいて、そこそこ身のほどをわきまえた連中で構成されている。 ゲス気質のゆっくりもかなりいるが人間の村へとちょっかいを出そうというバカだけはいなかった。 身のほどをわきまえたゲスほどよく眠るというわけだ。 「で、そのばしょがどうしたっていうの?にんげんさんはゆっくりどすにおしえてね!」 「簡単な話だ。今度俺は三本の杉の木がたっている土地に畑……ゆっくりプレイスをを作ろうと思っている そこで俺はいろいろな野菜を栽培するつもりだ」 「ゆっ!おやさいさん!?」 「俺の土地とお前らの群れのテリトリーは比較的近い場所にあるからな。村との協定のこともあるし一言断わりにきた」 「あのばしょにおやさいさんを……はやすの?にんげんさんが……?」 「ああ」 大真面目に頷く男にドスを始め群れのゆっくりたちはみんな唖然とした顔をしていた。 だがやがて…… 「……ぷっ」 「ぷっ………ぷぷぷぷぷっ………!」 「「「「「「「「「「げらげらげらげらげらげらげらげらげらっ!!」」」」」」」」」」 「ば、ば、ばかなのぜぇぇぇっ!あんなかたいつちさんから、おやさいさんがはえてくるわけないのぜぇぇぇぇっ!」 「や、やめなさいよまりさ……そんなにわらっちゃにんげんさんにし、しつれ……ぷ、ぷぷぷぷっ!」 「おやさいさんっていうのはね!なにもしなくてもかってにはえてくるものなんだよぉぉぉっ!?」 「しょんにゃのおちびちゃんのまりちゃだってしっちぇるのじぇ!にんげんしゃんはばきゃなのじぇぇぇぇっ!」 「でもねー!あのあれちさんは、おやさいがかってにはえてくるゆっくりぷれいすなんかじゃないんだよー!」 「ぱちゅのおかあさんも、そのまたおかあさんもあのばしょでおやさいがかってにはえたことはないっていってたわ!」 「そんなこともしらないだなんて、にんげんさんはほんとうにゆっくりしてないみょん!」 「「「「「「「「「「ゆひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!」」」」」」」」」」 荒れ地で野菜を育てるという(ゆっくりにとっては)荒唐無稽な話に大爆笑する群れのゆっくり達。 よほどおかしかったのかドスや参謀ぱちぇりーまでもが必死に笑いをこらえていた。 だが男は笑われても不機嫌になるわけでもなく黙って受け流している。 「……で、ドス返答は?」 「ゆっ、ゆぷぷぷぷっ……!ゆっ……な、なに?」 「俺の要求のことだ。お前らに分かりやすいように言うとだな…… 俺は山の西側の麓にある三本杉が立っている土地で、おうち宣言して畑を作るから群れのゆっくりは畑に立ち入るな もし無断で入ったら、おうちを奪うゲスとして駆除をするがそれでいいのか?ってことだ」 「い、いいもなにも……あんなばしょにおやさいなんてかってにはえるわけがないでしょぉ~~~~っ!?」 「たのまれたってれいむはあんなゆっくりできないばしょへはいかないよ!げらげらげら!」 「あれほうだいのあれちさんなんか、いくらでもにんげんさんがすきにすればいいんだねー!」 「今のお前らの発言が群れの総意か?それでいいんだなドス」 「いいよ!あんなゆっくりできないところ、にんげんさんがすきにすればいいよ!どすはきょうみないよ!」 「今の発言は全部レコーダーに録音したし、今の群れの様子はハンディカムで撮影した。 後日そんなこと言ってないなどとしらばっくれても証拠があるから反故にすることはできんぞ」 「いちいちそんなことしなくてもどすはやくそくっをやぶったりしないよ!」 「そうか。その言葉忘れるな」 そう言うと男は群れのゆっくり達に背を向けて山を降り始めた。 よほどツボにはまったのか、男の背後ではいまだに群れのゆっくりたちが大爆笑していたのだった。 「せいぜいゆっくりできる、おいし~~~いおやさいさんをはやしてねぇぇ~~♪」 「でもはえるわけないけどねぇー!」 「おやさいさんはゆっくりしているまりさたちのためにかってにはえてくるんだぜ!」 「あんなくさもはえないいなかものなつちさんに、おやさいさんなんてはえるわけないのにね!」 「じょうしきっをしらないにんげんは、おおっおろかおろか♪だね!」 「ほんとにゆっくりしてないね!」 「というかばかだね!」 「「「「「「「「「「げらげらげらげらげらげらっ!」」」」」」」」」」 それからというものの男は毎日汗みどろになりながら鍬を振り続けた。 固い地面と来る日も来る日も格闘する日々。 普通の人間ならば先の見えない仕事に嫌になって投げ出すほどの重労働だ。 だがこの男は執念がありそして情熱があった。だからただ黙々と鍬を振り続けた……ただ黙々と。 「ゆぷぷっ!みるがいいのぜ!あのじじい、またむだなことをしてやがるのぜ!」 「まったくゆっくりしてない、いなかものね!あんなかたいじめんさんをどれだけほっても、 おやさいさんなんてぜったいにはえてくるはずがないのにね!」 「れいむをみならって、もっとゆっくりすればいいのにね!」 「ほんとゆっくりしてないにんげんさんなんだねー!ばかなんだねー!わかるよー!」 群れに交渉に行った日から群れのゆっくり達がこうして毎日、男の様子を見にくるようになった。 山から遠巻きに見ているだけなので協定違反にはならないし、特に男の邪魔になるわけでもない。 群れのゆっくり達がなぜ男の様子を見に来るかというと上記のセリフのとおりバカにする為だ。 ゆっくりにとって男が仕事する姿は単なる徒労にしか見えなかった。 ゆっくりできない意味不明な労働に夢中になっているゆっくりしていない人間。ゆっくりが見下すには充分だと言えよう。 狩りの合間にここに来て男をバカにしてストレスを解消する事がいつしか群れのゆっくり達の日課となっていった。 そして時にはドスや参謀ぱちぇりーもやってきて、 男を何か可哀想なものでも見るかのような哀れみの目で見ることもあった。 「むきゅ……にんげんさんはあたまがかわいそうなのね……おやさいさんはゆっくりしているやわらかいじめんさんから ゆっくりをゆっくりさせるために、かってにはえてくるものなのに……それがわからないなんてね」 「しょうがないよぱちぇりー。にんげんさんはしょせんちからがつよいだけであたまはわるいやばんないきものだもの、 よのなかのじょうしきっがりかいできないんだよきっと」 「でもむだにちからがつよいからこそ、にんげんさんってやっかいなのよね。おやさいはひとりじめするし、 おうちやあまあまだって……」 「しかたないよ……にんげんさんはゆっくりできないけど、ゆっくりしてないぶんゆっくりよりはつよいからね…… どすがほんきをだせばいちころだけど、にんげんさんはとにかくかずだけはおおいからめんどうだよ」 「にんげんさんってどこからともなくかってにはえてくるからいやだわ。むきゅ」 「だからね。どすたちがにんげんさんのかおをたててやって、いいきにさせてあげなきゃいけないんだよ」 「うまくにんげんさんをあやして、むれにきがいをくわえさせないようにしないといけないわね」 「そうだよぱちぇりー。ゆんっそれにしても……」 「どうしたのどす?」 「おやまのしたにひろがるこうだいっなゆっくりぷれいすを、にんげんさんにぜんぶかしあたえているどすって…… ちょっとこころがひろすぎるよね?すこしおひとよしすぎるかな?」 「そんなことないわ!せいじんくんしっとはまさにどすのことをいうのよ!むきゅっ」 「そうだよね……どす、けんきょすぎてごめんね!」 どうやらドスと参謀ぱちぇりーは自分たちが人間に追いやられて山に住まざるをえない、ではなく 寛大にも本来すべてゆっくりの物であるべきゆっくりプレイスを人間達に貸し与えてやっていると思い込んでいるらしい。 せめてそう思うことで人間とゆっくりの立場の違いを誤魔化そうとしているのだろう。 まあ人間の前でそのふざけた考えを口走らなければ、頭の中でどう妄想しようと勝手だが…… 「ゆぷぷぷぷっ!しょんにゃかたいじめんしゃんに、おやしゃいさんがかってにはえるわけにゃいでしょ? にんげんしゃんはばかなの?しぬの?」 ある時一匹の子れいみゅが男を馬鹿にしてゆっくりしようと、男が作業しているすぐそばまで近付きこのような事を言った。 男はしばらく無視して黙々と作業をしていたが、子れいみゅの暴言は止まらない。 やがて男は一休みして子れいみゅに向き合うと逆に聞いた。 「この土地に野菜が生えるわけがない……?誰が決めたんだそんなこと」 「ゆっ!むれのみんにゃがそういっちぇるよ!おちょうしゃんもおかあしゃんもにんげんしゃんはばかだっていっちぇるよ!」 「そいつらはなんで野菜が生えるわけがないってわかるんだ?」 「……ゆっ?」 「そいつらは実際に試してみたのか?過去にここで野菜を生やす努力をした上で、できないと言ってるのか?」 「しょ、しょんにゃこと……ためしゃにゃくてもふつうはえるわけないってわかるでしょぉぉぉぉぉっ!?」 「……ただの決め付けだろうそれは。俺はそんないい加減な思い込みなど信じない」 「ば、ばかにゃの?ちぬにょぉぉぉぉっ!?おやさいしゃんはかってに……」 「人間にもその手の奴はごまんといるが、そうやってすぐに自分で自分の限界を決める所がゆっくりの悪い所だ」 「ゆっ!?」 「なんでできないと最初から決め付けるんだ?もしかしたら野菜が生えるかもしれないじゃないか」 「で、でもまいにちまいにち、にんげんしゃんはぜんぜんゆっくちちてないよ?にゃのにどうちてこんなごとずるのっ?」 「畑仕事をするのが俺のゆっくりだからだ」 「ゆ……」 「野菜がはえようがはえまいが俺は俺の気の済むまでやるつもりだ……だから邪魔するな俺のゆっくりを」 「……ゆっくちりきゃいちたよ。にんげんしゃんはしょうしんしょうめいっのばきゃなんりゃにぇえ!」 「もうそれでいいから山に帰れ。これ以上ここにいると協定違反で潰すぞ」 「いわれなくてもれいみゅはこんなゆっくちできにゃいところにもうこにゃいよ!ばーきゃばーきゃ!ゆっくちちね!」 そう言い捨てて子れいみゅは去っていった。 男は少し溜め息をつくと再び鍬を振り上げて作業に戻る。 苗や種を植える前に地面をならしたり、石を取り除いたりしてまずはとにかく畑の土壌を作らなくてはならない。 だから男はただ毎日毎日黙々と地面を耕す。 そして群れのゆっくり達はその姿をゆっくりできない馬鹿の見本だと言ってあざ笑う。 そんな状態が一年以上続いた。そしてある日…… 「ど、どすぅー!どすぅぅぅぅっ!た、たいへっ!たいへんなんだよー!」 今日の狩りも終わり、群れのみんながゆっくりしている群れの広場にちぇんが転がり込んできた。 ずいぶん急いで跳ねてきたようでゆひーゆひーと荒い息をしている。 「ど、どうしたのちぇん?」 「た、たいへんなんだよー!ちぇんは、ちぇんはすごいものをみ、みてしまったんだねー!」 「むきゅ?なにをいいたいのかよくわからないわ。おちついてぱちぇたちにゆっくりせつめいしなさい!」 「せ、せつめいよりじっさいにみたほうがはやいよー!だからどすもぱちぇりーも……いっそむれのぜんゆん、 ちぇんについてきてほしいよー!」 「むきゅ?」 結局、ちぇんが興奮しきっていてどうにも話しにならなかったのでちぇんの言うとおり ドス以下群れのほとんど全部のゆっくりがちぇんが見た「何か」を確認するべく山の西側へと向かった。 そして群れのゆっくりたちがそこで見たものとは…… 「ゆ、ゆわぁぁぁぁぁぁ……っ!」 「こ、これはすごいのせぇぇぇぇぇっ!」 「おやさいさんがかってにはえているゆっくりぷれいすだよぉぉぉぉぉっ!」 「すごいよ!こんなゆっくりぷれいすがあったなんてれいむしらなかったよぉぉぉっ!」 ちぇんが見たものとは山の麓にある野菜が栽培されている畑であった。 まだまだそれほど畑の規模は大きくはないものの、確かに畑が作られていてそこで野菜が育てられているのだ。 畑になっているキャベツに白菜に人参……これら野性のゆっくりにとってはまさに垂涎のご馳走といえる。 「あ、あれはまりさのおやさいさんなのぜ!さっそくいただきにいくのぜ!」 「なにいっでるのぉぉぉ!?あのおやさいさんはれいぶのためにかってにはえてきたんだから れいぶのものでしょぉぉぉっ!?」 「おまちなさいっ!とかいはなおやさいさんは、とかいはなありすにこそふさわしいのよっ!」 「な、なにいってるのみんなー!ばかなのー!?ちぇんがみせたいものはおやさいさんだけじゃないんだよぉぉぉぉっ!」 「ど、どういうことだみょん?」 「みんなあのさんぼんのきをみてよー!みおぼえあるでしょー!あれは……さんぼんすぎさんなんだよぉぉぉぉっ!」 「「「「「「ゆっ……?」」」」」」 三本杉が立っている山の西側の土地。 そこは長い間、群れにとって餌となりうるものはなにもとれなかった荒れ地だったはずだ。 群れにとって不毛の地であり自然と誰も近寄らなくなっていった場所。 いや冬ごもりする前までは群れのゆっくりはみんなで毎日あの場所をを見渡せる場所に通ったことがある。 なんでそんなことを?確か何かをしてゆっくりする為だったような気がする。 そういえば……前にここでお野菜を作ると言っていた馬鹿な人間がいた。 そうだ荒れ地を汗だくで耕す薄汚い男を、ストレス解消がてらにさんざん馬鹿にしてあざ笑ってやったっけ。 ……畑?……お野菜さんを生やすだって?いま自分達が涎をたらして見ているあれはなんだ? お野菜さんが生えてくるゆっくりプレイス……? 「むきゅ?あ、あそこをみてどす!」 「あ、あのにんげんさんがはたけにいる……!ま、まさかそんな……っ」 畑では男があいからわず黙々と農作業をしていた。 やはりそうなのか?このお野菜はあの人間が作ったものなのか? 群れのゆっくり達はゆっくりと理解しつつあった。 このお野菜は、畑は、全部あのゆっくりしてない人間が一から自分の力のみで作り上げたものだと。 だがその事実はゆっくりにとって認められない事実でもあった。なぜならば…… 「にぇえ!にぇえ!」 「ゆっ?な、なあに?おちびちゃん?」 「おきゃあしゃんたちれいみゅたちにいっちゃよね?きょんなところにおやさいがかってにはえてくるわけないっちぇ!」 「ゆっ?そ、そうだね…」 「でもあしょこにゆっくちできそうなおやしゃいしゃんが、い~っぱいはえちぇるよ?なんで?にぇえなんでぇ?」 「ぞ、ぞれはっ!ぞれは……ゆぅぅぅぅ………」 「もちかちておきゃあしゃんたち、れいみゅにうそついたの?」 「……っ!!」 「にぇえっ!れいみゅにうそをおしえちゃにょ?にぇえおきゃあしゃ…」 「おやをうそつきよばわりするげすなおちびちゃんはゆっくりしねぇぇぇぇっ!」 「ゆぴぃっ!?」 突如、成体れいむが子ゆっくりの我が子を体当たりで跳ね飛ばした。 子れいみゅはわけもわからずふっとばされ地面を転がる。 さすがにその様子に群れのゆっくりたちがびっくりして子れいみゅを助けようと駆け寄ってきた。 「だ、だいじょうぶ?れいむのおちびちゃん!」 「い、いちゃいよぉぉぉ……にゃ、にゃんでぇぇぇ……れいみゅにゃにもわるいこちょちてないにょにぃぃぃぃ……」 「ありすおばさんがいまぺーろぺーろしてあげるから、ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってねぇぇぇっ!」 「れいむぅぅぅぅっ!おまえじぶんのこどもになんてことするんだぁぁぁっ!」 「ゆゆっ!?だ、だってそいつ……そいつはおやをうそつきよばわりするげすで……げすだがら……ぞの……」 「おちびちゃんはただれいむにしつもんしただけだみょん!」 「いきなりぼうりょくをふるうなんてゆっくりできないんだぜ!」 「このれいむはゆっくりできないわ!」 「さいていっのおやなんだねー!わかるよー!」 「う……うるざぁぁぁぁぁいっ!だったらおばえらはあれをみとめるっでいうのがぁぁぁぁぁっ!? あのおやさいさんをっ!あのくそにんげんがっ!はやしたとゆっぐりみとめるっていうのぉぉぉぉぉぉっ!?」 「ゆ、ゆゆゆゆゆっ!?」 「ぞ、ぞれは……っ!」 「ぞの……みょん……」 おやさいはゆっくりをゆっくりさせる為に勝手に地面から生えてくる それが全ゆっくりにとって常識であり正義であり錦の御旗である。 お野菜は人間が手間暇かけてやってやっと生えてくるなど、ゆっくりは誰も信じていないし信じようともしない。 たとえ農耕の何たるかを人間が懇切丁寧に教えたとしても無理だ。 なぜなら農作業はゆっくりできない重労働だから。 なぜならゆっくりの餡子脳では農業は難しすぎて理解できないから。 だからひたすらゆっくりする事を追求するゆっくりの本能は、より楽な方へよりゆっくりできる方へと物事を解釈する。 その結論がお野菜はゆっくりできない重労働をせずとも『勝手に生えてくるもの』であり、 お野菜は誰のものでもない『みんなのもの』、 そしてみんなのものであるはずのお野菜を独り占めにする『人間はずるい』となる。 だから人間の畑に入り込んで野菜泥棒をしてどれだけ痛めつけられようが、どれだけ殺されようが、 ゆっくり達は誰一人として自分が悪いことをしたなどとは微塵も考えないのだ。 なぜならお野菜とは勝手に地面から生えてくるみんなのもの。 みんなの物であるはずのお野菜を独り占めにする人間こそが悪いに決まっているのだから。 だからどれだけ潰されてもゆっくりは野菜泥棒を繰り返す。 だって自分たちは正しいことをしているつもりなのだから。 正直、群れのゆっくりが村と協定を結んで野菜を盗まない事に同意したのも本当は渋々といった感じだ。 ドスをはじめ群れのゆっくり達は、畑で育った野菜が人間の所有物だとは心の中では認めていない。 だが建前上とはいえ認めなければ群れは人間に駆除されてしまうから、仕方なく現状に甘んじているだけのことだ。 だがこの男は長い間、野菜どころかゆっくりの餌になる草さえも生えない不毛の荒れ地に野菜を生やした。 これはつまり……さすがに餡子脳なゆっくり達も認めざるをえないということだ。 このゆっくりできそうな野菜はこの土地に勝手に生えてきたのではない。 どういう手を使ったかは不明だが男がなんらかの方法で生やしたのだ。 そしてその事実を認めるということは、 「勝手に生えたお野菜はみんなのもの。だからお野菜を食べる権利がゆっくりにもある。独り占めする人間さんこそが悪」 というゆっくりが振りかざしている正義の御旗が使えない、 それどころかその考え方自体が根本から否定されたということだ。 「ど、どす……どうするのぉぉぉっ?」 「これじゃあ、おやさいさんをとりにいけないよぉぉぉぉ………」 「ゆ、ゆうううううううっ」 群れのゆっくり達はずっと男がこの場所で黙々と地面を耕すところを見てきた。 いくら農業が理解できないゆっくりでも、こうも分かりやすく男が荒れ地を畑に変えたからには理解せざるをえない。 この畑は群れのゆっくりどもが、さんざんバカにしてきたあの男が作り上げたゆっくりプレイスだということを。 そして男が作り上げたゆっくりプレイスでできた野菜はすべて男の所有物であるということを。 あのお野菜を勝手に食べたら……言い訳の余地はまったくなく、ゆっくりが悪者になってしまうということを。 悪者になるのはゆっくりできない。ゆっくりはいつでも正義であり被害者でいたいのだ。 そもそもレイパーにしろ、でいぶにしろ、ゲスにしろ、野菜泥棒にしろ、 ゆっくりはみんながみんな自分なりの解釈で自分は正しいことをしていると思いこんでいる。 自分が正しいと思えないとゆっくりできないからだ。 よくでいぶが「自分は子育てをしているから忙しい」だの「狩りも満足にできない番が悪い」などと 悪い事は全部他ゆんのせいにして自分はかわいそうと自己正当化するのはこの為だ。 「あんなにゆっくりできるおやさいさんがめのまえにあるのにぃぃぃぃっ! どぼじてれいぶがたべられないのぉぉぉぉっ!?」 「ぱちゅりぃぃぃぃっ!あんだむれのさんぼうでしょぉぉぉぉっ!?なんどかじなさいよぉぉぉぉっ!」 「む、むきゅ?ぞ、ぞんなごときゅうにぱちゅにいわれても……むきゅぅぅぅ……」 「ゆっぐじでぎるおやざいぃぃぃぃっ!おやざいざんたべだいのぜぇぇぇっ!」 「じゃあいますぐはたけさんにいっておやざいざんをとっでごいよぉぉぉぉっ!ばかなのぉぉぉっ!?」 「ぞんなごとじだらばりざがわるいってごとになっちゃうでしょぉぉぉぉぉっ!?」 「お、おやさいざんはかってに……かっでにっは、はえでっ!」 「はえてこながったでしょぉぉぉぉっ!にんげんさんがきてからおやさいさんがはえるようになっだんだよぉぉぉっ!」 「にんげんざんのものなんだよおやさいさんはぁぁぁっ!いいかげんわがれよぉぉぉぉっ!」 「じゃあどうずればいいっでいうのぉぉぉっ!れいぶおやさいたべたいのにぃぃぃぃっ!」 「む、むきゅっ!そうよ!おうちせんげんよ!あのはたけさんでぱちゅたちがゆっくりおうちせんげんすれば…」 「なにいってるのぱちゅりー!あのはたけさんはにんげんさんがおうちせんげんした、 にんげんさんのゆっくりぷれいすなんだよ?むかしわざわざどすのむれにまできてせんげんしていったじゃない!?」 「む、むきゅぅぅぅぅっ?」 「それにむれのみんなで、にんげんさんのおうちせんげんをみとめちゃったんだよ?だがら……だがらあそこはもう…」 「ゆ、ゆがぁぁぁぁぁっ!どすのばがぁ!なんでくそにんげんのおうちせんげんなんがみとめちゃっだのぉぉぉぉっ!?」 「にんげんのおうちせんげんなんかだめっていっとげば、いあのおやさいさんはばりざのものになっでだんだぜぇぇっ!」 「なにいってるのぉぉぉっ!?みとめたのはどすだけじゃないでしょぉぉぉぉっ! むれのみんなでいいよっていったでしょぉぉぉぉっ!あんなあれちにおやさいなんかできるわけないってぇぇぇぇっ!」 「ゆ、ゆぐぅぅぅぅっ!?」 「で、でぼ……でぼぉぉぉ……」 「おやさい……ゆっくりできるおやさいがめのまえにあるのにぃぃぃ……」 「どぼじてたべられないんだぜぇぇ……?どぼじてぇぇぇぇ……」 お野菜を食べたい。でも食べたらゆっくりできなくなるというジレンマに板ばさみになる群れのゆっくり達。 勝手に生えてくるというロジックが根本から崩れ去ったいま、無理に畑に押し入って野菜を食べたとしても 己に正当性がないために心に棘が刺さったような良心の呵責に悩まされることになる。 そんなのは全然ゆっくりできない。何故ならゆっくりはいつもいい子でいたいから。 「ゆぅぅぅぅっ!いいかげんにしてねぇぇぇっ!」 「ゆ、ゆゆっ?」 悔し涙を流すゆっくり達に対して突如、怒りの声をあげる者達がいた。 見ればそれは群れの若いゆっくり達だ。若いといってもすでに番をもっておちびちゃんまでいるゆっくりもいる。 彼女らは男が畑を作り始めたとき、まだおちびちゃんだった世代のゆっくり達だ。 群れの大人や親達にさんざん人間さんはゆっくりしてないバカだね!あんな風になっちゃいけないよ! と吹き込まれて教育されてきた世代のゆっくり達である。 「おとうさんたちはここにおやさいがはえるわけがないとまりさたちにゆっくりおしえたよね!あれはなんだったの!?」 「そ、それは……そのだぜ…」 「ゆっくりこたえてねっ!おかあさんたちはれいむにうそをおしえたの!?」 「お、おちびちゃんよくきいてね!あ、あれはうそじゃなくでその……な、なにかのまちがいで……」 「まちがいなんかじゃないよぉぉぉっ!げんにあそこにおやさいさんがいーっぱいあるでしょぉぉぉぉぉっ!」 「ゆ、ゆぐぐぐぐ……っ!」 「うそつき!うそつき!おとうさんもおかあさんもどすもぱちぇりーもみんなうそつきよ!」 「なにがおやさいさんは、ゆっくりのためにかってにはえてくるなのぜ?かってになんてはえてなんてこないんだぜ!」 「ちぇんだっておやさいさんをむーしゃむーしゃしたいのにー!ぜんぶにんげんさんのものなんだよー!?」 「じじいはゆっくりしてない?うそよ!たくさんのおやさいにかこまれてすごくゆっくりしているわ!」 「ゆんっ!これもぜんぶ、どすやおとなたちのせいだよー!れいむたちにうそをおしえてだましたんだよっ!」 「ゆっくりできないおとなどもと、どすとぱちぇりーはいますぐしねえ!」 「「「「「「「「「「しーね!しーね!しーね!しーね!しーね!しーね!しーね!」」」」」」」」」」 若い世代のゆっくりたちはこの現実を、ドスや参謀ぱちぇりーや自分達の親ゆっくりに騙された結果だと解釈した。 これもどこまでもゆっくりを追求するゆっくりの本能による自分勝手な論法である。 お野菜は食べられない、それは理解した。だがそのゆっくりできない現実はとても受け入れられない。 ならどうする?そんなの決まってる。 野菜は勝手に生えてくる……で人間を悪者にしたように他の誰かを悪者にして責任をおっかぶせればいいのだ。 つまり……「嘘を教えて自分達を騙した」親世代のゆっくり達に。 「ゆっ……ぐぎぎぎぎぎぎっ!」 「だ、だまってきいていればぁぁぁぁ………くそがきどもがぁぁっ!ふざげるなぁぁぁぁっ!」 「れいぶたちをうそつきよばわりずる、ゆっぐりでぎないくそがきどもはゆっぐりじねぇぇぇぇっ!」 「ゆべぇ!?」 「ゆゆっ!くそばばあどもがぎゃくぎれしたんだぜ!」 「おおっこわいこわい!うそつきなうえにゆっくりごろしをするなんて、ほんとうにゆっくりしてないね!」 「うるざいぃぃぃぃぃっ!ごごまでそだててやっだおんをわすれやがったげすがきどもめぇぇぇぇっ!」 「じね!じねっ!ゆっぐじじないでじねぇっ!」 「おやざいはがっでにはえでぐるんだぁぁぁぁっ!ばりざはうそなんがついでないんだぁぁぁぁっ!」 「ばばあどもがぎゃくぎれしたのぜ!こうなったらみんなでやっちまうのぜぇぇぇぇっ!」 「ろうがいっは、ありすのとかいはなたいあたりさんをくらってゆっくりしんでね!」 「ばばあごときがわかさあふれるれいむにかてるとほんきでおもってるの?ばかなの?しぬの?」 「うるざいぃぃぃぃっ!じぬのはおばえのほうだぁぁぁぁぁっ!!」 こうして親世代の逆切れをきっかけに、若い世代とで群れを二つに分けての壮絶な殺し合いが始まった。 逆ギレした親世代は感情の高ぶりによる勢いだけの単調な攻撃を繰り返すが、 スタミナと敏捷さに勝る若い世代はそんな攻撃をひょいひょい避けていく。 そして逆に体当たりをかまして次第に親世代のゆっくり達を圧倒していった。 ここまでくるともうなにがなにやら……事の成り行きを唖然として見ていたドスもさすがに我に返り、 群れのゆっくり達のケンカを収めようとした。 「や、やべてよみんなぁぁぁぁっ!どぼじてむれのゆっぐりどうじでころしあっでるのぉぉぉぉっ!?」 「うるさいんだぜどす!もとはといえば、どすががにんげんのおうちせんげんなんかをみとめたのがわるんだぜ!」 「ゆっ?ゆぅぅぅぅぅっ!?」 「どすとぱちぇりーもどうざいっだよ!いままでさんざんれいむたちにうそをついて!」 「うそつきゆっくりはせいさいっするみょん!ゆっくりはくろーけんのさびになるみょぉぉぉんっ!」 「む、むぎゅぅぅぅっ!?」 「ぱ、ぱちぇりぃぃぃぃぃっ!?」 「も、もっど……むっきゅり……じだがった……」 「ど、どすぅぅぅ……はやくまりざたちをたすけるんだぜぇぇぇ……」 「はやくぞのくそがきどもを……せいさいじでね!す、すぐでいいよぉぉぉぉっ!」 「うるさいよ!くそばばあどもはきのえださんをくらってゆっくりしんでね!」 「ゆげぇっ!?……も、もっど……ゆっぐ……」 「おおっぶざまぶざま!うそつきゆっくりにふさわしいしにかただね!げらげらげら♪」 「ゆ………ゆがああああああああっ!よ、よぐも!よぐもむれのゆっぐりだちをごろじだなっ! よぐもぱちぇりーをごろじだなっ!おばえらなんかもうどすのむれのゆっぐりなんがじゃないよぉぉぉぉっ! どすがごろじでやるがらゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇっ!」 もはや生意気で可愛げのない若い世代のゆっくりどもに、長い間苦楽を共にしてきた親世代のゆっくり達を殺され、 そしてまたもっとも信頼する参謀ぱちぇりーを木の枝で無残に殺されたことでドスが切れた。 がむしゃらに飛び跳ねて若い世代のゆっくり達を押し潰して皆殺しにしようとする。 働き盛りで若いゆっくり達とはいえ、所詮はただのゆっくりでありドスまりさに勝てる道理などない。 瞬く間にドスの巨体に潰されたり、体当たりで跳ね飛ばされて木に叩きつけられるなどして次々と殺されていった。 「じねっ!じねぇぇぇぇっ!」 「ど、どすがくるったよぉぉぉぉっ!うそつきのどすがぎゃくぎれしてつみのないれいぶたちをいじべるぅぅぅぅっ!」 「だばれぇぇぇっ!なにがつみがないだぁぁぁぁっ!むれのゆっぐりたちををだぐさん! だぐざんごろじでおいでよぐもぉぉぉぉっ!」 「それはどすたちがうそつきだったからでしょぉぉぉっ?ありすたちをだましていたくせに ごめんなさいもいえないいなかもののくせに、ぎゃくぎれしないでねぇぇぇぇっ!」 「うるざいっ!うるざいぃぃぃっ!ゆっぐじごろじはゆっぐじじないでいますぐじねぇぇぇぇっ!」 「ゆんやぁぁぁっ!どすがどげすになったみょぉぉぉぉん!」 「だれがたずけでね!うそつきゆっぐりどもにだまされていた、かわいそうなばりざだちをいますぐたずげてねぇぇぇっ!」 「まだいうがぁぁぁぁぁっ!このくそげどうどもがぁぁぁぁっ!じね!じね!じねぇぇぇぇぇっ!」 半狂乱になったドスは無茶苦茶に跳ねまわり、とうとう群れのゆっくり全ゆんを潰してしまった。 すべてが終わった後、ドスまりさは荒い息をしながら潰れたゆっくりの死体だらけの周囲をボーと見ていた。 が、急にキッと山の麓に目を向けるとあの男を睨みつつ歯軋りを始めた。 「あ、あのくそにんげんがぁぁぁぁっ!ぜんぶぜんぶおばえのせいだなぁぁぁぁぁっ! むれのゆっくりがころしあったのもっ!ぱちゅりーがじんだのもっ! かってにおやさいをはやしてどすのむれをみなごろしにしやがってぇぇぇぇっ!」 所詮ドスもゆっくり、群れが壊滅した原因を自分のせいだとはどうしても思いたくなかった。 なぜならゆっくりできないから……だから男にすべての憎しみと原因を押し付けて逆恨みをした。 「ちくしょおがぁぁぁっ!ぐぞにんげんめぇぇぇっ!どすがかんだいっにもゆっくりぷれいすをかしあたえてやったのに、 おんをあだでかえしやがっでぇぇぇぇっ!ゆんっもういいよ!かしてやったものはぜんぶかえしてもらうがらね! ぞのはたけざんも、おやさいさんもぜーんぶどすがいただくよ!もともとどすのものだからとうぜんっだね! おやさいをとりかえしたら、どすのむれのゆっくりをころしたげすにんげんをゆっくりせいさいっするよ! いやぜったいにせいさいっじでやるっ!まっでろぐぞにんげんっ!いますぐそこへどすがいぐぞぉぉぉぉっ!」 どうやら群れを失ったショックでドスまりさは完全なドゲスへとジョブチェンジを果したようだ。 怒りにまかせた乱暴な跳ね方でドスンドスンと山道を跳ねて下るドゲスまりさ。 だがあまりに我を見失っていたのか、乱暴な跳ね方をしていたドゲスは着地を見誤って山道を踏み外してしまった。 「ゆっ?ゆゆゆゆゆゆっ!?」 ドゲスは山道を踏み外して坂……というよりほとんど崖に近い急勾配の坂を転がり落ちていく。 「ゆ、ゆ、ゆびぃっ!?ゆぎゃぁぁぁぁっ!?ど、どぼじでご……ゆぼぉぉぉっ!」 無駄に巨体なドゲスがごろごろと転がり落ちながら岩にぶつかり、木にぶつかり、枝で身体のおちこちを切っていく。 ドゲスのお帽子は外れ、身体中傷だらけになりながらドゲスはさらに山を転がり落ちていく。 そしてもうすぐ山の麓に到着……という所で。 ドスゥゥゥゥゥンッ! 「ゆべぼぉぉぉぉっ!?」 ドゲスはひときわ大きな大木におもいっきりぶつかり、そこでようやく転げ落ちるのを停止した。 「ゆ、ゆぶえぇぇぇ……ど、どぼじてどすがごんなめにあわなくちゃいげないのぉぉぉ……? ご、ごれもみんなあのぐぞにんげんのせいだよ……あのげすめぇぇぇ……! どすがいますぐせいさいっじでや……ゆっ?」 大木に背中から寄りかかっている形のドゲスが、起き上がろうとしてふと違和感を感じた。 なんか身体が思うように動かない。というかお腹のあたりが妙に熱い気がする…… ドゲスは恐る恐る自分のお腹のあたりに視線を移し……そして見た。 自分のお腹に大木の太い枝が背中から突き刺さっている光景を。 「な、な、な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁっ!?」 結論から言うとドゲスはそのまま枝を身体から引き抜くことができず、衰弱して死んだ。 坂を転がり落ちた時に受けたダメージで体力がほとんど残ってなかったし、 ドススパークで大木を破壊しようにも大木はドスの背中にあって撃っても届かない。 というか帽子をなくしたときドススパークに必要なキノコも一諸になくしてしまったようでドススパークが撃てないのだ。 ドゲスはしばらくぎゃーぎゃー喚き散らしていたが、かといって誰かが助けにくるわけでもなく。 逆にドスの切り傷から出た餡子の匂いにつられてアリがたかってくる始末。 「どぼじて……どぼじでごんな……ありさんやべてね……どすのあんこさんもっでいがないでね……おねがいだよぉぉ…」 以後アリが動けないドスから体内の餡子を少しづつ奪っていった。 長い長い時間をかけて、たっぷりドゲスに苦痛を与えてながら、少しづつ少しづつドゲスの命の餡子を捕食していき アリの牙が中枢餡に届いてドゲスがやっと絶命できたのは、さらに半年後のことだという。 「も、もっど……ゆっくじ………じだが………」 「……ふう」 男は手を休めて一休みをする。 一年ちょいでひとまず畑ができたとはいえまだまだ規模は小さい。 まだまだこれからだ……人手が欲しいからそのうちゆうかにゃんでも雇うかなあ… と思いながら男は一服し終わると再び鍬を振り上げた。 黙々と。ただ黙々と男はそこで農作業をしていた。