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「ゆんゆんゆーん!ゆっくちゆっくちー!」 得意げに眉を吊り上げて、まるで胸を張るかのように仰け反りながら、這いずって行く一匹の小汚い子まりさ。 少しでも自分を大きく見せようとしているのか、大げさに尻やお下げをフリフリ振って英雄気取りで小汚いダンボールの家に凱旋する。 「ゆっくちただいまのじぇ!!きょーは、ざっそーしゃんと、ありしゃんをたくさんたおしたのじぇ!!ゆっへん、ゆっくち!!」 公園の植え込みの裏に隠れるように置かれたダンボールの中に入ると、満面の笑みを浮かべながら高らかに宣言する子まりさ。 倒したと言っても、その辺に生えている草に体当たりをし、蟻を数匹踏み潰した程度。 それでも未熟な子ゆっくりを増徴させるには十分の戦果である。 「ゆぉぉぉ!おねーちゃ、すごいのちぇ!かっこいいのちぇー!ぶゆーでんなのじぇー!!ゆっくちー!」 「おねーちゃん、すごいにぇ!おとーしゃんみたい!かがやいてるよー!ゆっくちー!!」 その声を聞いた妹達も思わず両目を輝かせて、ゆんゆんキャッキャとはしゃぎ出す。 子まりさも妹達の反応を見て、嬉しそうに顔をほころばせながら、りりしく眉毛を吊り上げてみせる。 気を良くした子まりさは、尊敬の眼差しで自分の事を見つめる姉妹達に、得意そうに「ぶゆーでん」を語り始める。 この子まりさは、先日親であるまりさに「ぶゆーでん」を聞かされた。 カマキリと死闘の末に勝っただの、卑怯な毛虫をやっつけただのという、スケールの小さい体験談を熱く語られた。 それでも子ゆっくり達にとっては、壮大な冒険活劇に聞こえていた。 盛り上がった子ゆっくり達に乗せられた親まりさは、ごみ漁りをしていた所を人に見つかり、必死に逃げ回った体験談を捏造して、人間を倒して追い払っただのとの調子に乗って語ったりもした。 「おとーしゃん、すごいのじぇ!さいきょーなのじぇ!えいゆーなのじぇ!すーぱーひーろーしゃんなのじぇ!!」 そんなほら話に一番魅せられていたのが、長女であるこの子まりさ。 両目をキラキラと輝かせながら親まりさの話を聞き、飛び跳ねたりユラユラと体を動かしたりしながら、まるで自分が主人公になったつもりで話に聞き入っていた。 元々まりさ種は自信過剰で、自分達がこの世で一番強いゆっくりだと思っている。 故にまりさ種のゆっくりが○○と戦って「勝った」という話が大好きなのである。 その上野良生活で大して遊べなかった反動からか、親の嘘で塗れた話に引き込まれていった。 「すごいのじぇー!すごいのじぇ!!まりちゃも、おとーしゃんにまけないくらいの、さいきょーのぶゆーでんをつくるのじぇ!!」 「ゆふふ、つよーいおちびちゃんなら、きーっとりっぱな、ぶゆーでんをつくれるんだぜ!がんばるんだぜ!!」 「ゆぅぅ!そーなのじぇ?!やっぱりまりちゃは、さいきょーなのじぇ!ゆわぁぁぁい!ゆわぁぁぁぁぁい!」 親まりさから意味もなく褒められて、ご機嫌の子まりさ。 ユラユラと幸せそうにカラダをゆらし、空想に思いを巡らせてはニヤニヤと微笑むのだった。 その日から子まりさは、毎日のように外に出かけては何かと戦っていた。 「ゆふふ!まりちゃは、とーっても、ちからもちさんなのじぇ!このでんせちゅは、ずーっとかたりつがれるのじぇ!!」 ある時は、妹が躓いた小さな小石をお下げで吹き飛ばし。 「ゆっぷっぷー!まりちゃがこわいのじぇー?!おくびょーなのじぇ!ひんじゃくさんは、かわいそーなのじぇ!!」 またある時は、風に流されて飛んでいく風船を見上げて罵声を浴びせ。 「ゆわーい!これはでんせつのけんなのじぇ!かっこいいのじぇー!まりちゃ、えいゆーけっていなのじぇ!!」 またある時は、捨ててあったアイスの棒を拾って大喜びした。 そんな「ぶゆーでん」を、毎日親まりさや妹達に楽しそうに語るのが、子まりさの日課になっていた。 「ゆゆーん!きょーもまりちゃのぶゆーでん、いーっぱいつくるのじぇ!!」 今日も元気いっぱいにダンボールを飛び出した子まりさは、何時ものように決めポーズを取るかのように得意そうに仰け反って宣言する。 だが今日は何時もの出陣とは少し違う。 「ゆゆーん!おねーちゃ、きょーもかっこいいのちぇー!ゆっくちー!」 「おねーちゃんのかつやくが、じかにみれるなんて、れーみゅはとーってもたのしみだよ!ゆっくちー!」 子まりさの後を追って元気に飛び出してきた妹ゆっくり達は、幸せそうに体を揺らしならが朝日に輝く姉の後姿を見て微笑む。 子まりさもそんな妹達の声援を背中で聞きながらニヤニヤと笑うと、より一層体を仰け反らせて得意そうに眉毛を吊り上げた。 今日は妹達にせがまれて、かっこよく戦う自分の姿を見せる事になったのだ。 歩く自爆装置、生きた死亡フラグと比喩されるゆっくり、それも子ゆっくりが警戒心ゼロでウロウロしていれば大抵ろくな事が起こらない。 普段から親まりさに外は危険だと言われてきてはいたが、ここ最近「ぶゆーでん」で調子に乗りまくっていた子まりさにはそんな忠告など忘却の彼方だった。 「ゆっくちー!まずはあのありさんなのじぇ!まりちゃのつよさをおもいじるのじぇー!!」 早速小さな蟻を見つけた子まりさは、軽快に跳ねて蟻の側までやってくる。 そして頬を膨らませて蟻を威嚇すると、小さく飛び跳ねて蟻の上に飛び乗った。 「よーくみておくのじぇ!まりちゃのひっさつ!ぷくーあんど、あたっくしゃんなのじぇ!」 『ゆぉぉぉぉぉ!おねーちゃん、かっこいい!(のちぇー!)』 蟻の上に乗ったまま、キリッと眉毛を吊り上げて仰け反る子まりさ。 妹達はその姿に見惚れ、子まりさの周りをピョンピョンと飛び跳ねる。 「ゆゆゆ~んゆっくちー!まりちゃは~さいきょ~♪さいきょ~のゆ~っくち~♪」 『ゆっくち~♪おねーしゃんはさいきょ~♪ゆっくち~!!』 子まりさは自分を褒め称える妹達を見て上機嫌になり、思わず体をユラユラ揺らしながら自分を称える歌を歌いだす。 するとそれに合わせて妹達もユラユラと揺れだし、即興で子まりさを称える歌を歌いだした。 「よーち!きょーもぜっこーちょーなのじぇ!まりちゃ、かっこよくきまってるのじぇ!ゆっくち~!!」 自画自賛な歌が一通り歌い終わると、子まりさは再び得意そうに仰け反り妹達を引き連れて次の獲物を探しに出かけた。 「ゆゆぅ…おねーちゃ、おなかすいたのちぇ…ゆっくちー…」 「れーみゅもおなかがすちゃよ…ごはんしゃん、むーしゃむーしゃしちゃいよ…」 「ゆゆぅ?そーいえばおなかがすいたのじぇ…なにかごはんしゃんをさがすのじぇ!」 ドラ○エのように列を作って行進する子まりさと妹ゆっくり達。 だが妹ゆっくり達が立ち止まり、お腹がすいたと子まりさに訴える。 子まりさ達は、親まりさが狩りと言う名のごみ漁りに出かけてから、昼になるまで何も食べないで草や小さな虫と戦ってウロウロしていた。 今までは「ぶゆーでん」に夢中になって気がつかなかったが、燃費の悪い子ゆっくりの腹もそろそろ限界が来たのだ。 「まりちゃはかりのてんさいなのじぇ!よーくみてるのじぇ!ぜーったい、おいしいごはんさんをとってくるのじぇ!ぶゆーでんなのじぇ!!」 今まで食料調達などした事の無い子まりさだったが、自信たっぷりに仰け反って宣言する。 妹達を連れて「ぶゆーでん」を紡いだ事により、もはや自分に出来ない事は無いと確信しての宣言だった。 「さーすがおねーしゃんなのちぇ!ぶゆーでんなのちぇ!いきるでんせつしゃんなのちぇ!!」 「おねーちゃん、とーってもたよりになるにぇ!とーってもゆっくちしちぇるにぇ!ゆっくちー!!」 そんな子まりさの姿を見て、妹達も一緒に仰け反ってキャッキャとはしゃぐ。 妹達も子まりさの強さに酔いしれ、自分達も強くなったと勘違いしているのだった。 「ゆゆぅ?…あれはくそにんげんなのちぇー?おとーしゃがいってたのちぇ!くしょにんげんは、あまあまをいーっぱい、もってるのちぇ!」 「ゆゆぅ?!あまあま!!れーみゅ、あまあまたべちゃい!いーっぱーたべちゃいよ!ゆっくちー!」 「ゆふふのふ…ここはぶゆーでんのおねーちゃんにまかせるのじぇ!おねーちゃんはでんせつなのじぇ!ゆっくち!!」 子まりさは妹達にそう言うと、ベンチに座っている青年の前まで元気よく跳ねていく。 そして青年を見上げると、得意そうに眉毛を吊り上げて大声で叫んだ。 「やいくそにんげん!でんせつのまりちゃさまに、あまあまよこしてしぬのじぇ!こわければ、あまあまたくさんおいてにげてもいいのじぇ!」 「ん?…げぇ!臭そうな汚れゆっくりだな…しっ!しっ!あっちいけ!飯が不味くなる!」 そんな子まりさを見た青年は鬱陶しそうに顔をしかめると、コンビニ弁当を食べる手を止めて子まりさを追い払うように手を振る。 一方子まりさは、汚れていると言われたのが頭にきたのか、両頬を膨らませて青年を睨みつける。 「ぷっくぅぅぅ!まりちゃ、きたなくないのじぇ!おはなしゃんより、おほししゃんよりもきれーなのじぇ!ばかにするんじゃないのじぇー!!」 「ゆぉぉ!おねーちゃ、つよいのちぇー!くそにんげんが、びびってしんじゃうのちぇー!やっぱりおねーちゃはすごいのじぇぇぇ!!」 「おぉ、あわりぇあわりぇ!くそにんげんは、おねーちゃんにみじめにころされるんだにぇ!ゆっぷっぷー!!」 膨れ上がった子まりさを見て圧倒的な力の差を確信し、勝利の喜びを飛び跳ねたり、踊ったりで表現する妹ゆっくり達。 だが青年は、そんな妹ゆっくり達を見て気分悪そうに顔をしかめると、足で二匹を転がすように軽く蹴る。 「ゆゆぅぅ?!こーりょこーりょ………ゆびゃぁぁぁ!おかおがいちゃいぃぃぃ!ゆんやぁぁぁぁぁぁ!」 「ゆびぇぇぇぇぇん!れーみゅのぷりちーふぇいすがぁぁぁぁ!どーちてこんなことしゅるのぉぉぉ?!とっぷあいどるに、しっとしちぇるのぉぉぉ?!」 二匹の妹ゆっくり達は、大した外傷もないのにグネグネと体をくねらせて、ゆんゆんと大泣きを始める。 三流芝居なのか本気なのかはわからないが、それでも子まりさを激昂させるには十分だった。 子まりさは大きく息を吸い込むと、青年に向かって大声で叫ぶ。 「ゆっがぁぁぁ!なにしてるのじぇぇ!ゆるざないのじぇぇ!!えいえんにゆっぐちざぜであげるのじぇぇぇぇ!まりちゃをおこらせた、おまえがわるいのじぇぇぇぇぇ!!」 青年は顔を真っ赤にして怒る子まりさを気にも留めず、二匹の妹ゆっくりを蹴りながら花壇の方へ移動を始める。 子まりさはそんな青年の態度にさらに地団太を踏むように飛び跳ねると、青年の足に体当たりを始める。 「いっちゃいぃぃぃ!おねーちゃぁぁぁ!ゆっぴぃぃぃぃ!ころころいちゃいのじぇぇぇぇぇぇ!!」 「おめめがまわりゅりゅぅぅぅぅ!おかおがいちゃぁぁぁぁぁ!ゆびゃぁぁぁぁぁん!ゆびゃぁぁぁぁぁぁん!」 「やめるのじぇぇぇ!くらうのじぇぇぇ!くらうのじぇぇぇぇ!いもーとがいたがっちぇるのじぇぇぇ!ゆぐぅぅぅぅぅ!!」 転がりながら涙としーしーを撒き散らし、子まりさに助けを求める妹ゆっくり達。 子まりさはそんな妹達に気を配りつつ、必死に青年の足を追いかけて体当たりを仕掛ける。 だが子まりさの体が青年の足に触れる前に、青年の足は先に進んでしまい、子まりさの体当たりは青年には当たらない。 子まりさは体当たりが空振りする度に悔しそうに唇を噛み締め、涙目になりながら必死に青年の足目掛けて跳ね寄って行く。 「ゆひっ…ゆひっ…ゆぅぅ…まつの…じぇ…まって……まっ…て…ゆぐっ……ひっ…ひっ…まりちゃ…の…たいあたり…くらっちぇ…よぉ…ゆっぐ…」 青年の歩く速度はそれほど速くはないのだが、子ゆっくりが追いつけるほど遅くもない。 飛び跳ねる度に息を切らせ、着地する度に目に溜まった涙をこぼす子まりさ。 「ゆん…ゆ…ん…ゆっぐぢ……ゆぐっ……ゆぐっ…まりちゃ…ぶゆーで…ゆぐっ…ゆ……ゆんべぇ?!」 青年が急に足を止める。 子まりさはそれに気がつかずに、顔面から青年の踵にぶつかっていく。 子まりさは顔を真っ赤に腫らして、おさげで顔を覆いながらゆんゆんと泣き始める。 「ゆびぇぇぇぇん!ゆびぇぇぇぇぇん!いたいのじぇぇぇ!どーちてぇぇぇ?!まりおちゃ、むてきのぶゆーでんしゃんなのじぇぇ!こんなのひどいのじぇぇぇ!!」 「はははっ!無敵だって?!ゆっくりって奴は、何時でも夢ばかり見てるんだな!ほら、よく見て置けよ!お前の無敵のぶゆーでんが泣いてるぞ!」 そう言いながら青年は、背後で泣き喚く子まりさを足で蹴飛ばして自分の前に転がす。 子まりさはコロコロと不規則に転がりながら、周囲に涙と涎を撒き散らす。 青年はそんな子まりさを足で突ついて起こし、子まりさの位置を微調整する。 「いちゃい!いちゃい!ゆびゃぁ!やめちぇ!ゆびぇぇぇ…ゆぇ……ぇ…ゆぅ?」 ゆんゆんと泣く子まりさが、目の前の物体に気がついた。 「ゆびっ…ぎぎぃ…いがい…おべーじゃ…だずげげ…ゆっぐぢ…ゆぐぐ…ぎ…」 「いびゃい…げ…ぎ…ゆ…ぢ…だずげ……ぼうや…だ…ぼうぢ…がえ…る…ゆじ…じじ…ぎ…」 そこにはガタガタと震える二匹の妹ゆっくり達がいた。 頭からは割り箸を1本ずつ生やし、両目を小刻みに動かしながら涙を流している。 割り箸は口の中からも見えており、妹ゆっくりの舌を貫通して地面に突き刺さっている。 口から涎と餡子を少量吐き出しているが、割り箸が邪魔で餡子が上手く吐き出せないでいる。 たった1本の割り箸が刺さっただけで、身動きはおろか言葉もろくに喋る事が出来ない妹ゆっくり達を目の前にして、子まりさは両目をまん丸に見開いて思考停止する。 「………ゆひっ…!なにごれぇぇぇぇ?!まりちゃのかわいーいもうとだちがぁぁぁ?!なにがあっだのぉぉ?!どーじでこうなっだのぉぉぉ?!」 「何言ってるんだ?見てなかったのか?やっぱりゆっくりは呑気だなぁ。ゆっくりしてるって言うやつか?」 ようやく硬直が解けた子まりさは、涙を流しながら大声で騒ぎ出す。 今見ているものが信じられないと言わんばかりに、体を大きくくねらせながら妹ゆっくり達を何度も見比べる。 子まりさは、あまりにも必死に青年の足を追いかけていたせいで、青年が妹ゆっくり達に割り箸を突き刺していた事にまったく気がついていなかったのだ。 「ゆっぎぃぃぃ!ひどいのじぇぇぇ!ひどいのじぇぇぇ!どーちて、こんなことできるのじぇぇぇ!まりちゃたち、とーってもゆっくちしてたのにいぃぃ!!」 「どうしてって?そりゃ、お前がゆっくりしてたから、助けられなかったんだろ?それにお前が俺に絡んでこなけりゃ、こいつ等は幸せに暮らせたんだ。全部お前が悪いんだよ」 「ゆっぐぅぅぅ?!なにいってるの…じぇ…」 青年を涙目で睨みながら両頬を膨らませて飛び跳ねる子まりさ。 青年に向かって罵声を浴びせ問いかけるが、青年の返しに少し戸惑う。 そして無残な姿に変わり果てた妹達を見て再び固まる。 「ゆぎぎ…おべーじゃ…どぼじで…までぃじゃ…いだいの…おべーじゃ…の…ぜいなのぢぇ?…ゆげぼっ!がばっ!べべっ…ゆっ…ぢ…ぎぎぃ…」 「おねーぢゃ…どーじで…だずげでぐれな……おねーじゃだけ…ゆっくぢじでだ…の?…ゆびぃぃ…ゆぐっ…ゆがっ…ゆっぐぢぃ…ゆっぐぢぃ…」 「はははっ!そーです!お前達のおねーちゃんは、お前達が苦しんでいる間にゆっくりしてたんですよ!ゆっくりしていってね!」 「ゆがぁぁぁぁ!なにいってるのじぇぇぇ!まりちゃ、ゆっくちなんか、じてないのじぇぇぇ!まりちゃ、くしょにんげんとたたかってたのじぇぇぇ!どぼじでしょんなこというのじぇぇぇ!!」 苦悶の表情を浮かべながら、涙目で子まりさを見つめる二匹の妹ゆっくり達。 二匹は必死に口を動かして、途切れとぎれになりながらも子まりさに対しての罵声を紡ぎ出す。 子まりさはその視線から、思わず目をそらしてしまう。 そしてそんな二匹の言葉を、顔を真っ赤にしながら否定する。 「いつ戦ってたって?全くこのゆっくりは嘘つきだな。お前達はこの嘘つきゆっくりに騙されたから、こんな酷い目にあったんだぞ!」 「ゆぐぃ…おべーじゃ…うじょついてだ…のぢぇ?……ゆっぐぅ…じんじでたのにぃ…ゆるぜないの…ぢぇ…ゆびぇ…ゆびぇ…」 「おねーぢゃ…うぞづき…ゆっくぢだっだにょ…?じょんな………ひどいよぉ…ぎぎぃ…がが…ゆっぐぢ…」 「ゆびゃぁぁぁ!まりちゃ、うそなんかついてなのじぇぇぇ!!………ゆっぐぅぅ!ぜーんぶ、このくしょにんげんが、わるいのじぇぇぇ!ぶゆーでんの、えいゆーまりちゃがやっつけてやるのじぇぇぇ!!」 青年の言葉に驚き、カッと両目を見開く二匹の妹ゆっくり達。 ブルブルと大きく震え出しながら、餡子まじりの涙を流して子まりさを睨み始める。 子まりさはそんな二匹達に大声で訴えると、身を翻して青年の方を向く。 そして唇を噛みながら、青年を見上げて睨みつける。 「ぶゆーでん?えいゆー?また適当な嘘ばかりついて…こんなに弱いゆっくりが、何を言ってるんだ?」 「ゆぅぅ!まりちゃ、よわくなんかないの…ゆわぁぁい!おしょらをとんで………ゆっぴぃぃぃぃ!いたいのじぇぇぇぇぇぇぇ!!」 青年は子まりさの言葉を聞いて、大げさに首を傾げてみせる。 そして体当たりをしようとしてきた子まりさをあっさり捕まえると、咥えていた爪楊枝を手に持ち変えると、爪楊枝で子まりさの底部を何度も突き刺していった。 子まりさは幸福な浮遊感に思わずテンプレセリフを吐くが、すぐに底部に走る痛みに顔をしかめてゆんゆんと泣き始める。 「いっちゃい!いっちゃい!やめちぇ!やめちぇよぉぉ!まりちゃのきゅーとで、しゅんそくな、ぷりちーあんよしゃんが、いたいっていってるのじぇぇぇ!ゆびゃぁぁぁぁぁ!!」 爪楊枝を刺される度に大きく体を震わせて、底部をうねうねと波打たせる子まりさ。 しーしーと涙をダラダラと溢れさせ、イヤイヤと体をくねらせるが青年の手からは逃れる事が出来ない。 底部が穴だらけになると、今度は頬や顔の周りに爪楊枝を刺されていく。 「いちゃぁぁぁぁ!ゆびゃぁぁぁん!ゆびゃぁぁぁん!ごべんなじゃいぃぃぃ!あやまるから、ぼうやめちぇよぉぉ!かわいーまりちゃが、やめてっていってるのじぇぇぇぇ!!」 「ほらしっかり見たか?これが『ぶゆーでん』だぞ?これが『えいゆー』だぞ?こんなに弱いのに!あっいけね(棒読み)」 楽しそうに爪楊枝を子まりさに刺していく青年。 串刺しの妹ゆっくり達に見えるように、大げさな動きをつけて何度も子まりさを突き刺していく。 そしてわざとらしく、子まりさの目に爪楊枝を突き刺した。 「ゆっひぃ………ゆっぎゃぁぁぁぁ!まりちゃのつぶらな、ほーせきよりきれいなおべべがぁぁぁぁぁぁ!!」 「あぁ、悪い悪い。ほら、お前があんまりグネグネ動くから、間違って目を刺しちゃったよ!(棒読み)じゃあ、せっかくだから爪楊枝はこのままにしておくよ!」 子まりさはより一層大きな悲鳴を上げると、まるで水揚げされた魚のように青年の手の中でグニャリグニャリと体を揺らす。 青年は子まりさに全く悪気が無さそうに謝ると、目に刺さった爪楊枝をそのまま奥に押し込んでいく。 「ゆっじゃぁぁぁ!びびゃぁぁぁぁぁぁぁ!!どっで!どっで!!どっでよぉぉぉぉぉ!!!いだぁぁぁぁぁぁぁぁ!ゆぎべぎぃぃぃぃ!じょばぁぁぁぁぁぁ!!」 噴水のようにしーしーを吹き出させ、尻をブリブリと振り回しながら脱糞する子まりさ。 青年はそんな子まりさを見て顔をしかめると、妹ゆっくり達の目の前に子まりさを叩きつけるように地面に投げつけた。 「汚ねぇな!この糞ゆっくりが!!」 「じゅんばぁ?!………ゆ…ぎぎ…げ……ゆ…ぢ……ぢ…ど…ぼじ……まり…ぢゃ……えいゆ……ぶゆー…ぎぎ…ゆ…っぢ…ゆぐぐぅ…ぐずっ……」 子まりさは地面に叩きつけられた衝撃で餡子を吐き出し、全身に開いた穴からも少量の餡子を飛び出させる。 ビクビクと体を痙攣させながら、掠れた声でブツブツと何かを呟きポロポロと涙をこぼす子まりさ。 半分飛び出た無事な方の目をキョロキョロと動かして、助けを求めるかのように目の前の妹ゆっくり達を見る。 だが妹ゆっくり達の目は、悲しそうな、がっかりしたような、子まりさを憐れむような色をしていた。 「おべーじゃ………ぼんどーに…よわいの…ぢぇ?…ぼんどーに…いばばで、うじょづいてだのぢぇ…?」 「おねーぢゃ…うぞづき…ぶゆーでん…じゃなかっだ…の…うぞづき……うぞづ……ぎぎ……ゆっぢ…ぢ…」 「ぢが……までぃ…ぶゆーで…ん……ぼんどー…なのぢぇ…ぼんどーなの……ゆぅ……ゆちっ?…いちゃ…?」 妹ゆっくり達に責め立てられて、半死ながらも悔しそうに唇を噛みながら顔を上げる子まりさ。 力なく顔を左右に振って、違う違うと言うかのような仕草をする。 青年はそんな子まりさの姿に満足したのか、少し笑いながらどこかに行ってしまう。 子まりさは情けない顔でポロポロと涙をこぼし泣いていたが、その体に新たな痛みが走り、思わず体を震わせる。 何者かが体の上を這い、チクチクと痛みを与えている。 「いちゃ………なに…ゆぅぅ…?…あれ…にゃに…?」 目の前を小さな黒いものが横切る。 それは弱った子まりさの目では追えないほどの速度で移動し、次第にその数を増やしていく。 「いちゃ…いちゃ…なに…?…やべで…いちゃ…ゆぅぅ……まじゃか………ありじゃん…?…ゆぅ!…」 子まりさは驚きを隠せなかった。 それはかつて自分が倒したアリであり、それが大群を連れて自分に群がり始めていたのだ。 「やべちぇ…いちゃ…い…だずけ…いもーちょ…」 じわじわと湧き出る涙をこぼし、妹ゆっくり達を見上げて助けを求める子まりさ。 だがその妹達にも大量のアリが群がり始めていた。 「いじゃ…いじゃ…ゆぎぎ…やべ…べ…いがが…ありじゃん…ぼうやべべ…ゆ…ぢ…ゆっぐ…ぢ…ぢ…ぢ…」 「おね…じゃ…がが…いがが…ゆっぢ……ぢ…やじゃ…ぼう…おうぢがえる…る…ゆ…ぎぎ…あり…あり……あり…あり…」 「ぞんな………ありじゃ…ん……どぼじ…で……ゆ…ぢ…までぃぢゃ……ありじゃん…たおじだの…に…ぃ…ゆぐっ…」 子まりさは目を伏せるように下を向き、歯を食いしばりながらブルブルと震えて再び泣き出した。 アリが子まりさを噛む度に小さく震えて嗚咽をもらし、かすかに動くお下げでアリを叩こうとする。 だがお下げでアリに触れるより先にアリが動き、結局子まりさはアリに攻撃する事が出来ないでいた。 「おどーじゃ……ゆっぐち……だずげ…で……ゆぅぅ…ぐぐ………ぎ…ぎ…」 子まりさは頼みの綱である親まりさに助けを求める事しかできなかった。 ゆぅ…ゆがっ…ぎ……いだ………ご………い……ゆる……で… 「ゆぅ……このごえ……おどーじゃ……?……」 子まりさの叫びが聞こえたのか、朦朧とした意識の中で聞き覚えのある声が聞こえてくる。 霞んでいた視界が鮮明になり、最後の希望にすがる思いで重たい体を少しずつ動かし、親まりさの姿を探す。 「おどーじゃ………おどーじゃ…どこ………ゆ…ぢ……までぃぢゃ……ここなの………だずげ…で………ゆぅ……うぅ?!」 そしてやっとの思いで、親まりさらしきゆっくりの姿を捉える。 だがその目に映ったのは、ボロボロになって涙としーしーを垂れ流す哀れなゆっくりの姿。 普段見慣れたかっこいい親まりさではなかった。 「なにあ…れ………おどーじゃ…?……どぼじ…で…?」 親まりさは人間の少年達に蹴られて転がされ、木の棒で何度も叩かれたり、何度も刺されたりしていた。 親まりさは子まりさ同様に情けない顔で泣き叫び、薄汚れた体をグネグネとくねらせながら必死に少年達に謝罪していた。 子まりさは自分がボロボロにされた時以上に驚き、しばらくその光景をじっと見続けた。 「おどーじゃ………ぶゆーでん…は……?…えいゆー…は?………ゆっぐぢ……ゆ…ぢ…ゆびゃ……ゆびゃぁぁぁ…あ…ぁぁ…ぅぅ……」 固まったままの子まりさが、両目から餡子まじりの涙を流し、最後の力を振り絞るかの如く泣き叫ぶ。 だがその声も親まりさには届かないのか、親まりさは地面に頭をぶつける勢いで少年達に頭を下げていた。 子まりさは目を背けようにもろくに目を動かす事も出来ず、少し飛び出した目玉のせいで瞼を瞑る事も出ないまま、その体をアリに蝕まれながら親まりさ の最後を見届けた。 完 徒然あき ---- #pcomment(./comment,reply)