anko4510 地獄公園 の変更点

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ゆぅぅ………ひっ…!?

暗い顔を下に向けて、力なく公園の歩道を這いずる、汚れた一匹のゆっくり。
私の靴音を聞いた途端、それまで芋虫のように這いずっていたのが一瞬だけ俊敏に飛び跳ねて身を起こす。
そして少し慌てた様子で歩道脇の植え込みの中に身を隠し、こちらの顔色を伺うように顔を出してブルブルと震えている。

一見どこにでもいそうな、人間に対して恐怖心を抱いている野良ゆっくり。
だがこの公園に住んでいる野良は、他の野良ゆっくりとは少し違う。
この公園に住んでいる野良ゆっくりは特別臭くて汚い上に、何時も何処か傷ついている。
その上野良ゆっくりの9割ほどは、大抵リボンや帽子を失っているのだ。
別にこの公園が特に汚いとか危険ではないのだが、ゆっくりにとっては地獄以外の何物でもないのだ。

まずはこの公園の入り口だ。
この公園の入り口は少し傾斜が付いているのだが、そこには雨などで滑らないように地面がヤスリの様に加工されている。
赤ゆっくりや子ゆっくりがこの上をうっかり這うと、すぐに底部の皮がボロボロになり二度と這う事が出来なくなる程のこの入り口。
成体ゆっくりでもあまりの痛みに小便を漏らし、数日は這う事が出来なくなるらしい。
このお陰で野良ゆっくり除けにもなっているが、うっかり公園内に進入した野良ゆっくり達にはトラウマとなり、二度と出られない地獄の門になっている。

そして第二に、この公園の植え込みや木である。
近所の老人が役所から依頼されて手入れをしているらしいので、それは綺麗に刈り込まれているのだが、それが野良ゆっくりにとってはそれが凶器となっている。
刈られたばかりの植え込みは見た目は綺麗であるが、切られた枝や葉は鋭く、植え込みに隠れようとする野良ゆっくりを傷付ける。
傷つきたくない、痛い思いをしたくない野良ゆっくりは隠れる事をしないのだが、そういう者は野良猫や子供のおもちゃになるか、カラスのエサになるのである。
それ以外にも散歩中の犬や、人間にも注意しなくてはならない。
犬にもおもちゃにされる可能性もあるが、下手に歩道を歩いていると、通行人に蹴り飛ばされるか、ゴミ箱に捨てられる。
故に身を守る為には、嫌でも植え込みに身を隠さなくてはならないのだ。
その上、ここの管理人は丁寧に芝も刈って行く。
刈られた芝は野良ゆっくりにとってはとても痛いらしく、公園の移動は基本歩道を使う事になる。
こうして日々暮らしているだけで植え込みに隠れる事を強要され、体は傷だらになり、リボンや帽子もボロボロ、やがてちぎれて無くなってしまうのだ。

この公園で暮らしている野良ゆっくり達の住居は、主にベンチの下や公衆便所である。
ダンボールなどは当然持ち込まれる事もないのだが、たとえあったとしても管理人に撤去されるだろう。
だがベンチの下や公衆便所に野良ゆっくりの食料の蓄え、寝床なども置く事が出来ない。
これもそんな物があれば、すぐに管理人に片付けられてしまう。
私物を撤去されそうになり、管理人に立ち向かっていった野良ゆっくりもいるが、そんな野良は植え込みの方に放り投げられ、その間にゴミを片付けられてしまうのだ。
基本的にここの管理人は野良ゆっくりを潰そうとはしないが、野良ゆっくりに対して慈悲の心なども持ち合わせていない。
とりあえず殺さないでいるだけで、野良ゆっくりには無関心なのだ。
そんな管理人のお陰で野良ゆっくりは即殺もないが、ゆっくりと住居を構える事も出来ず、毎晩夜露を凌ぐ為にベンチや便所に身を隠すだけの暮らしをしている。

この公園ではそんな事情から、食料調達も難しい。
ゴミは殆ど落ちておらず、雑草も殆ど生えていない。
殆どの野良は薄っすらと生えている刈り取られた雑草の茎や、わずかに残された掃き残しの葉っぱを食べている。
飢えたせいで土や石を食べるものや、舗装や便所の外壁を舐める野良もいるが、当然そんな事で腹は満たされない。
だが、定期的に食料を確保出来るチャンスがやってくる。

この公園は駅から近い事もあり、週末には酔っ払いが夜によく訪れる。
そして気分の悪くなった酔っ払いは、大抵地面や便所周辺に嘔吐物のお土産を置いていく。
アルコールや、その他刺激物の入ったそれらは当然、野良ゆっくりにとっては毒のような物である。
だが、それと同時に貴重な食料にもなる。
そのまま食べれば当然野良ゆっくり達は死んでしまうだろうが、ここで生活している野良は酔っ払いのお土産に土を混ぜ、それを主食としている。
このおかげで酔っ払いのお土産は一晩で無くなり、公園の美観が保たれている。
それ以外には、時々マナーの悪い犬の飼い主がそのまま放置していく犬の糞。
これも野良ゆっくり達は土と一緒に雑ぜて、食料にしている。
こんな物でも食べないと、この公園で生きていく事が出来ない。
それが嫌で飢え死にした野良ゆっくりもいるが、そんな野良ゆっくりの死体も他の野良ゆっくりの食料になっている。
捕食に走る野良ゆっくりも現れるが、疲弊した体ではろくに戦う事も出来ず、大抵は共倒れになる。
それほどまでにこの公園は、食料がないのだ。

ちゃんと管理されているだけで、野良ゆっくりの地獄になってしまったこの公園。
事情を知っている鬼威惨と呼ばれるゆっくり虐待派も、ここでは特に虐待もせずに人間に怯える野良ゆっくりを眺めては楽しんでいる。
そんな私も虐待派ではないが、こんな状況でも生にすがり付いている野良ゆっくりを見ながら、昼食を取るのをささやかな楽しみにしている。
何かに縋るかのように植え込みの影からこちらを見つめて、私が一口昼食を口にする度に震えながら涙を零す野良ゆっくり。
ここではこれが何よりのおかずだ。




徒然あき 
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